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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第一章 始まりの始まり
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作戦実行!

 期限は明日の昼まで。

 それまでに俺がミノタウロスを倒し、光る玉から神を復活させないと、親友たちが死んでしまう。

 絶対に負けられない戦いだ! と、アドルさんたちと考えた作戦を実行していく。


     作戦名 「死ぬ気で逃げ回って、相手が疲れるのを待つ作戦」


 アドルさんが考えた、この作戦は簡単だ。

 ミノタウロスの攻撃を死ぬ気で避けつつ、疲れから生じる隙を突くという作戦。

 そのため、フットワークを軽くするために軽装へと着替え、念のための片手で持てる盾も持つ。

 武器も豪華な宝飾付きの、取り回しやすい長剣へと変わり、この盾もミノタウロスの一撃に耐えるだけの強固さを誇っているそうだ。

 これで万が一にでも大丈夫と、作戦を実行する。


 神殿地下にある扉を開き、ミノタウロスを相手に挑む。

 確かに怖い……怖いけど、親友たちのためならやり遂げてみせる!

 今の俺よりも確実に強いので何度か危ない場面もあったが、強固な盾のおかげで何とか危機を脱する事もあった。

 相手は格上……気を抜いてはいけない。

 重要なのは、相手を疲れさせる事である。


 正に死ぬ気で、逃げ回った。

 無様でも、息が切れそうでも、踏ん張った。

 そして、先にへばった。


 何とか逃げ出し、長剣を杖代わりにして、アドルさんたちのところへと戻る。


「というかさ、普通に考えれば、基礎体力が違い過ぎるよね!」


 あぁ、確かに! と、アドルさんたちが手を打つ。

 今気付いたんかいっ!

 ………………何か不安になってきた。


     作戦名 「要は近付かなければ良いんですよ作戦」


 そう告げたウルルさんが、アイテム袋の中から弓とたくさんの矢を取り出していく。


「………………えぇと、もうオチが見えそうなんだけど」

「奇遇だな。私もだ」

「う~ん、もう少し鍛えていれば、可能性はあったと思うんですけどね」


 ただ、現在胃袋を掴まれている俺達が、ウルルさんに逆らえる訳もなく、実行へと移す。

 弓を手に、たくさんの矢を担いで、神殿地下の扉前まで移動する。

 ………………準備完了。


 扉を開き、室外から射撃!

 狙撃!

 ……嘆き。


 残念ながら、素人の俺では弓を上手く扱えませんでした。

 なので、上手く射れないのはもちろんの事、狙いは外す、届かない、当たっても刺さらない、の三コンボ。

 鬱陶しいとミノタウロスがマジギレしてきたので、即座に撤退した。


「ブオオォォッ!」

「うわっ! 部屋を出て追いかけてきた!」


 う~ん……ゲームと違って現実はこんなモノという事か。

 しみじみ思いつつも、足は止めない。

 止められない!

 というか、ノーダメージなんだから、そんなに怒らなくても良いじゃないか!


 そのまま神殿の外まで出るが、ミノタウロスはそこまで追って来なかった。

 ………………寧ろ、神殿の外まで来てくれた方が、アドルさんたちの協力を得られて、俺としては都合が良かったのに。

 惜しい! と思いつつも、まずはアドルさんたちと合流する。


     一旦休憩


「次から弓の練習もしましょうね?」

「あっ、はい」

「もちろん、インジャオとアドル様も、アキミチにきちんと教えてあげて下さいね?」

「「あっ、はい」」


 俺達男性陣の誰も、怖い笑みを浮かべるウルルさんには勝てなかった。

 約束した事でスッキリしたのか、ウルルさんはアイテム袋を漁って、役立ちそうな物を探し出す。

 俺達男性陣は、揃ってホッとした。

 さぁ、次いってみよう!


     作戦名 「げへげへごほごほ作戦」


「やはり、無機質になったからこそ気付くと言いますか、呼吸をするモノなら、これで一発ですよ」


 どこか得意気な表情を浮かべていそうなインジャオさんが、そう提案してきた。

 その内容を簡単に言うのなら、一酸化炭素中毒である。

 相手が室内に居る事を利用し、アイテム袋の中にあった、濃厚で大量の煙を発する「煙玉」を使用して、それを室内へと放り投げて扉を閉め……あとは待つだけ。

 まさかの、えげつない手段である。

 インジャオさんがそんな事を提案するなんて……。

 礼儀正しく、美人獣人女性とお付き合いしている気の良い骸骨だと思っていたのに……。

 ………………。

 でも、楽に倒せそうだから、その案採用で!


 という訳で、早速とばかりに煙玉をいくつも持って、神殿地下へと向かう。

 ………………。

 ………………扉全開で、ミノタウロスが部屋の中で待ち構えていた。

 ……早くも終了の予感。

 ……いや、諦めちゃ駄目だ。

 盾を構え、いつでも逃げられるような体勢を取りつつ、ゆっくりと近付いていく。

 扉に手を付けた瞬間、目が合う。


「………………」

「………………」

「………………一旦、閉めまぁ~す」


 そう言った瞬間、一気に近付いて来たミノタウロスの掌底によって、扉が破壊される。

 ただ、俺は思った。


 ……この形、壁ドン……いや、扉ドン?


 俺の初めての扉ドンは、相手がミノタウロスでした。

 とりあえず、一方だけとはいえ扉が破壊された事で、今回の作戦はもう意味を成さない。


「………………一旦、帰りまぁ~す」


 これ以上ミノタウロスを刺激しないように帰った。


 アドルさん達のところへ戻ると、扉が破壊されて失敗した事を伝える。


「くそぉー! ミノタウロス如きが自分の策を破るなんて! やってられませんねぇ~!」


 インジャオさん、ご乱心である。

 魔力込みの鉄棒……魔力鉄棒をガジガジと噛み砕いていく。


「ウルル、慰めてやってくれ」

「はいは~い! 任せて下さい」


 ウルルさんに連れられて、インジャオさんが森の中に消えて行った。

 ……存分に慰められておいで。


「すまんな。どれも上手くいかなくて」


 アドルさんが申し訳なさそうな表情で謝る。

 でも、俺は失敗したからといって、別に気にしていない。

 そもそも、弱い俺に合わせて色々と考えてくれているのだ。

 そこには感謝しかない。

 つくづく、もっと強ければと思うだけだ。

 でも、それはないものねだりでしかない。

 今あるモノで、どうにかしないといけないのだ。

 だったら、もうやる事は決まっている。


「大丈夫ですよ、アドルさん。こうなったらもう、時間を目一杯使って、一つ一つ潰していくだけですから」


 俺はアドルさんに向けて、任せて下さいと笑みを向けた。

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