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白亜の魔女ミレーヌの旅行記  作者: 彩音
第一章-幼女時代-
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02.魔法の才能*

 では魔法の訓練を始めましょう。

.

.

「じゃあミレーヌちゃん、今日はミレーヌちゃんがどの属性の魔法を扱えるのかから始めましょう」

「はい!」


 魔法には属性というものがあります。

 これは相性があり、人それぞれ異なります。

 闇・炎・水・風・光・土・無。の七属性。

 この世界で使用されている曜日の概念もこれが当て嵌められています。

 無属性は生活魔法と空間魔法に当たりますので誰でも使用可能です。

 魔法の練習は五歳になった時から始まります。

 つまり私は始めたばかりなのです。

 これまでは無属性の練習と概念などをお母様とお母さんから見聞きして習って来ました。

 ですが属性魔法は今日が初めてです。

 私はどの属性と相性が良いのでしょうか。

 個人的には水と相性が良ければ嬉しいです。

 水は他の属性と違い性質変化がありますからね。

 液体・気体・固体。水の属性魔法が使える。

 それだけで大きなアドバンテージを持ったも同然です。


「そうねぇ。まずは何から……」

「水からやってみますね」

「水ね。砂漠でも使えるし、水属性なら大当たりね」

「はい!」


 水属性。どうか相性がピッタリでありますように。


 軽く祈ってから魔法の行使準備を始めます。

 空間からお母様たちにもらった杖を取り出して集中です。

 意識を体内に潜らせます。胸から中に入って魔力袋へ行って魔力感知。

 魔力感知は最初に何度も練習させられたのでもうバッチリです。

 次は魔力操作。魔力袋から腕へと魔力を伝達させて、更に杖に繋ぎます。

 ここで準備は完了です。後はイメージです。

 使う魔法は水。


〘高圧洗浄水かな。あれだと水でも岩が切断出来るからね〙


 なるほど。ではそれに槍の形を与えることにします。

 イメージ完成。案山子に向けてそのイメージを解き放ちます。


水の槍(アクアスピア)


 発動しました。水属性との相性あったようです。

 魔法は案山子へと一直線に飛んでいきます。

 頭を貫き、その後ろの壁・結界に当たり魔法は消滅しました。


「え……」


 次の魔法を使おうとしていると背後のお母さんから小さな呟きが聞こえます。

 どうしたのでしょう? 振り向くとお母さんは信じられないものを見たかのように私を見ています。


「お母さん?」


 もしかしてやったらダメなことだったのでしょうか?

 嫌われてしまう? 嫌です。想像して涙が零れそうになります。

 ですがそれは杞憂でした。

 次の瞬間、お母さんが私を抱き締めてくれます。


「凄いわ。ミレーヌちゃん。魔法の天才なんじゃないかしら。

 もしかしてエミリアさえも凌ぐ使い手になるかもしれないわね」

 

 そんな大袈裟です。ですが褒められるのは嬉しいです。

 もっと私を褒めてください。


「ミレーヌちゃん、他にも魔法見せてくれる?」


 お母さんが私と視線を合わせて微笑みます。

 勿論です。私もそのつもりですよ。


 踵を返し、再び案山子に向き合います。

 次の魔法は個体。氷の魔法です。


 魔力感知、魔力操作、イメージ。

 ……発動。


氷結(フリーズン)


 杖から解き放たれた魔力が魔法という奇跡の力となり、空気中の水分を凍らせていきます。

 案山子まで繋がる、長く、巨大で強大な氷柱。案山子も包み込み、凍らせてしまいます。


 これはこれで完成ですが、なんとなく殺風景ですね。

 悪戯心が湧いてきます。ちょっと加工してしまいましょう。


 魔法発動。


氷結薔薇楽園(フリーズローズエデン)


 この魔法によりただ固まっていたそれが氷の薔薇咲く庭園に変わります。

 うん。美しいです。芸術って良いですよね。魔法の力とはこういう風に使うのが正解だとも思います。


「お母さん、どうですか?」


 私はくるりと振り返って笑顔いっぱいでお母さんを見ます。

 お母さんは唖然とした顔で固まっていました。

 丁度いいですね。液体・固体と来ましたから、気体も試してみましょう。


 体の汚れを洗浄する魔法。


洗浄魔法(クリーン)

「ひゃっっっ!」 


 お母さんが一瞬、体をびくつかせました。

 全身を濡らした後で瞬時に乾かす感じの魔法ですから水に濡れる冷たい感触がどうしてもあるのですよね。

 

