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異世界のマ歯車鍛冶(ギアスミス)!  作者: 優暮バッタ
第五部 超古代の息吹に新たなる姿を
102/199

天変地異、一方その頃キヤたちは青春していた

平和に暮らしていても気が付けば戦いはすぐそばにやってくる。物語は大きな局面へと向かう。




 その日、フクィーカツの辺境にて地震が発生。震源地は神が住まうという名もなき神の山の真下。確かに神はそこに居たのだ。山という強固な拘束を撥ね退け、人間が施した封印を振り払い、現れ出でたるは巨大なドラゴン。天を貫く一本角、鋼を噛み砕く巨大な牙、長い年月をかけて尋常ではない強度を得た鱗、岩を蹴り飛ばし生き物を蹴散らす巨躯、背中には翼膜を失った翼の残骸。


 伝承によれば数百年前に現れたドラゴンで、突如出現しあらゆるものを破壊しながら当時の王都へ向けて進撃したという。その時当時の勇者とその仲間、そして最強戦力だった騎士団が総出で事に当たり、多くの犠牲を払いながらようやく封印にまでこぎつけたという。犠牲者は勇者の仲間が数名と騎士団の八割。決して浅くはない傷を抱えながらもフクィーカツは生き残った者たちの力を借りつつ復興した。



 封印されてしまったドラゴンと言えば屈辱と憎悪に燃えていた。ちっぽけな生き物にいいようにされ封印され拘束された恥辱。この世界で一番強い生き物であるという自負が彼にあったことが致命的だった。ドラゴンはあがき続ける。幸い時間はある。自分に施された封印を解析しつつ、嫌がらせとしてその辺の生き物に己の魔力を当て続け凶暴化した魔物に変異させては人里を襲わせた。


 最近放った魔物も人里に大きな被害を与えたらしい。同時進行で続けていた封印の解析も終わりつつあり、復讐の刻限は近づきつつあった。そして今、封印が膨大な魔力によって強引に壊され、ドラゴンは再びこの世に再臨したのだ


 そして生態系の頂点が憎悪に任せて進撃を開始した余波で多くの魔物が活性化。ドラゴンから逃れようとするもの、ただ暴れようとするもの、それらが一緒くたになって人里へと押し寄せた。



 こうして人類史に残る最大レベルの大災害『スタンピード』が始まってしまったのだ。







ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



ある日フクィーカツ王都にボロボロの装備の男が息も絶え絶えに転がり込んできた。門兵は不審に思ったものの彼の装備品はフクィーカツの騎士団が支給する紋章が付いており、自分たちに連なる者とわかったのでとりあえず肩を貸しつつ門のすぐ横の兵の休憩所に連れて行った。



「衛生兵、手の空いてるやつは来てくれ!! おい大丈夫か? そんなボロボロでなにがあったんだ?」



 ほぼ意識が無いような、気力だけで立っているような様子だったので衛生兵に軽い回復魔法をかけてもらい、詳しく話を聞くと門兵と付き添いの警備長の顔が一気に真っ青になった。



「す、スタンピードだ……辺境に封印されていた、ドラゴンが復活したんだ……俺の、俺の街は……多分、もう………すぐ、王に伝えて……」



 そう言って彼はこと切れてしまった。文字通り命を燃やして国の危機を伝えてくれたのだ。門兵はすぐに騎士団の駐屯地走って連絡を取り、騎士団から王へ緊急事態が伝えられた。




「ロイド宰相、例のドラゴンだが……確かなのか?」


「間違いありません。、かつて我が国に居た勇者の仲間と当時の騎士団が壊滅した記録が王城にも残っています。そしてそれは辺境に出現したドラゴンの被害によるものであり、それ以来現地の者たちはドラゴンを封印した山を禁足地としていたようです」


「そうか。現時点より緊急事態を宣言する、可能な限りの戦力を集め対応に当たる。行け」


「かしこまりました」




 王が緊急事態を宣言したとき、既に食いつぶされた村や町は両手の数を超えていた。そしてその脅威はフクィーカツの山から流れる川に涼みに来ていたキヤ達にも降りかかろうとしていた




ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



「いやマジでフクィーカツって観光地として恵まれてるよな。海あり山あり川あり、そして何より上手い飯ありって」



 旅行最終日、キヤたちは暑い日が続いたということで川に観光に来ていた。情報をくれたナルニィエスによると、この川は人の勢力圏にあり危険な魔物は出現せず観光地として有名らしい。事実アクセスも容易で適度な木漏れ日と流れる清流のコントラストが非常に素晴らしく、また少し奥に行けば美しい滝もあるとレジャーを楽しむには最適なのだ。川べりの大きな石に座り冷たい川に足を付けながらマーシュンが呟く。



「あーあ、この旅行ももう終わりかぁ……ちょっとザンネンかなぁ」


「まぁわからんでもない。でも長いこと居すぎても面白くなくなるからなぁ。旅行はたまに行くから楽しいもんだ」


「本来ならそもそも気軽に旅行に行ける身分ではないのだがな」



 マーシュンの呟きに応えながら隙あらば互いを川に叩き落そうとしているキヤとマーソウ。男ってホントバカ



「……本当に得難い経験でしたわ。こんなにも旅行が楽しいだなんて」


「ホント。地元に居た頃は全然遠くに旅行しに行く機会なんてなかったもん、私」


「それな」


「なんでいるのアナタ」



 木陰に座りくつろいでいるサツキとカレン、そしてなぜか混じっているエリナが談笑している。そんな自由なエリナをどこか不満そうな表情でチラチラとカレンが見ている。このエリナ、いつの間にかメンバーに混じってしれっとお菓子やお茶を楽しんでいた。あまりに自然なので数分は誰も気に留めなかったほどに。ニケだけが不思議そうに首をかしげながらエリナを見ていた



「あの……なぜついてきてるんですか?」


「私も鍛冶工房に就職したから」


「私は聞いてませんが?」



 どこか責めるような表情でサツキを見るカレン、珍しいカレンの反応に少々気圧されながらサツキは覚えがないと首を振る。そして三人の視線はキヤに向いた。川へドボン対決はあと一押しというところで、劣勢なのはマーソウ。切羽詰まったような表情の硬いマーソウにキヤは余裕の表情だ



「やるなマーソウ……この俺を相手にして未だ川の中ではないとは」


「お前の妙なところで才覚を発揮するのは何なんだ……!」


「だがその健闘もここまでよ! せいぜい冷たい川の水に沈めt」



 油断したキヤの横からサツキのヤクザキックが炸裂しキヤは「へぁう?!」と奇声を上げながらハデに川に落ちた。それを見ていたざまぁみさらせという表情のマーソウもついでと言わんばかりに恥ずかしそうな表情のマーシュンに蹴り落された。



「キヤ、何度だって言うけど。従業員増やすときに副社長である私にも連絡する義務はあるはずだよね? どうして無視をするのかな? かな?」


「む、無視なんかしてませんとも……えぇ……だから頭掴んで持ち上げないでソレどこぞのブロッコリーがやることのソレよ? 後そのカナカナはトラウマなんでカンベン」


「嘘だッッ、てね。滅ッ!!!」


「格ゲーの鬼の方でしたかってブホッ?!」



 その様子を微笑ましいものを見る表情で見ていたゴルドワーフが一言青春ねぇと呟いた。隣で瓶に入っているニケがマネをしてしたり顔で頷いていた。





「で? エリナさんだっけ? アンタ何が目的?」


「キヤのお金」


「いっそ清々しいわねアンタ。川へドボンは最後にしてげるわ」


「このローブ乾かすのめんどいんだけど」


「大変そうね。ところでドボンは最後にしてあげるって言ったわよね?」


「うん」


「アレはウソよ」


「ほう、いい度胸。やれるものならやってみ……あれ? 魔法が使えない? え? どういうこ」


「カレン、ゴー!」


「秘奥義・天地返し!」



 新たに大きな水しぶきが上がった。この工房に就職すると自分勝手したら怒られる、エリナはまた一つ賢くなった。



ロイド宰相とフクィーカツ王はもうほとんど出ません。連絡遅れは仕方ないんです。転移魔法なんてなろう小説じゃあるまいし、辺境の一般兵が使えるものではないのです()



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