雨を待つ屋根
春の長雨に備え、ギルは村の屋根を点検していた。冬に煙が逆流した家では煙突を直したが、別の家の軒には板の割れが見つかった。雨が降る前に全て直すことはできない。ベルクは人が多く住む家を優先しようと言ったが、独り暮らしの家も水が入れば寝る場所を失う。
ミラは雨漏りの位置と応急処置の可否を一軒ずつ確かめた。サラの台所では器を置いて雨水を受ければしのげそうだが、薬草棚の上に水が落ちる家ではそうはいかない。ギルは屋根に上る仕事を安全な日だけに限定し、別の家の修理を同時に引き受けなかった。
レアは余った油布を貸すと言ったが、仕事に使う分まで失えば困る。必要な面積だけを切り、返却時の汚れは村の共有費で洗うことにした。晴れた朝、板を打ち直した家の主は、ギルへ温かな麦茶を差し出した。
応急の油布を張った家は、雨が降るたび布の端へ水が溜まった。ギルは穴を空ければよいと考えたが、流れ先に木の戸口がある。家の主と相談し、水が足元へ落ちない角度に布を掛け直した。雨漏りが少なくなっても、布は屋根の代わりにはならない。ミラは工事の優先表からその家を消さず、晴れる日の作業を待つよう伝えた。住人は不安が残ると言いながらも、寝具を濡らさず夜を過ごせた。
一軒ずつ違う戸口の高さを測るうちに、ギルの帳面にも新しい寸法が増えていった。
最初の雨が降った日、修理できなかった家では指定した器に水が落ちた。住人は夜まで安全に過ごし、翌日にギルへ知らせた。ミラは雨音を聞きながら、濡れない屋根をすぐ全員へ渡せなくても、濡れた時に逃げられる場所を先に用意できると知った。