「今のは……?」


 何が起こったのか? お母さんが自分の体を確かめています。

 ですが何も変わったところは見つからなかったようです。

 汚れを落としただけですからね。当然の結果です。


 それよりまた褒めてもらいたいです。

 私はお母さんをじっと見続けます。

 ……お母さんがそんな私の視線に気づいてくれました。


「ミレーヌちゃん、本当に天才なのね!!」


 抱き締めてくれて頬擦りの後、頭を撫でてくれます。


「ミレーヌちゃんは凄いわ。さすが私たちの子ね」


 褒めちぎりですね。私ご満悦です。


「でも、この氷いつ溶けるのかしら」


 そう言えば……。

 それを考えていませんでした。

 炎の属性と相性が良い方がここにいる人の中にいるでしょうか。

 いえ、もしかしたら私にも出来るかもしれません。

 属性は一種だけとは限りませんから。


「私がやってみますね」

「え? ミレーヌちゃんが? 魔力はまだ大丈夫?」

「はい。まだ体内に魔力を感じるので大丈夫です。それに……」

「え?」

「いえ、なんでもありません」

「そう?」

「はい!」


 ふぅ。上手く誤魔化せたでしょうか。

 実は今までの水の魔法は体内の魔力をそこまで使用していないのです。

 魔力は少なめで後は空気中の水分を利用して使いましたので。

 水の魔法は燃費がいいです。

 多かれ少なかれ空気中に水分って溶け込んでいますからね。

 ですがこんな概念と使用方法聞いたことありません。

 私の中の変な声が言っていたことですから、今は多分私だけしか出来ないと思います。

 子供でもそれを人前で言ってしまえばどうなるか分かります。

 称えられて騒ぎになるのは構いませんが、変なものに祀り上げられるのは嫌です。


 では炎の魔法を試してみることにしましょう。

 これだけの氷です。溶かすには相当な熱量が必要になりますね。


〘なら青い炎かな〙

 

 青い炎? なるほど赤い炎よりも温度が高いのですか。

 変な声は物知りですね。


 魔力感知、魔力操作、イメージ。

 

〘ドラゴンブレス〙

 

 いえ、いるのは知っていますが私ドラゴンって見たことないのですが。

 映像これですか。怖いですね。実際に遭遇すると一溜りもなさそうです。

 ……発動。


炎帝の吐息(インフェルノ)


 発動しました。青い炎が渦を巻いて、まるで蛇長竜のように氷を溶かしていきます。

 氷と炎で恐ろしい程の熱気が立ち込めます。

 これはかなりキツいですね……。私がやったこと、ですが。


 ………。

 後始末は終わりました。

 しかし熱いですね。風でこの熱気を掻き混ぜたら涼しくなるでしょうか。


〘扇風機? サーキュレーター? 台風?〙


 又何か変なものが。

 ここに来てから随分見えるし、聞こえますね。脳内が忙しいです。

 兎に角この熱気なんとかしましょう。


旋風(ブラスト)


 案山子までの道に幾つもの竜巻が発生します。

 これにより熱気もましになりました。

 ふぅ。魔力は余裕がありますが、精神疲労がありますね。

 私には水と炎と風の属性魔法が使えるということが分かりました。

 他のものも試してみたいですが、それはまた今度にして今日はこれくらいにしておきましょう。


「お母さん、今日はもう帰りましょう」


 見るとお母さんはまた固まっていました。

 ……仕方ありませんね。


洗浄魔法(クリーン)

「ひゃっっ!」

「お母さん、帰りましょう」

「えっ、ええ……。そうね。ねぇ、ミレーヌちゃん」

「はい?」

「エミリアが帰って来たら魔導士試験受けてみない?」

「えっ!」


 魔導士試験。それは文字通り魔導士になるための試験です。

 先輩の魔導士さんに付き添ってもらった上で試験を行い、その方から合格証明書をもらえれば晴れて魔導士と名乗ることが出来るようになります。

 今の私は卵です。魔法士の卵。魔法士とは魔導士の下に位置する階級です。

 上から順番に賢者、魔女、魔女見習い、魔導士、魔導士見習い、魔法士、魔法士見習い、魔法士の卵。

 魔法使いにはこれだけの階級・段階があるのです。

 魔導士になるのは遠い道のりです。

 それを試験ですか。もしかして魔法士と間違えているのでしょうか?


「魔法士のことですか?」

「違うわ。ミレーヌちゃんは魔法士の器に収まる子じゃないわ。

 だからね? 魔導士になったらいいと思うの。

 ミレーヌちゃんならきっと合格出来るわ」


 ふふ。そこまで褒められるといい気分ですね。

 吝かではありません。魔導士試験受けてみましょう。


「やってみます」

「ええ、エミリアにもミレーヌちゃんの凄さを見せつけてやりましょうね」

「はい!」

「ふふ」


 お母さんが優しく頭を撫でてくれます。

 やる気がどんどん湧いてきますね。

 目差せ合格です!!

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