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海系ダンジョンとは?

「いやあ、昨日おすそ分けいただきました、巨大ナマズ肉でしたか?お教えいただいた通り、甘辛の醤油ダレでつけ焼きのかば焼きにしたのですが、これがもう……身は柔らかくてほくほくして、たれが絡んで絶品でした。しかも、今朝の目覚めもいつもより快適で、腰の痛みもありません。滋養にもいいというのは本当ですね。


 あのようにおいしい肉は生まれて初めてでございます。感動いたしました、ありがとうございます。」


 翌朝、朝食のために食堂へ向かうと、管理人のチートがやってきて頭を下げる。手土産代わりに、持っていた肉の一部を差し上げたのだ。巨大ナマズ肉は、トオルの調理で毎回おいしくいただいているし、最後にこなした水系のA級ダンジョンでは、十mを超す超巨大ナマズがボスだったからな。


 取得した肉は野営用に冒険者の袋に詰めてある分だけだが、すぐにクエストを行えば調達できるから、全く問題はない。これよりも、この地のダンジョンで取得できる魔物肉が、どんなものがあるのか楽しみだ。


「それはよかった……またダンジョンでいいのが手に入ったら、進呈しますよ。」


「いやあ、ありがとうございます……女房もべた褒めでしてね……大喜びしますよ。」


 チートが笑顔を見せる。ありがとうはこちらのセリフだ……部屋は清潔できれいでシャワールームも各部屋に完備していて、さらに海が眺められる共同大浴場まであるのだからな、こんな施設を格安で借りられるのだ。

 ミニドラゴン用に馬小屋を改造してくれると言ってくれたし、至れり尽くせりだ。



「じゃあ、出発するぞ……ギルドは町中にあるから、とりあえず乗合馬車で行こう。」

 岸壁沿いの別荘から通りへ出て、乗合馬車でギルドへ向かう。15分ほどで繁華街まで着くので結構便利だ。


『ギィッ』大通りにあるひと際目につく大きな建物の中に入っていく。ギルドの建物は、どの都市に行っても同じつくりなので見つけやすくて助かる。

 別荘へ降りるときに見た港側が街のようで、ギルドも海岸沿いの高い防波堤の内側に作られていた。


「いらっしゃいませ、コーボーギルドへようこそ。ギルドは冒険者であるあなたのサポートを全力で行います。

 何なりとご用件をお申し付けください。」


「おはよう……このギルドでの冒険者登録をお願いする。」

 まずはギルド受付で、この地域での活動登録を行う。


「どんなクエストがあるのかしらね、海沿いだから水系ダンジョンが多いのかな?」

 ホールの壁へ向かって歩いていると、ナーミが後ろから話しかけてくる。ナーミの故郷ではあるのだが、ここに住んでいた時点では、ナーミは冒険者ではなかったからな。


「ああ……これまでにこなしていた土、水、風、火といった4種の精霊球がらみのダンジョンも、このコーボーギルドで管理されているが、ちょっと特殊なダンジョンがあるようだ。

 そっちに挑戦しようと思っている。」


 昨晩、カルネから写させてもらったダンジョンの構造図のうち、コーボーギルドで管理している分を確認していたのだが、この地域独自のダンジョンがあるということが分かった。ダンジョンにも地域性が存在するということのようだ。確かに、これまで俺たちがこなしていたのは、山にあるダンジョンばかりだったからな。


「えっ?なにこれ……B級クエストってなっているのに、括弧書きで報奨金はC+級ってなっているわね。

 しかも、精霊球欄に魚って……どういうこと?魚系魔法の精霊球ってこと?」


「魚系魔法って……どんな魔法なの?」


 ナーミが壁に張り出された1枚のクエスト票を、手に取って読み上げながら首をひねる。吊られて、隣で一緒に見ていたショウも首をひねる。確かに書かれていることはおかしいというか、謎だらけだ。


「コーボーのダンジョンの大半は、海沿いの洞窟にあるそうだ。潮が干潮の時には洞窟が現れるが、満潮時には水没する……言ってしまえば海底洞窟だな。


 そんなダンジョンだから、精霊球も海水に侵食されて球体になれないらしい。つまり特殊効果の石となる。


 しかも海水に浸かっているので、普通の特殊効果とは異なる効果……海の生物をおびき寄せるというか、疑似餌になるようだ。これをエサ代わりに罠を仕掛けたり網を張っておけば、魚たちが寄ってきて大漁となるらしい。疑似餌といっても使用回数に制約があるそうで、更新は必要なようだがね。


