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白亜の魔女ミレーヌの旅行記  作者: 彩音
第一章-幼女時代-
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06.お砂糖作り

魔導士ってなんだっけ?

 ディアナ様とお茶会をしてから翌日。

 私、美幼女ミレーヌは再び王宮に出向いて来ています。

 先日ディアナ様が言っていたテンサイが本当にテンサイなのか見るためです。

 準備だけして違うものだったとなったら目も当てませんからね。


「こちらがテンサイです」


 王宮勤めの兵士さんが貢物倉庫まで案内してくれてそれを見せてくれます。

 彼女は魔法士です。階級的に私より下なので五歳の私にも敬語を使ってくれます。

 

「ありがとうございます」


 微笑むと兵士さんは頬を赤くしてそっぽを向いてしまいました。

 あらら、視線を外されていましたか。ふふっ。


 心の中で小さく笑いながらその野菜を見ます。

 

〘テンサイだねー〙


 別名砂糖大根。どうやら間違いないようです。

 とりあえず試しに一つもらっていくことにします。


「これもらっていってもいいですか?」


 兵士さんに問いかけます。

 

「あ! 自分が運びます」

「ありがとうございます」

「いえ、白亜の魔導士様のお役に立てて光栄です」


 権力とは良いものですね。

 おかげで楽が出来ます。

 兵士さんを連れ添って王宮の銀の廊下を歩きます。

 眩しいです。どうしてこんな成金趣味にしたのでしょうか。

 先程権力を良いものといいましたが、見栄を張らないといけないという点では面倒臭いですね。


「白亜の魔導士様」

「はい?」

「その、お手を繋がせていただいてもよろしいでしょうか?」


 その言葉で兵士さんを見ます。

 顔が真っ赤ですね。

 相当勇気を振り絞ったに違いありません。


 ニヤッと笑って兵士さんの手を取りました。


「いいですよ」

「うっ……。ありがとうございます、ありがとうございます。

 天にも昇る柔らかさです。幼女の手最高」


 本音が口から漏れていますよ。

 でも気持ちは分かります。

 このまま手を繋いで離れの王宮魔導士詰め所までよろしくお願いしますね。

 

 私たちは道中、結構な視線を集めました。

 羨ましいと思っている方が沢山います。

 私と手を繋いでいる兵士さんは羨望の目で見られていますね。


「ずっとこの時間が続けばいいのに……」

「歩き続けるのは少し辛いですね」

「は! 自分、欲望を声に出してしまっていたでしょうか?」

「手を繋いだ時から出ていますね」

「ひっっっっ!!!」


 兵士さんの顔色が赤から青、ついには白に変化します。

 その様を見ているのも面白いですけど、そんなに怯えなくても大丈夫ですよ?


「も、申し訳ありません。白亜の魔導士様」

「全然いいと思いますよ。むしろもっと私のことを称えてください」

「許してくださるんですか!?」

「はい!」

「はぁ……。なんて素敵な幼女なの。お持ち帰りしたい。

 毎日ほっぺをぷにぷにしたい。そうすればきっと毎日がバラ色になるわ」


 くすくす。面白い願望がある方ですね。

 悪い気はしません。何せ私ですからね。兵士さんがこんな願望を抱いてしまうのは仕方ありません。


「幼女、幼女最っ高……。永遠に幼女でいて欲しいわ」

「着きましたね」

「は!! いつの間に」


 王宮離れ。王宮魔導士詰め所魔道具作成科。

 ここが私の仕事場です。

 私が魔導士になった直後に立ち上げられたばかりの部署なのでまだまだ実績はありませんし、人も少ないです。


「ここまでありがとうございました」


 ドアの前。お礼を言って兵士さんからテンサイを受け取ります。


「いえ、自分は仕事をこなしただけなので」


 そうは言うもの明らかに兵士さんの声には初めよりハリがありません。

 ちらちらと私に何かを期待する眼差しを送ってきます。

 分かりやすいですね。思わずまたニヤッと笑ってしまいます。


「また、お願いしますね」

「は、はい!! いつでもお声掛けください」


 兵士さんに笑顔が戻りました。

 にこにこと手を振りながら持ち場へと戻っていきます。

 私もその姿が見えなくなるまで手を振り続けました。

 約束ですしね、これが上手くいったらまたお願いしましょう。


*


「……………」


 違和感ありますね。

 ここは魔道具作成科です。

 その材料の魔石や鉱石がごろごろ転がっています。

 そんな中にテンサイ。

 この部署のメンバーもこちらを見て微妙な顔をしています。


 さて、取り掛かりましょう。

 まずは大体1cm角にテンサイの大根部分にあたるところを包丁で切ります。

 ……面倒ですね。風の魔法で済ませましょう。


風の刃(エアカッター)


 横着ですか? 包丁で切るより等間隔になるのでこちらの方が良いと思います。

 

 次に鍋を用意して布を中に入れて敷き、そこに先程切ったものを中に入れます。

 水魔法と炎魔法で鍋の中にお湯を作って大根を浸らせて、そのまま一時間程待機です。

 

 この間に部署内を見て回ることにします。

 この部署の部長は誰でしょう?

