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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第四章 一時の再会
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聞くべき事は聞くべき

 俺が寝入っている間に、進められる部分は進めたそうだ。

 そう言われたのだが、なんか違和感。


 ……あっ、なるほど。

 まるで、俺が居ないと始まらない話がある、みたいな言い方に引っかかったのか。

 そんな事、あるわけないのに。


「あるぞ」


 アドルさんが断言した。

 インジャオさんとウルルさんが同意するように頷き、この国の王である、ゴルドールさんも頷き、この姫である、サーディカさんも頷き、カノートさんも頷く。


 なんだろう……全然ピンと来ない。

 何かあっただろうか?


⦅主に褒賞の話です⦆


 いきなり発覚した。

 え? 褒賞? 出るの?


⦅もちろん出ます。一国を救ったのですから。しかも、ここは三大国の中で最大の国家。さぞや、良い宝物が豊富にあるでしょう。今の内に吟味して選りすぐっておきますので、暫く私の受け答えはないモノとお考え下さい⦆


 え? ちょっと、セミナスさん?


 ………………。

 ………………。

 反応が一切ない。

 セミナスさんの本気を感じる。

 どことなくウキウキしているような雰囲気だったし、ショッピング感覚なのかもしれない。


 ……これは時間がかかるな。

 よし、放置。

 女性の買い物に、男性は生半可な覚悟でかかわってはいけないのだ。


 という訳で、俺が寝入っている間の話を聞く。

 まず、四枚羽は、怒れるカノートさんが完全滅殺した、ので間違いない。

 サーディカさんがその時の事を嬉しそうに語り、カノートさんからの強い愛を感じたと言う。

 ……相思相愛って事で納得しておく。

 あと、どう完全滅殺したのかも聞いたが、俺の妄想のカノートさんよりエグかった。


 数多く居た二枚羽に関しては、あのあとアドルさんたちと救出した騎士、兵士たちが謁見の間に突入した事で一気に形勢が決まり、そのまま打ち滅ぼしたそうだ。

 一体も残らず。

 他のところに居た大魔王軍も。


「こういうのって、普通は何体か残して情報収集とか……」

「勢いだったのは認める。だが、そもそも生かす必要はない」

「敵が大魔王軍というのがわかっていますから」

「情報収集って、何の情報を? あの程度の強さじゃ、よくて末端の上の方程度。大魔王軍の重要情報なんて知る訳ないし」


 アドルさんたちの当然のような回答。


「いや、裏でどれだけ関与していたとか?」

「そのためにウラテプを生かしているので、そこら辺の事はそこから聞けば問題ないよ。サーディカがとめてくれていなかったら、あのままブチ殺していたと思うけどね」


 カノートの爽やかな回答。

 一瞬、闇が垣間見えたけど。


 ……まぁ、別に良いか。

 そこら辺は、もうこの国の人たちの領分だろうし。


 で、捕まったウラテプは今、当然のように地下牢である。

 他にも、あの場に居て、ウラテプに協力していた者たちを洗い出して捕まえているそうだ。

 その洗い出しを行ったのが、商売の神様だった。


「金の流れは全てを明らかにする。そして、私に読めない金の流れはない」


 と、格好付けたとか、付けていないとか。

 その商売の神様がここに居ないのは、現在バッグラウンド商会だけじゃなく、この国の帳簿にも目を通して、悪事の部分を割り出している最中だから、だそうだ。

 武技の神様は、その手伝い中。


 ……スキル更新の方は良いんだろうか?

 こっちも重要だけど、あっちも重要だと思う。

 武技の神様もスキル更新は出来るんだし、役割分担して………………駄目だな。

 死んだ目を浮かべる武技の神様は、ビジュアル的にアウトだ。

 息抜きも兼ねているようだし、早く終わってスキル更新作業の方に戻る事を祈っておこう。


 あと聞いておこうと思うのは……ドンラグ商会の事かな?


 全然問題ないそうだ。

 ダオスさんとハオイさんも、今がチャンスとばかりに、バッグラウンド商会を解体して、使える商会員をスカウトし、随時採用していっている最中との事。

 バッグラウンド商会が行っていた商いの中でも、まともな部分を引き継いでいっているらしい。


 要は、バッグラウンド商会を吸収したようなモノか。

 ……元々ドンラグ商会って王都ナンバーワン商会なのに、更に拡大……か。

 もうどの商会も太刀打ち出来ないんじゃない?


