カラオケ屋から江東子
不思議な力を備えた哲子をいくるみは抑えられずにいた。哲子に近づくだけで面白いように弾き飛ばされてしまうのだ。
「みかかちゃんどうしよう」
「慌てるな、いくるみ。何かそこら辺のものを奴に向かって投げるのよ」いくるみは歩道に違法駐輪してある自転車を哲子に向かって投げつけた。
「きゃ」哲子が身構えるが間に合わない。しかし、自転車は哲子を通り抜けそのまま哲子の後ろに転がった。
「駄目か」みかかは爪を噛んだ。
「いやぁ、宇宙パワーで敵対攻撃は通用しないってわかっててもねー。身体が反応しちゃうわ」
「今の怖がり方可愛かった」周りのいくるみちゃんがそう言って、キャッキャと各々哲子の真似をして居る。それを見て哲子は怒り、いくるみの群れに突撃。次々吹き飛ばしていく。しかし、吹き飛ばされたいくるみちゃんはすぐに戻ってくるし時間が経つに連れて少し離れた店でバイト中のいくるみちゃんも合流するため、その人数は増している。
「キリがないな〜」
「どうする?みかかちゃーん」
「取り敢えず、遠巻きに牽制!」
「はーい」
いくるみちゃんの集団は哲子を数十メートル間隔で取り囲んだ。哲子が移動するとそっちのいくるみが道を開けるが、包囲網は変わらない。哲子がそんな状況の中、永代通りを東に移動する。カラオケ屋の前を通ると、ちょうどそこから間が悪い女子高生が出てきた。
「あっ」それはツインテールの江東子であった。
「あなたは」
「まだ、挨拶してなかったですね、深川哲子。私は江東子」そう言うと、江東子のケータイが鳴った。
「あ、ちょっと失礼します」
「はい」
「江東子ちゃん。目の前の哲子を始末なさい」
「みかかさん!私一人でですか」
「周りを見てみろ沢山いくるみが居る、だが、不思議な力があって奴を抑え込めない」
「わっ本当。いくるみちゃんが一杯居る〜」手を振る江東子。
「健闘を祈る」
「わっかりました、頑張ります」終話。
「という訳で、深川哲子覚悟しなさい」ケータイを持った手を哲子に向けて江東子が哲子にそう宣告した。




