01.魔法使いの国
某アニメの影響を全力で受けている作品となります(笑)
でも主人公はあの子よりかなり傲慢です。
この世界に生まれてから五年が過ぎました。
優しい二人の母親に愛情をたっぷりもらって育てられて私は幸せな子供だな~って思います。
ですが少々お母様もお母さんも過保護すぎだと思う時もあります。
溺愛が過ぎると言いますか……。
でも私という存在は昔はいてもいなくても良い存在扱いをされていました。
だから沢山構ってもらえる今は嬉しいのですけどね。
……はて? 昔? 昔ってなんでしょうか?
私はまだ五歳です。[昔]というとそれよりも前のことを示す筈ですが、私の記憶の中にお母様たちにそんな扱いを受けていた記憶はありません。前からお母様たちは今と変わらず私を愛してくれていました。
「う~ん……」
よく分かりません。
思えば物心ついた頃からだったでしょうか。
たまによく分からない言葉や知らない場所の映像が頭の中に映るようになったのは。
このことはお母様たちには言っていません。心配をかけたくありませんから。
「悩んでいても仕方ありませんか」
子供の想像力の産物なのかもしれませんね。
きっとそうでしょう。悩むのはやめて私は現在地・自分の部屋から廊下に出て玄関へと向かいます。
「んしょんしょ」
玄関ドアのドアノブは高いところにあって私にはまだ届きません。
ですから玄関の片隅に置いてある私専用の踏み台を持って来て、それに昇りドアノブに手を掛けます。
"ガチャ"
「ふ~~っ」
これだけでなんとなくやり遂げた感がありますね。
私は一人でニヤニヤします。
それから何事もなかったかのように歩き出します。
目的地はお母さんのいる庭です。
お母様はこの時間は宮廷魔導士としての仕事中です。
ですから家にいるお母さんにやりたいことがある旨を伝えに行くのです。
〘女性同士で子供が生まれるって違和感ある〙
また何か言葉が過りましたね。
何を言っているのでしょうか? そんなのこの国では当たり前のことなのに。
この国の名前はリリスティア 魔法使いたちの国です。
魔法使い。魔法を行使する存在。それは女性しかなれません。
男性には魔法を使うことが出来ないのです。
その理由は男性と女性の体の構造の違いにあると言われています。
女性には心臓の近くに空気中に漂う魔素を取り込んで自らの魔力の源とする魔力袋という臓器が生まれつき存在しているのだそうです。
男性にはそれがないので魔法を扱えないとお母様に聞きました。
何故か聞く前から知っていた気がしましたけど、何故でしょう?
まぁいいでしょう。しかし人体とは摩訶不思議なものですね。
さて、そんなことを考えているとお母さんのいる庭に到着しました。
ジャガイモの収穫中みたいですね。
顔に泥が跳ねて汚れてしまっていますよ。
「お母さん」
声を掛けるとお母さんが振り向きます。
真っ白な雪のような白金髪に琥珀色の瞳、長い耳。
私のこの髪はお母さん譲りですね。
瞳の色は濃い青なのでお母様の瞳の色を受け継いでいますが。
「あら、ミレーヌちゃん。どうしたの?」
はい。ミレーヌとは私です。
肩までの長さのさらさらした白金髪と湖底を思わせる青の瞳、耳長人族の女の子です。
自分で言うのもなんですが、容姿は中の上の上と言ったところでしょうか。
エルフの女性は全員美麗な容姿を持っていますからね。
その中で中の上の上と言えばかなりの美少女だと思います。
いえ、今は美幼女でしたね。
「お母さん、魔法の訓練がしたいので訓練場に連れて行って欲しいです」
この国は魔法使いの国というだけあって魔法の訓練場が設けられています。
魔法は緊急時以外はその場所で使うよう法律で定められているのです。
あ! 生活魔法は別ですよ。それが使えないと料理も出来ませんし、明かりを灯すことさえ出来ませんからね。
「そうね。もう少しだけ待っていてくれる?