 今後の王都内商会のパワーバランスに戦慄していると、インジャオさんが思い出したように言う。


「あぁ、そうそう。ダオス殿とハオイ殿から、アキミチ宛の伝言を受けています」

「……伝言?」

「えぇ。お礼をしたいので、必ず商会に立ち寄って下さい、と」

「……お礼? 具体的には?」

「そこは聞いていないね。でも、悪い話ではないから、あとで伺っておくと良いよ」


 そうするか、と思うと同時に、今の言い方に引っかかる。


「そうします。というか、伺っておくと……て、アドルさんたちは?」

「もちろん、私たちにもお礼をしたいと言われているが、今は他にするべき事があってな」


 アドルさんがそう答え、同意を求めるようにゴルドールさんを見る。

 ゴルドールさんは苦笑いだ。

 そういえば、アドルさんもお偉いさんらしいんだっけ。

 そういう人たちには、色々と付き合いがあるんだろう。

 で、インジャオさんとウルルさんも、アドルさんに付き合う、と。


「という訳で、暫くの間は別行動になる。まぁ、その方が良いかもしれんな。折角の機会だし、ゆっくりと過ごすと良い。寝泊まりはそのままあの部屋を使って良いと、話が通っている」


 そう言いながらアドルさんの視線が向けられたのは、詩夕と常水。

 あれ? もう紹介済み?

 ……俺のところに来る前に、簡単にだが済ませたそうだ。


 なるほど。

 でも、そういう事なら、詩夕と常水と一緒にのんびりしようかな。

 その時に、きちんと紹介出来ればする方向で。

 フィライアさんも、それで問題ないと同意している。


 それに、セミナスさんが何も言わないという事は、今はアドルさんたちと別行動で、詩夕、常水と一緒に行動する事に問題はない、という事の証明でもある。

 でも、一つだけ気がかり。


「それは良いですけど……え? 寝泊まりがここ?」


 この城を示すように、床を指差す。


「そうするしかない。ドンラグ商会なら無理を言えば部屋を用意してくれるかもしれんが、今は忙しいだろうしな」

「そうした方が良いかもしれませんね。それに、私たちも寝泊まりはこちらに変更する予定ですので、その方がシユウ様、ツネミズ様と長く居られますよ?」


 アドルさんとフィライアさんがそう畳みかけてくる。

 そうなの? と詩夕と常水を見ると、初耳です、と目を見開いて驚いていた。

 ……そういえば、俺のところに急いで駆け込んだんだっけ。

 なら、知らなくても仕方ない。


 でもまぁ、気を遣ってくれているのはわかるし、そういう理由もあるのなら、ありがたく使わせて貰おう。

 寝ていただけだけど、既に使ったあとだし。

 しかし、これだけは聞いておきたい。


「……あの、もしもの話ですけど、部屋の中にある物を壊してしまった場合、損害賠償とかは?」

「そもそも客室の一室で、替えの効く物しか置いていないので、好きなように使って構わない」


 ゴルドールさんが宣誓するように言う。

 言質は取った。

 これで問題はどこにもないね! と詩夕と常水を見る。

 ……苦笑い。


 おかしい。普通の感覚だと思うんだけど……。


 戸惑いつつも、もう一つ話は進む。

 セミナスさんが言っていた、国からの褒賞の話だ。

 ただ、これは今これからではなかった。

 ウラテプが持ち出している可能性も考慮して、宝物庫内部を改めて確認してからである。


 まぁ、セミナスさんの沈黙が続いているという事は、まだ決めかねているという事なので、確認が終わってからで大丈夫です、と返事をしておく。


 こうして、俺は少しの間、詩夕、常水と一緒に行動する事になった。

 さて、どこに行こうかな。


 ……ただ、そう締め括ったものの、先生はまだ復活していなかった。

 涙ぐんだままで、復活しそうにない。

 それだけ涙もろいと、俺ももらい泣きしそうなんだけど。


 先生とも、また改めて、となった。

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