 ヒントは最年少で魔導士の階級を得た美幼女です。

 正解は私です。優秀過ぎるのも大変ですね。


「どうですか? 進んでいますか?」

「まずまずですね。魔石の加工がやはりネックになってます」

「風と炎と水の三属性を魔石に込めないといけませんしね」

「はい。しかも片手で持てるようにするっていう最低条件がありますからね」

「課題は難しそうですか?」

「いえ、なんとかしますよ!! 絶対」


 頼もしいですね。

 現在ドライヤーを開発中です。

 本体の大きさ、魔石の加工、熱風から冷風までの調節と切り替え。

 様々な課題を一つ一つクリアしながら販売を目指しています。

 これが完成すると簡単に髪を乾かせるようになりますからね。

 現在はお風呂の後は髪は自然乾燥です。

 自然乾燥では髪は痛みますし、季節によっては風邪の元になります。

 そうなると治癒魔法も効きません。


〘風邪は万病の元。だから風邪なんて引かない方がいいよね〙


 風邪を引く原因を一つでも減らせれば国民の生活が気分的に少し楽になる筈です。

 開発を急ぎましょう。


 部署の職員といろいろやっているうちに時間が経過しました。

 大根を取り出して鍋の様子を見てみます。

 今はまだ分かりませんね。

 ではこの残った湯汁を強火で煮詰めていきます。

 その作業は試作品の携帯コンロを使います。

 これは後少しで規制品として売り出す予定になっています。

 時間が経ってくると湯汁が水あめのようになって来ました。

 弱火にしてせっせとアクを取りながらまだまだ煮詰めます。

 色が白っぽくなってきたら鍋をコンロから降ろして木の棒を使いぐるぐると掻き混ぜます。

 分かっていましたが、結構大変ですね……。


「変わりましょうか?」


 職員の一人の方がそう言ってくれますが断ります。

 

「ありがとうございます。もう少し頑張ります」


 私は白亜の魔導士です。

 これくらいでへこたれません。


 ふんすと胸を張ると微笑ましいものを見るような視線が私に注がれます。

 何をしても注目を集める私です。ふふっ。


 湯汁が段々固まってきたような気がします。

 もう少しだけ混ぜて結晶化してきたらお皿に移して完成です。



 出来ましたね。茶色い砂糖です。

 少し指にとって舐めてみます。

 ……独特な味ですね。

 えぐみが若干感じられます。

 これをもっと甘くするにはもう一工夫が必要になります。


「どうするのだったでしょうか……」

〘飽和状態にする必要があるね〙


 とするとテンサイ一つ分では足りませんね。

 先程の兵士さんはまだいるでしょうか。

 部署から出て王宮に向かうと明るい笑顔で出迎えてくれました。


「白亜の魔導士様、どうされました?」

「テンサイをもう少しもらえませんか?」

「王女様から白亜の魔導士様にテンサイのことを聞かれたら望みを叶えるよう言われています。

 自分がまた運びますよ」

「お願いしますね」

「はい!!」


 倉庫へ行き、テンサイをもらって部署までの道のりはまた兵士さんと手を繋ぎます。

 今度はこちらから即繋いでみました。


「あぁぁぁぁ~、幸せ再び」

「また部署前までお願いしますね」

「はい! 喜んで」


 兵士さんは終始幸せそうでした。


*


 魔法って便利ですよね。

 とりあえず沢山のテンサイ砂糖を作り、後は別の鍋の中に水の量に対して三倍の濃度の砂糖を入れて魔法を使用します。液体を気体に変える魔法。つまり乾燥です。

 これで白っぽいような茶色な砂糖完成です。

 この作業を何度か繰り返します。そうすると色が白くなり甘くなるのです。

 

 出来たものを指に付けて舐めてみます。

 うん、砂糖ですね。料理にもお菓子にも通用します。健康にもいい筈……です。


「白亜の魔導士印の砂糖出来ましたー」


 やりましたー。

 早速ディアナ様に報告です。

 


 まさか本当に私の称号が使われるとは思いませんでした。

 [白亜の魔導士印の白砂糖]

 リリスティア王国王都リリムにてまずは独占販売中です!!

空間魔法使えばいいのに。

……とは言わないであげてください。

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