妥協。そして胎動する巨躯
キリの関係で本編がちょっと短いのでオマケを付けます。それで許して亭赦して
PS ロボットの名前をトランスメタルゴーレムからマギアゴーレムに変更しました。混乱させてしまい申し訳ありません
ロボットの身体を製作し、エリナの助力によって制御機構が作られ、ついにロボットは開発された。ギアボックスに定型として入っていた名前を変え、設計図を更新し再登録する。
『魔歯車人形・Tp 古代種』と。
そしてもう一つ、これから先人類史に暗い影を落とすであろう武器の設計図が新しく登録された。
『魔導杖銃』
「俺もこういう武器を思いつかなかったわけじゃないですよ。ある意味、これもロマンの一つですから。だからこそ作りたくないんですよ。魔物にダメージを与えることは出来ても致死に追い込む力はない。けど、人ならいくらでも致死に持っていけるもの。それがコイツなんで」
「でも、蒸気銃は……」
「だからこそ魔石三つ使うが故にコストが高く制御にもある程度難があり、割と複雑な部品が複数必要で金属加工も容易ではない上、殺傷に用いれば強度に大きく問題があるように作ったんですよ。人殺しの道具としちゃ落第点、だけど悪意から大事なものを護るためのものとしては満点になるように」
いつも明るく振る舞うキヤの憂いを帯びた暗い表情にエリナは自分の軽率さを恥じた。興味の赴くままに自分は恐ろしいものを作り出そうとしている。己の目指す魔導の権威としてではなく、恐ろしい武器を作り出したものとして名を遺すところだった。熱が引き俯いてしまったエリナを見てちょっとバツの悪そうに頭を掻くキヤ。そして思い悩むように天を仰いだ後、ポソリと言葉をこぼした
「四丁。とりあえずそれだけで納得してください。その設計図はこっちで預かって燃やします。んで、どこかしらに欠陥を作ります。そのままマネして作ったら軽度の惨事を起こすくらいの。それで納得してください」
「……ありがとキヤ」
そして都合五丁の魔導杖銃、マギアガンロッドが秘密裏に製作された。四丁はエリナの過剰ともいえる厳重な管理の元で。残り一丁のプロトタイプはキヤのギアボックスに仕舞われ分解され、設計図のみがギアボックスに残った。そしてマギアガンロッドは現存するのは四丁のみとなった。
今はまだ。
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
それはここではないどこか。それに最早感覚は存在しなかった。だがそれに刻まれた魂は、悠久の時を超えてなお健在だった。その魂が非常に単純なものだったからこそ起きた奇跡かもしれない。人間のようなムダに複雑な精神が宿っていればたちまちその精神は風化しただの魔石に成り果てていただろう。
そしてそれは悠久の時を超えて、かつて乗り回していた体ごと地上へと掘り出された。
己を縛る固い岩。生きていた時であれば壊せたはずのそれは、肉体を無くしたそれを問答無用で縛り付ける。だが次に外の世界に触れた時その拘束は解かれていた。そして元の身体が骨だけとなってそこにあった。そしてそれは賭けに出た。膨大な魔力を使い、己の身体を支えていた骨を繋ぎ合わせ、再びその四足で大地を踏みしめたのだ。
なぜそれが再び立ち上がることを求めたのか。それはいつの間にか居なくなっていた仲間を探すためか。それとも闘争本能の赴くままに眼前の敵へと戦いを挑みたかったのか。それとも急激な環境の変化に驚嘆し暴れたのか。あるいは、全てかもしれない。
そしてそれの眼前に立ちふさがったのはごく小さな生き物だった。それ一匹だけではどうしようもなく弱弱しい生き物。だが小さな生き物たちは自分を無力化し勝利した。そしてその小さな生き物の行動はそれの心のようなものに影響を与えた。
弱い仲間のため、死への恐怖を押し殺し、外敵に立ちふさがり戦うもの。その小さくも雄々しい、大きな姿はかつての己を思い出させた。そしてそれは心のない精神の中で願った。
願わくば、もう一度彼らのように……
だがその願いは叶えられることはない。肉体は既に滅びてしまったからだ。戦う身体が無ければどうしようもないのだ。彼らがいるのが古代魔道具、ギアボックスの中でなければ
そして『彼ら』は再び大地に立つことになる。あるものはかつてのように新たなる仲間を護るために。またあるものは強者と戦うために。またあるものは再び自由な空へ飛ぶために。
余談だがギアボックスに記録されていたロボットの設計図は確実に完成品だった。ではなぜキヤたちが改良を加えざるを得なかったのか? それは人間が操作するようには出来ていなかったからだ。ハードがあっても人が操作するためのソフトがなければ木偶人形だ。だが設計図には人間が操作するための配慮などなかった。何故なら必要なかったからだ。
『ロボットが己の意思を以て動くのであれば』
魔導杖銃
魔法魔術の権威エリナ・アンブランデがコウタ・キヤの蒸気銃を元にして制作したと言われている魔導兵装。1,3mほどの金属板に複雑な呪文を刻み込まれており、魔力を通すことで刻み込まれた呪文が銃口から発射される。
今まで数々の魔法使いや魔術師がこのガンロッドの制作に取り組んだが、暴発や金属板に呪文を刻み込む際の難易度の高さ、そして刻み込まれた呪文が正しく発動しないなど数々の失敗のせいで完成品が出回ることは皆無である。
五丁製作されたと言われ、一丁はエリナと共に開発したコウタ・キヤによって分解され喪失。残り四丁はエリナ・アンブランデが晩年複雑な封印を施して弟子に管理を任せた。
この封印は世界に大きな危機が迫った時に解けると言われ、事実バルナレアス国に超巨大魔物であるベヒーモスが出現した際に封印が解かれ、ベヒーモス討伐に大きく貢献したという。討伐後はなんと自動的に再封印がされ、今も連綿と続くエリナの弟子たちが厳重に管理し続けているという。
「第一の杖銃は火の杖銃。その一撃は着弾地点を世界から焼き消す」
「第二の杖銃は水の杖銃。その一撃は砂漠を水底奥深くへと沈める」
「第三の杖銃は風の杖銃。その一撃は大地を巻き上げ虚空へ飛ばす」
「第四の杖銃は土の杖銃。その一撃は万物万象を叩き落し捩り潰す」
「彼と私は救うための道具を作った。大きな厄災に立ち向かうための力。だからこそ私は守る。これが正しいことに使われるように。それが彼と私との揺るがない約束」