お母さん、すぐにジャガイモの収穫終わらせちゃうから」
そう言ってお母さんは土魔法を使用します。
それによりジャガイモが畑の中から顔を見せます。
良い出来ですね。後でジャガバターを作ってもらいましょう。
絶対に美味しいです。
次は風魔法。畑から顔を見せたジャガイモを宙に浮かせて一つの場所へ。
収穫完了です。
「今年も豊作ですね。後でジャガバターを作ってください」
「そうね。ふふ、ミレーヌちゃんの好物だものね。分かったわ」
言質を取りました。訓練後に楽しみが出来ましたね。
そのためにも魔法の訓練を張り切ってやりましょう。
「じゃあ行きましょうか」
「はい!」
お母さんが空間から箒を取り出します。
これは空間魔法です。女性であれば誰でも使える基礎の魔法です。
なんでも遠い遠い昔、神話の時代にこの世界を創造した女神様がその前に創造しようとした別の世界に繋がっているのだそうです。
ちなみにその世界は創造中に事故を起こして放棄となったらしいです。
それを廃棄のまま放置にするのではなく、有効活用しているというわけですね。
そこは女神様の力で凍結されているので、その空間に収納したものは時間が停止するのだと言い伝えられています。本当のところは分かりません。そこに行くことは出来ないので確かめるすべがないのです。空間魔法は生きているものには使えないのです。だからそこに行くことは出来ません。考えてみると良いことですよね。もし使えてしまうと、ある日突然行方不明になる人とか現れてしまうかもしれませんから。
「ミレーヌちゃん、準備は良い?」
「はい!」
お母さんが腰を掛ける箒の後ろに乗ってお母さんの腰に手を回してしがみ付きます。
そうしているとお母さんが私に微笑みます。
ですから私もお母さんに微笑み返します。
「ああ、ミレーヌちゃんったら今日も可愛いわ」
「ありがとうございます」
お母さん、デレデレです。毎日こんな感じです。
「お母さん、行きましょう」
「そうね」
声を掛けないといつまでもデレデレしっぱなしですからね。
お母さんは前を向くと箒に魔力を伝達させて空へと浮かばせます。
「こんにちは、ミレーヌちゃん」
「こんにちは、カミラおば様」
「あ、カナリアさんじゃない。またお野菜買いに来てちょうだいね」
「はい、伺います」
「ミレーヌちゃん、今日も元気そうね」
「はい! 体調はバッチリです」
空を飛んでいると、こうやって様々な方々に声を掛けられます。
ここは王都だけあって人が多いのも理由の一つですが、やっぱりお母様が宮廷魔導士という王女様の側近の職についていることが大きな理由でしょう。
自慢のお母様です。
「エミリアはやっぱり凄いわね」
「はい!」
お母様のことを口にするお母さん。
とても幸せそうです。時々娘の私が二人の仲の良さに充てられて頬を染めてしまうくらいの仲良しさんですからね。好きで好きで堪らない。そういった気持ちが伝わってきます。
「お母さん」
「はい。なぁに?」
「私、お母さんたちの元に生まれてこれて幸せです」
「私もよ。私たちのところに生まれて来てくれてありがとう。ミレーヌちゃん」
「はい!」
箒で空の旅。少ししてお母さんが到着を告げます。
「さっ、着いたわよ」
「はーい」
お母さんが箒を巧みに操り、魔法訓練場の庭に着地します。
箒の操作は空に向かう時よりも地面に着地する時の方が難しいんですよね。
絶妙な力加減が必要になりますから。
何しろ勢いをつけたまま着地すると大変なことになります。
引力に引っ張られて地面に転げて大怪我をすることになります。
そうでなくても足は無防備なのです。
地面に降り立つように着地すると重力の負荷で足を痛めます。
着地は地面と足との間に距離を持たせて浮いた感じでする必要があるのです。
お母さんはその点がとても上手いです。
空気抵抗なども全部計算に入れているのでしょう。
いつも丁寧に着地します。
「ミレーヌちゃん」
「はい」
お母さんの声で箒から飛び降ります。
それを見てお母さんは箒から降り、空間へとそれを仕舞います。
その瞬間、"ドーーーーーーーン"凄まじい爆発音が響きます。
びりびりと空気が振動しているかのような錯覚さえします。
これは今日は宮廷魔導士クラスの方が訓練場にいらしているみたいですね。
ですが訓練場には傷一つついていないのが素晴らしいです。
ここは王女様と宮廷魔導士が協力して張った結界があります。
これを破れるのは大災害くらいでしょう。
自然の力には人は敵いません。
どれだけ強固なものも自然災害の前では無力化されてしまうのです。
今のところはそのような災害は起きていませんが。
この先も起きないことを祈りたいですね。
「お母さん、宮廷魔導士の方がいらしてるみたいですね」
「そうね。向こうにも専用の訓練場があるのだけど……。
どうしたのかしら」
「とりあえず行きましょう」
「そうね。考えていても仕方ないわね」
私たちは手を繋いで歩き、訓練場の中へと入ります。
受付けで名前と使用時間を書類に書き、前払いで料金を払うと受付け完了です。
室内は幾つかのブースに区切られていて、魔法行使者が立つ場所には白線が引かれています。
そしてそれより50m程先には標的となる案山子があり、魔法行使者はこれを狙うのです。
尚、この案山子はオリハルコンで出来ているので壊れることはありません。
壊れてもオリハルコンという金属は形状記憶合金ですから、溶かして作られた時の形に戻るのです。
一種の永久機関ですね。
〘ボーリング場みたいな施設ね〙
それが何かは分かりませんが。
……今、脳内の映像に流れたのがそれでしょうか?
似てはいますね。ただ、ガータというのですか? ここにはそれがなく、代わりに壁があって仕切られていますけど。
私は壁に大きく[7]と書かれているブースの前に立ちます。
今回ここが私の使用するブースです。
では魔法の訓練を始めましょう。




