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【完結】ライラ~婚約破棄された令嬢は辺境へ嫁ぐ  作者: ariya


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2 珍しい客人たち

 公都内の監獄塔内への捜索は3日かけてまわった。

 自分とは体格の異なる大人に化ける場合は魔力をかなり消費するようである。2件まわったあたりでライは倒れるように眠って、しばらくしてから残りの捜索へとあたった。

 その監獄塔でもライラの痕跡を見つけることができなかった。

 

「どうする? ふりだしに戻って奥まで探すのも可能だけど、ライラのにおいはなかったし」


 別の場所を探すのも考えた方がいいかもしれない。

 そうはいっても他に罪人が幽閉されるような場所は思い至らない。

 クロードさえいてくれれば、大公弟の地位を使い候補地を割り出せたかもしれない。

 彼は戻ってきているかもしれない。

 わずかな希望を抱きながら公都別館へと戻ろうとしたが、ライラのゴシック情報により記者たちが集っていた。ひどい有様で近づくこともできない。

 リリーは記者たちに隠れて、隠し通路を使い別館の中へ入っていく。バートに現状を確認したかった。

 バートからクロードは戻ってきておらず、公城へ問い合わせしても急病により療養中であるらしい。


 明らかにおかしい。


 クロードがこのような状況で療養しているわけはない。ドクターストップをかけられても飛び出しているだろう。

 リリーは公城へと赴こうとしたが、バートが止める。

 心配したバートがリリーたちに休憩をもうしつけた。

 今のリリーは数日ろくにやすめておらずひどい顔をしていると。


「でも、こうしている間にも奥様が……」


 まだ秋とはいえ、夜は冷え込む。彼女が幽閉されている場所が寒くない場所とは限らない。

 もし、熱病を発症してしまったらどうしよう。薬を最後に飲んでから数日経っているのだ。


「バートの意見に賛成。少し休まないといざというときライラを助けられないぞ」


 隙をみて脱出を試みようとするブランシュをおさえつけるライは説得してくる。

 同時にバートに頼み込んで、ブランシュが籠からでられないように蓋をとりつけてひもでくくりつけた。

 籠の編み込みの隙間があるから息はできるはずだ。ぴゅーっとブランシュの悲し気な必死な声が響く。


「そうですね……冷静にならなければ」


 今の自分では何も考えが思いつかない。バートのいう通り休憩にしよう。

 ソファの上で横になり仮眠をとった。


「ブランシュー、みんな気持ちは同じだ。でも、お前が人間に捕まったら悲しむのはライラだぞー」


 ライは籠の中に声をかけた。とりあえず周りが冷静にならなければ何も始まらない。


 料理長がバートに声をかけてきた。どうしたのだと確認すると裏の厨房への入口へ侵入者が出たという。

 もしかすると取材をしにきた新聞記者かもしれない。

 困ったものだとバートは何とかお引き取りいただこうと侵入者の対応へ出て行った。

 しばらくして慌てて戻ってくる。

 バートが連れてきたのはアビゲイル公女であった。


 彼女は侍女の恰好をして、記者の質問攻めをかいくぐり敷地内へと入ってきたという。


「あれ、アビーじゃん。どうしたの?」


 ライの声にバートは青ざめた。いくらなんでも公女に対して失礼であると。


「いいのよ。ここは城じゃないし、必要ないときまで彼に人の秩序を強要する気はないわ」


 アビゲイル公女はライの正体を知っていた。

 アルベル視察の折、クッキーを頬張り嬉しそうにしているライをみておかしいと感づいた。

 彼の後ろに狐のしっぽがみえたのだ。

 きっと何かあるのだろうとアビゲイル公女は彼の正体をひたすら推理していき、北天狐であると気づいた。

 ライラにそのことを伝えると彼女は困ったように秘密ですよとお願いしていた。

 アビゲイル公女は彼のスケッチをすることを条件に約束した。


「その姿はなんだ? お城にいなきゃいけないんじゃないのか?」

「あんな場所、逃げてきたわ」


 アビゲイル公女はふんと鼻息をもらす。

 今公城では混乱の中にあった。

 ライラが第三皇子殺害容疑で捕らえられて幽閉された時、公妃は大公へと詰め寄った。

 しっかりとした捜査をして事実を確認するまでは彼女を牢獄へ幽閉するのはやめるべきだと。

 病のことも知っていたので、せめて城の敷地内の塔の軟禁を提案した。

 さらにライラがアメリーから辺境伯夫人の座を奪った件に関してもおかしいと訴えていた。

 経緯はどうあれライラがいかに辺境伯夫人として相応しいのは事実である。少なくともアメリーよりもずっと。

 大公夫妻は言い争いになり、大公はついに怒り出して公妃を城の敷地内の塔へと幽閉した。

 今までの大公ではありえない行動に侍女たちは怯えてなにも言えなくなった。

 今の公城で強い発言権を持つのは公になっていないがアメリーとなっていた。

 彼女は大公の弟嫁として認められ、新しい公女のようにふるまっている。


 アビゲイル公女はおかしいとすぐに察して、侍女の衣装を借りて城を飛び出した。元々絵画に夢中で、部屋に閉じこもりがちであったため侍女が適当に影武者を装ってくれている。

