建築は常に危険と隣り合わせ
虫使いの方でも言いましたが、誤字脱字チェック本当にありがとうございます、感謝感謝です
「さってと、さっちゃんに頼まれたモンは揃ったかな」
「えぇと……そうですね、大丈夫です」
王都の中央通りを歩くキヤとカレン。二人は工房員メンバーから買い出しを頼まれ買い物に出かけていた。歯車鍛冶工房では雑務は手の空いたものがやるルールになっている。最近は開発も落ち着きキヤは空き時間が増え、カレンはまだこの王都に来て間もないということでキヤは案内を兼ねてカレンを連れ出したわけだ
と、通りの一画でなにやら金槌と大きな男たちの声が響いている区画があった。なにやら新しい建物でも建てるのだろうか? 人間の身長よりも若干小さめの屈強な男たちが木材など重いものを持ってせわしなく動き回っている。カレンはその光景を珍しそうに見ている
「どったのカレン」
「あ、あぁいえ……もしかしてあの方たちはドワーフ、ですか?」
「お、カレンってドワーフさんたち初見なんだ。そそ、ウチの工房の実験場の休憩場作ってくれた人たちでもあるんよ。ガンキン建設だっけか。一応顔見知りになるのかな」
キヤが遠めに見る限り顔見知りのドワーフが居たためちょっとした挨拶をしに二人は現場へ近づく。丁度建材を置いて一息ついたドワーフに話しかけるキヤ
「親方、ご無沙汰してます」
「ン? おぉキヤか。なんでぇ、仕事サボって逢引か? カーッ、お盛んだなぁオイ?」
「違います! 新入社員が入ったんで挨拶回りと町の案内ですよ」
「カレン・フェアリスです。よろしくお願いします」
背筋を伸ばして礼をするカレン。丁寧な対応で気を許したのか親方も軽く手を上げて答える
「ン、ヨロシクな嬢ちゃん。しっかしキヤも律儀だな? 俺たちは挨拶回りなんざ新年の時くらいだ」
「成り行きッスよ。それはそれとして親方、建材持ち上げるの大変そうっすね」
「まぁな。モノ自体は軽いんだが、どうも高いとこに持っていくのには難儀する。この前もウチの若いのが足を踏み外してな、腰をヤっちまったんだ。他の建築のやつらも似たようなモンらしい」
キヤが資材置き場を見ながら言うと親方は苦笑いしながらボヤいた。ちなみに親方の言う軽いはドワーフ基準であり人間が持ち上げるとなると軽いとは言い難い。身長は小さいがそれを補って有り余るパワーを持つ種族、それがドワーフなのだ
話が逸れたが、建築業界はなかなか大変なことになっているようだ。それもそのはず、建物の建設はこの世界では非常に危険な職業なのだ。建設現場でよく見かける足場と言うものがこの世界にはなく、ほとんどが脚立(台形のもの)が使われる。だがその脚立より上の位置に資材を運んだり建物を上へ建てていくとなると、そこからはあらかじめ立てておいた支柱の上に乗っての作業になる。
いくら注意していても、視界がきかない上足元は細い木の上の資材運搬は非常に危険を伴うのだ。ドワーフは体格がいいため足元が非常に見えづらく、資材を運搬しながらだとさらにバランス感覚も問われる。少し強めの風が吹けば一発でバランスを崩して落下するだろう
そんな親方たちの現状にキヤは何とかするべきかと考える。幸いアイディアならごまんとあるのだ。そろそろ大きなものを作ってみようかと思っている。
「んー、どうにかできない訳じゃないんだけどなー」
「何?」
「親方、もし資材を持ったまま高いとこに手が届くような道具があったら便利ですよね?」
「あ? まぁな。俺たちドワーフならともかく人間は高いとこから落ちりゃすぐ死ぬからな」
「ちょっとそういうのを作ってみようと思うんですけど、その時に試しに使ってみてほしいんですが、どうでしょ?」
「ガハハハハハ!! そりゃいい、出来たら持ってきな! 期待しねぇで待ってるぜ」
「言質とりましたからね? そんじゃ親方、お疲れ様ッス」
「おう、じゃあな」
同日の数時間後、工房にて。夕食後の社内会議でキヤは唐突に新たなプロジェクトを発表する。他のメンバーはキヤがこう言いだすと何か突飛な面白いことをやり出すと知っているため全員が食いつく。
「ということで物理的に大き目の仕事やるよー」
「物理的? どういうコトかしらキヤちゃん」
「今日カレンと買い出ししてる時にドワーフの建築屋が作業してて、話しかけたら落下事故が多いってグチを聞きまして。それをどうにかできないかなと」
「どうにかというが、どうするつもりだ?」
行儀悪く足を組んで聞いてくるマーソウにキヤは笑みを浮かべながら新たな設計図を取り出す。全員が設計図をのぞき込み、書き込まれた材料などの寸法に突っ込みを入れる
「これは……随分とおっきいのね。説明してくれるかしら」
「こいつはリフト。重いものを高所に持ち上げるための……重機です」
キヤが作りだそうとしているのは建設重機。それもこの世界のオリジナルのものである
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
「で、これは一体どういう原理でその問題の解決になるんだ?」
「最近回転の魔石に妙な特性があるのを見つけてね。それを利用するのさ」
キヤのいう回転の魔石の特性とは、魔石に魔力を流し込む方向で回転方向を変えるというものだ。例えば縦に置いた回転の魔石に右側から魔力を流せば右回転、逆側から流せば左回転になるというものだ。
「要は井戸の滑車みたいなモンかな。あれってロープを引っ張ると井戸の中のバケツが上がってくるでしょ? それを利用して水を汲むわけだけど」
「なるほど、回転の魔石の巻き取り機構に荷物を入れるバケツ……いや、台座を付けておけば魔力を流せば上がってくるわけだな。あの実験場の倉庫の扉の応用だろう」
「流石魔石のスペシャリスト、わかってんねぇ! でも問題がある」
「材料や接合部の強度、ね。特にココとココとか負荷がかかる場所はもちろん、丈夫にすれば骨組みにかかる重量も負担も増えるわ。そしてそれは耐久性に直接響く」
老眼鏡をかけ設計図の部品が重なった部分を指さしながらゴルドワーフがいう。流石長い間金属加工に携わっただけはある
「そうなんですよねー。ということでゴルドさんには俺の設計図の問題点を洗ってほしいんですよ。他のメンバーは仮の骨組みが出来てから本格的に作業に関わってもらうカンジ。どうかな?」
工房員たちに異論はない。キヤは今度は建築業界に革命をもたらそうとしていた。
また軽々しく業界に革命を起こす歯車鍛冶工房。




