25話 再び王宮へ
私はすぐに王都に戻り、父に会った。
「リリア、よく来たな。お前に王女キャロルの情報を伝えておこう」
父は、この半年間のキャロル様のことを、私に話してくれた。
アスラス様との婚約を、国王陛下に無断で破棄したキャロル様は、国王陛下に強く叱責されたらしい。
キャロル様は、恋人グリックと婚約を結ぶことを望んだが、国王陛下は、キャロル様の勝手な望みを叶える気はなく、行方不明になったアスラス様が戻ってくるのを待っていた。
ところが、アスラス様の遺書が見つかり、キャロル様との婚約は白紙に戻ったのだが、婚約者が死んですぐに新たな婚約を結ぶのは体裁が悪いと考えた。
そのため、喪に服すという理由で、半年間はグリックとの婚約を認めないことになった。
しかし半年後に、アスラス様が王都に生きて戻って来たので、国王陛下はキャロル様の婚約者を予定通りにアスラス様にすると決めた。
だから現在、アスラス様は以前と同じように王宮通いを始めている。
「お父様、私をまた、アスラス様の専属メイドにしてください」
「ああ、それが良かろう。あやつは我が領地に必要な人材だ」
ボレアリスの屋敷を出る前に、ステイクにも言われた。
「お嬢様、ぜひとも、ラディー様を奪還してください」
わがまま王女が、あのまま変わらずにいるのなら、アスラス様の幸せのために、私は彼を取り戻すわ!
私は茶髪と茶色い瞳に変えて、アスラス様の専属メイドに返り咲いた。
王宮のアスラス様専用の執務室に入ると、以前と変わりなく、アスラス様は公務の書類に目を通していた。
結局、わがまま王女キャロル様は、相変わらず、自分の公務を押し付けている。
「アスラス様、お久しぶりでございます。今日からまた、アスラス様のお世話をすることになりました」
「ああ、メリー、久しぶりだね。君は里に帰っていたと聞いたが……」
「はい。父の病気の看病のために、里に帰っておりました。父も回復したので、こうやって王都に戻って来れたのです」
「そうか。それは何よりだったね」
「あの……、アスラス様は、半年間の記憶がないとお聞きしたのですが、何か思い出したのですか?」
「いや、それが、さっぱり思い出せないのだ。婚約破棄されて、自暴自棄になって、死にたくなったことは覚えているのだが、そこから先は思い出せない。恥ずかしいことに遺書まで書いて、皆に迷惑をかけてしまったようだ」
「どのような暮らしをしていたのか、何か思い出せるようなものはなかったのですか?」
「それが、何もなくてね。記憶を取り戻したとき、僕は良い身なりをしていたから、それなりに裕福な暮らしをしていたんだと思う。だけど、財布の中は空っぽでね。いったいどんな暮らしをしていたのやら……」
財布の中が空っぽだった?
そんなのおかしい……。
私は最後の会話を思い出す。
あのときラディーは、薬草の本を百冊買えるほどの大金を所持していた。
結局、買った本は三冊だけだったから、財布の中にはお金がたくさん入っていたはず。
いったいラディーの身に、何が起こったのだろうかと、私は不安に思った。




