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現場服の真面目不器用おじさん、異世界の施工不良を叩きなおす 〜魔王軍の総攻撃? 工事の邪魔だから全員ヘルメット被って座ってろ〜  作者: 田島久護


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職人の矜持と三本足の相棒ーおじさん、旅立ちの前に「現場監督」を拾う

イレイズさんから出立の胸を伝えられると屋敷は慌ただしくなり、行軍の経験者を呼んで必需品を揃えては多すぎると選択しなおしたりと、リィナのために皆懸命に準備を率先して行っていた。


もちろんリィナ本人も皆と共に楽しそうに準備していて、良かったな微笑ましいなと思う反面居辛くなり、ちょっと外の空気を吸ってくると近くの兵士に告げて外へ出る。


死んでも誰も悲しまない自分と、死んでほしくないと思う人が多くいるリィナでは、当然だが他人の対応が違う。


幼い頃から見続けてきた他人の光景なので見慣れているけど、いつまで経っても羨ましいと思ってしまう気持ちが抜けなかった。


羨んでも手に入らないものだから仕方がない、そういつものように割り切り、仕事を請け負ったからには最後まで完遂しようと気合を入れなおす。


「こちらにいたのですか」


 中庭で一人空を見上げていたところ、不意に後ろから声を掛けられて驚き振り返る。そこには俺をここに留まらせようとしたメイド二人がいた。


いたのですかという口調からして、こちらを喜んで探したわけではないと分かる。何か用かと聞いたところ、リィナ様を連れて行くのだから必ず彼女を生きて戻せという。


彼女たちを見ると現場にスーツ革靴で来た挙句、安全帯も着けずヘルメットすら適当に被り、作業員を鼓舞すると言ってストレス発散に来た、役員のおっさんを思い出した。


どこの世界でも安全圏で高みの見物をしてるやつらほど、相手が自分より下だと認識したら無理難題を押し付ける。


現場で仕事をし続けてきたので、こういう謎に上から目線で命令する人には慣れているが、不快であることには変わりがなかった。


今回の件はリィナというまだ大人にもなっていない少女が、命を張って親の仇を取りに行くというのに、周りの大人は誰も付いて行かなかった事実がある。


それを分かっていながらこれを言う精神が凄いな、と呆れて鼻で笑った。


「何かおかしい事でも?」


 相手も鼻で笑いながら言うので、ここはドスぶっすり単刀直入に言ってやろうかと思ったが


―やめろサク。馬鹿に何か言う暇があるなら道具の手入れをしておけ。俺たちはみんなの明日を作るのが事だ。ああいう手合いの頭の中を正すのが仕事じゃねぇよ。


 西島親方の言葉がふと頭を過り


「いいえ」


 そう笑顔で言って会釈をしてその場を離れる。再び誰も居なくなったところで、道具の手入れと言う言葉を思い出して剣を呼び出してみることにした。


飛んでくるのか目の前に現れ浮くのか分からないので、とりあえず飛んでくる想定で手を掲げながら


「剣よ来い!」


 そう叫んでみたところ、手を前に突き出せば届く距離に横に出現する。恐ろしく間抜けな光景だなと恥ずかしくなり、慌てて手を下げながら柄を掴んだ。


「間抜けな姿ではあるが、安全確認もせず当日作業にかかるよりはマシだな」


 これまでと違い、よりはっきりとした声で西島親方の声が聞こえ、慌てて辺りを見回したが何もいなかった。


今の状況でさえ夢かもしれない可能性があるのに、その中でも夢を見るなんてどういう冗談だと思っていると


「ふん、なかなか良い頭の形をしているな。止りやすくて助かる」


 バサバサと音を立てて頭の上に何かが降りる。見ようとしても頭の上なので見れるはずもない。


どうしたものかと思いながら唸っていたところ、腕を横にして前に出せと言われたのでその通りにしてみた。


すると腕に一羽のカラスが降りてくる。ぱっと見は普通のカラスだが、よく見ると目つきが悪い上に右目が赤く、そして何より足が三本生えていた。


三本足と言えば耐震性を高め強度を飛躍的に向上させた、サンドポール工法を思い出すので縁起が良い。


目の前のカラスもカラスらしく賢そうなだけでなく、三本足であることで揺れにも強そうで逞しく見える。


「縁起が良いと思ってくれてありがとなおっさん。俺の名はヤタってんだ。お前さんが持つその剣に興味があって惹かれてきた。ぜひこれから同行させてほしいんだがどうだろうか」


 同行させてほしいとはどういうことかと聞くと、個人的にその剣の威力や持ち主がどうなるか知りたいと言う。


クリスタルソードの歴史を知っているのかと聞いたところ、まぁそれなりにとだけ答える。


こちらとしては敵の間者だと困るのだがと言うも、お前は敵が何なのか知っているのかと返された。


たしかに具体的には魔族らしいと言うことしか知らない。


逆にお前は知っているのかと問うと当たり前だと言われる。


「ここは魔族から一番遠い領地故知らない連中が多くて呑気だが、魔族領に近い者たちは危険を感じ移住を始めていると聞くぞ?」


 カラスなのによく知っているなと感心した。ヤタはカラスだからこそ知っているのさと自慢げに返してくる。


ここの連中の呑気さは感じていたが、イレイズさんやリィナの両親が暗殺されるような世の中なんて、平穏である訳がない。


このクリスタルソードでどこまで行けるか分からないが、だいぶ厳しい旅になりそうだなと思い唾をゴクリと飲み込んだ。


「まぁ今からそう気を張るな。空回りして整地を怠れば立つ家も歪む」


 ヤタがそういうのでお前は俺の元の世界の仕事を知っているのかと問うと、自分は建築に興味があるだけだよと言った。


声が西島親方に似ているのはなんでだろうと不思議に思って聞くも


「そのニシジマとかいう男は知らないが、お前の魂から聞こえる厳つい声は嫌いじゃないぜ?」


 そう答える。ただのカラスではないとは思うが、色々気になりすぎて最早どれが不思議か分からなくなり、異世界だしそういう旅の道ずれがいても良いかと思い聞かなかった。


「コーサクさん! お兄様が呼んでいます!」


 もう少しヤタと話そうかと思ったところでリィナが呼びに来る。


剣よ来いと言って出したのだから、剣よ鞘へと言えばペンダントに収まるかなと思い、そう言ってみると当たったようでペンダントに吸い込まれていった。


仕事道具の片付けも声一つで出来れば楽だよなぁと思いながら、視線をリィナに向けると


「あら、その子は?」


 腕にいたヤタに視線が行っているので、どうやら彼も旅に同行したいらしいが良いかと言うと、もちろんですと喜んだ。


「お名前はなんて言うんですか?」

「くわぁ!」


 リィナの問いに対してカラスらしい鳴き声で返したのを見て、驚いて転びそうになる。俺とは普通に会話しておいて、なんで彼女には鳥然とするんだと抗議するも


「シャイなのさ」


 とキザっぽく返してきて頭を叩きたくなったが堪えた。



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