16話 領主代理の仕事
「リリア、起きていたんだね」
「はい。あなたの寝顔を見ていました」
「ははっ、見られていたと思うと、なんだか恥ずかしいな……」
「あっ、ごめんなさい」
とっさに謝ったけれど、頬を少し赤く染めたラディーを見られたから、ちょっと得した気分。
「いや、僕たちは夫婦なんだから、謝る必要なんてないよ。リリア、こっちへおいで」
私が身体を寄せると、ラディーは私を胸に抱いた。
「リリアを抱いて、わかったんだ。僕とあなたは、ずっと愛し合っていたんだって……」
「なぜ、そのようなことを?」
「だって、僕がどうすればリリアを悦ばせることができるのか、ちゃんと知っていたんだ。次から次へといろんなことが頭に浮かんできて、それをすれば、リリアは、すごく嬉しい反応をしてくれただろ? 声が大きいって言ってたのも本当だった。これって、僕たちが毎日愛し合っていたから、浮かんできたことなんだろうなって……」
嬉しい反応とか、声が大きいとか、聞いていて恥ずかしくなったけど、ぐっと我慢して顔には出さないようにした。
夫婦なんだもの。
毎日愛し合っていたのなら、恥ずかしがってはいけないわ。
「ねえ、リリア、僕たち、毎日、どれくらいしてたの?」
「えっ……、そ、それは……。あなたは私を離してくれなくて、毎日明け方まで……」
ちょっと見栄を張ってしまった。
「本当に? じゃあ、まだできるね」
「ええっ?」
ラディーは私を抱く手に力を込めた。
そしてまた愛の営みが始まった……。
ラディーは、こんなときも真面目で、明け方になると私を抱くのを止めて、ひと眠りすることになった。
メイドのカレンも、執事のステイクも、新婚夫婦だと思ってくれているから、夫婦の寝室に入ってくることはなかった。
私たちは陽が高くなってからベッドから起き上がり、身支度を整えて食堂へ降りた。
私は身体のあちこちが、痛かったりだるかったりで歩きにくかったけど、悟られてはいけないと思って、平静を装った。
普段から身体を鍛えていたから、たぶん上手くごまかせたと思う。
食事が終わったら、今日から領主代理の仕事を教わることになっている。
ステイクは私たちを執務室に連れて行き、書類や帳簿を前にして仕事を教え始めたのだが、天才ラディーは、すぐに覚えてしまった。
「ふむ、飲み込みが早いようですね。では、本日からこの執務室で仕事に励んでください。わからないことがあれば、私にその都度聞いてくださればよいでしょう。それから、明日は、領地をご案内いたします」
ラディーは、執務室に籠って、過去の書類と見比べながら、現状把握に努めていたが、その仕事は夜中まで続いたので、この日の夜の夫婦の営みは、お預けになってしまった。
私は、残念に思う気持ちと、身体をゆっくり休めたいと思う気持ちが混ざり合う複雑な気持ちで夜を明かしたのだった。
翌日、ラディーと私は、ステイクの案内で北部の農村地帯を視察に回った。
領主代理の兄の手腕は的確なようで、領地の人々の暮らしが困窮しているような様子はなかった。
昼食を食べに集落に寄ったときのこと、偶然、隣人同士のもめごとに遭遇した。