 現にアビゲイル公女が城から飛び出して半日経っているというのにその件で騒ぎになっていないのだ。


「本当、おかしいわ。あの女がお父様たちに挨拶してからおかしくなったし、クロ叔父様は行方不明だし」


 アメリーの大公への挨拶の場に同席したと聞いていたが、あれ以降彼の姿を見た者はいないという。


「とにかくこのままじゃ城がたいへん……でも、私が何かすれば幽閉されるかもしれないし」


 いろいろ考えてまずはライラの身の安全を確認しようと飛び出してきたのだ。


「でも、あそこには騎士もいるしすぐにばれて私まで幽閉されるかもしれない。一人で考えるより、仲間を募るのがいいと思ってここまでやってきたのよ」


「あそこって、アビーは場所がわかるのか」


 ライの質問にアビゲイルはこくりと頷いた。大公夫妻の口論を聞いていたので、アビゲイル公女はだいたいどの場所かすぐにわかった。

 リリーはむくりと起き上がった。先ほどまで深い眠りについていたが、誰か来たなと夢朧気にしていたらアビゲイル公女の言葉に慌てて目を覚ましたのである。


「公女殿下! お願いです。奥様の居場所を教えてください」

「もちろんそのつもりよ」


 アビゲイル公女はこほんと咳払いした。その時彼女の袖口にきらっと光るものがあるライの視界に入る。琥珀石のカフスであった。紳士用のカフスを何故アビゲイル公女がつけているのだろう。


「ライラは、アリー=デル修道院にいるわ」


 何百年も前に建立された古い修道院である。作られた目的は一般の修道院とは異なり、現在管理するものは不在である。

 精神病を患ったアリー公女を幽閉する目的で作られた修道院である。

 彼女の没後、似たような公子公女が生まれなかったためそのまま使用されなくなった。

 大公家が所有している土地であるが、幽霊が出るといういわくつきあり誰もそこに赴任したがらなくなった。

 地下には実際アリー公女が使われていた牢獄があり、ライラはそこに捕らえられているだろう。


「さっき、近くまで行ったけど出入口に騎士が見張っていて……間違いないと思ったの」


 早速ライラ救出作戦にでることとした。ライラが脱出したら脱獄罪に問われるかもしれない。

 だが、とてもじゃないがライラが十分な体調管理を受けているとは思えない。

 このままでは皇子殺害罪により帝国へ送られ、死罪になるだろう。

 その前に病により苦しんで衰弱死してしまうかもしれない。


「そうね。病を考えると救出した方がいいわ。あそこの地下の夜はとにかく冷えて、今でも冬並みの寒さになっているわ」


 昔、創作課題探しで探検したことがあるようだ。アビゲイル公女はあそこの環境を思い出した。

 彼女の言葉にリリーはめまいを覚える。何としてでもライラを救出するのだ。


「おや、珍しい顔ぶれだね」


 男の声がして一斉に窓の方へとみた。オズワルドの言葉である。

 窓の外からこちらを眺めている白いふくろうの姿があった。ライは窓をあけるとばさばさと白いふくろうは部屋の中へと飛び込んだ。


「オズ、ワルド様?」


 リリーは震える声で呟いた。


「ふ、ふ。驚いただろう。何と使い魔とは視覚と構語をリンクさせる魔法に成功したのだよ。といっても短時間だけだけど。ところでクロとライラはいないのかい?」


 首をこれでもかといわんばかりに白いふくろうはひねる。これでせいだいにクロをからかう気満々だったようだ。

 リリーは今までにないほどの速さでふくろうの傍近くまで寄ってきた。


「オズワルド様、奥様が皇子殺害容疑で捕まってしまって、閣下は行方不明だし、とにかく今すぐ公都へ来てください!!」


 リリーはまるで流れ星に願いことをするかのごとく早口に頼み込む。

 あまりの早さでオズワルドはすぐに理解できなかった。


「ちょっと待ってくれ。鳥の聴覚がまだ慣れていないから……ゆっくり言ってくれ」


 ぱたぱたと羽をばたつかせて白いふくろうはリリーを落ち着かせるように声をかけた。

 リリーの話をだいたい把握したオズワルドはふむふむと頷いた。


「事情はだいたい把握した」

「なら、早く来てください。あなたの力が必要なんです!」

「とはいえ、困ったことにアラ族とジル族が攻め込んできてちょっと動きづらいなぁ」


 今のオズワルドはハン族のベンチェルに力を貸しながら、2つの異民族との攻防を繰り広げていた。

 去年と同様に魔物を操る魔術師を戦に登用してある。

 オズワルドは雪辱を晴らさんが為、1年研究に研究を重ねてきて対策済であった。

 情勢は優位であるが、対策の魔法を使えるのはオズワルドのみである。

 できることであればクロードとライラを最優先にしたいところであるが、万が一のことが起きればアルベル領民へ被害が及んでしまう。


「とりあえず、弟子をそこへ送ろう。後は南の方へ助力嘆願をしてみる」

「南ってどこですか。南って」


 公国、帝国の国境付近のことをいっているのか、それとも彼の故郷イセナのことを指しているのか。

 

「君らは、ライラ救出に力を、つくし……」


 時間切れが迫ってきているようでオズワルドは質問を答えず一番優先すべきことを伝えた。そしてふくろうはほーとしか鳴かなくなってしまった。

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主にアルファポリスの方で連載しております。もし宜しければリンク先へお越しください。 一部設定を変更しておりますが、流れはほぼ同じです。
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