00.プロローグ*
その時間帯はまだ朝早く、教室にはまだ七名しか登校して来ていなかった。
私こと御陵 凛と友人兼恋人の藤原 琴音、中洲 藍瑠の三人を含めた七名。
男子が三名、女子が四名。
今はそこそこ落ち着いているけれど、後もう少しすれば登校してくるものが増えて最終的には総勢三十名となり、教室は一気に騒がしくなる。
いつものことだ。
そうして先生がやって来て、チャイムが鳴っているから席に戻るようにと注意されて散開。
出席を取ってホームルームが始まって終わったら授業開始。
その時は静かになるが休憩時間と放課後にはその時の静かさを取り戻すかのように騒がしさが戻る。
それが私立・青葉高等学校1-Aの朝の日常。
今日もそんな日常が繰り返されるのだと信じていた。
しかし、この日私たちの日常は突然の爆発により理不尽に奪われた。
*
起こった出来事は教室に密かに仕掛けられていた手作り時限爆弾の爆発。
その事件を起こしたのは私たちの副担任の男性で担任の女性に告白したのにフラれて自分をフるなんてあり得ないから殺そうと考え、このような事件を起こすに至ったらしい。
何ともしょうもない理由。そして巻き込まれた私たちはいい迷惑。
というかこの副担任は爆弾が爆発する時間を間違えてセットしていたらしいのだ。
故に犠牲者は運悪くそこにいた私たちだけ。
何故犠牲になった私がこんなことを知っているのかと言うと、死した私たちを迎えに来た死神が教えてくれたから。
ついでに私たちの死は死後の世界・常世にとって完全に予定外で故に受け入れ態勢が整っておらず、常世の神様が困っていると言う話も聞いた。
勝手に死ぬなって被害者の私たちが怒られたことは解せない。
こっちだって死にたくて死んだわけではないというのに。
それから私たちは一応常世に連れて行かれたが、やはり受け入れが出来ないということで神様と死神たちと私たちとの話し合いの結果、人生をやり直すことが決定された。
されたのだが、ここで一つ問題が起こった。
それは地球では肉体も滅んでしまっているし、常世では予定外であっても現世では死んでしまったという事実は変えることが出来ず、戻れないというのだ。
ならどうするのか? 聞いた私にもたらされた解決策は地球ではない異世界への転生だった。
それを聞いて二名程は少し渋った。
この二名は家庭仲が良く、家族に会いたいから地球に戻りたかったらしい。
それに対し、私は家族にはいない者として扱われていたので割とあっさりと異世界に転生することを了承した。
かくして渋っていた二名もどうしようもないと分かると異世界行きに首を縦に振った。
「異世界に行くのは良いんだが、何か特典はないのか?」
私たちが行く世界はアルテラという世界。
その世界の歴史など神様から詳しく説明を聞いてからいざ異世界へ。
その時になってそれを言ったのは男子陣の一人、鈴原 高貴。
彼の言いたいことは分かる。こういう展開だとweb小説なんかではチートがもらえるっていうのがテンプレだから。嗜んでいて良かったオタク趣味。
口には出さないが私もワクワクしていると神様はあっさりと私たちの期待を打ち砕いた。
《そんなものはありません》
その言葉で私たちの間にガッカリした空気が流れる。
が、神様にはそんなこと関係ないようで私たちを異世界に送るための準備がなされる。
足元に現れる魔法陣。
転送の開始。
その瞬間、私の恋人の琴音と藍瑠が不意に叫んだ。
「異世界では凛ちゃんの胸をわたしと同じくらいに小さくしてください」
「同意する」
「は?」
思わず声が出てしまったが、さっき神様は特典とかないと言っていたから、この訴えは無視される筈とそう思っていた。
でも体が魔法陣に吸い込まれて消えかかっているその時、私は神様が信じられないことを言ったのを聞いた。
《まぁ、そのくらいならいいでしょう》
「待ってください」
言う、その前に私たちの体は魔法陣の中に溶けて消えた。