 ともかくこの地域でとれる特殊効果の石を使えば、魚や貝やイカタコエビなどを待っているだけで大量に集めることができるようだ。いわば漁師必須の特殊効果石だね。


 ほかにも魚たちを食い荒らすサメなどを集める特殊効果石もあり、こちらは魚用の網と離れた場所に仕掛けておけば、魚への被害が免れるようで、こちらも需要がある。


 コーボーではこれらの石を使って漁獲高を上げて、この国内の魚介類の需要を賄っているようだね。この間戦争になったオーチョコのギルドでも、同様のダンジョンがあるようだ。あそこも本来は漁港だからね。」

 カルネの構造図に書かれていた内容と、当時カルネに聞かされた冒険話を織り交ぜて説明する。


「精霊球がないことは分かったわ……特殊効果の石になってしまうわけよね?だから報奨金はいわゆるC+級扱いになるということもわかるのだけど、それなのにどうしてB級クエストになるの?精霊球がないのであれば、魔物たちは魔法を使わないわけでしょ?C+級ダンジョンってことになるはずじゃないの?」


 ナーミの疑問はもっともだ。別にC+級の報奨金しか出ないのであれば、C+級クエストということでいいのではないのか?何もわざわざB級ということにしたところで、ギルドポイントが多く加算される意外にいいことは特にない。すでにA級冒険者の俺たちには、全く意味がないことだ。


「別にB級クエストと表示して、冒険者にお得感を出そうとしているわけではなさそうだね。それなりにボス魔物が強いということと、時間制限があるようだ。」


「時間制限?」


「そうだ……さっき言った通り、干潮時にだけ洞窟入り口が現れる海底ダンジョンだから、満潮までに脱出しなければならない。脱出できなければ溺れ死んでしまう。そのため、クエストレベルも高レベルに設定されているというわけだ。」


「えー……そんな危険なところに、C+級の報奨金目当てで行くっていうわけ?」


「まあ、そうなるね……もちろんギルドでも安全対策に力を入れていて、酸素ボンベと水中眼鏡の販売をしていて、ダンジョン内には上部に退避場として4人がなんとか入れる空間を作ってあると聞いている。


 満潮までに脱出できない場合は、ボンベを使って退避場まで避難するということだね。ただし、すごく狭いらしいから、そこで干潮までの時間を過ごすことも容易ではないようだがね……クエストレベルを高めに設定して、時間内に脱出できない冒険者を極力出さないようにしているということだ。」


 これも以前、カルネから聞いた冒険者をやっていた時の話の受け売りだ。万一を考えて、道具屋で酸素ボンベと水中眼鏡は買っておいた方がいいと言っていた。できればウエットスーツも買うのがいいと言っていたが、こちらの場合は、防御力が高いものが防具屋にあるようだ。


「へえー……で?どうするの?C+報奨金目当てに、特殊効果の石しか出ないクエストを申請するの?」


「ああ……せっかく海沿いのギルドに来ているんだから、地域性のあるクエストを受けたいと考えている。

 これまでのダンジョンとは、一味違った魔物が出てきたりするだろうからね、レベルは低いとは言っても、慣れていなければ苦戦するだろうし、侮れないはずだ。


 それに、ここではこの関係のクエストが断然多いからね。防具など道具も揃えなきゃならないが、この間A級クエストを一気に4つこなしたから蓄えは十分だろ?


 冒険者の袋に携帯している予備防具はとりあえず別荘に置いておくように今朝言っておいたが、大丈夫か?」

 冒険者の袋に詰められる防具の数に制約があるため、満タンの場合は開けておくよう言っておいたのだ。


「あたしの場合は……予備は1着だけだから……全然余裕。最初に装備していた防具は、防御力も低いから、もうずっと使っていないからね。」


「僕もだよ……。」

「私は持っている防具が多いですから、当初使っていた分は部屋に置いておきました。」


 トオルと同じく、俺も城から持ってきた装備は部屋に置いてきた。やはり先祖伝来の鎧兜は、これからも伝来できればしたほうが良い……と考えているのだ。魔物たちとの戦いで、痛むからな……防具屋で修復するとはいっても、少しでも無事な姿で……これも城が戻ってきてから考えついたことだが……。


 それにしても……先ほどからホール内を見渡しても冒険者は一人もいない。早い時間に着いたからとも思っていたのだが、未だに誰もやってくる様子もない。一体どうなっているのだ?今日は祭日か何かか?


「今日はイベントか何かがあるのかい?ギルド内に冒険者が一人もいないようだが……。それとも、ダンジョンに入ることができる干潮時間が今ではなくて、深夜とかなのかな?」


「いえ……干潮時間はコーボーですと朝の9時から夕方5時までとなっておりますので、今からダンジョンに入ることができるお時間です。ですがその……他の地域のギルドへ行くと、簡単にレベルが上がるといううわさが発生しまして、コーボーに滞在していた冒険者様たちは、皆そちらの方へ行かれてしまいました。


 特殊効果石の寿命は通常は50年程と言われておりますが、コーボーで出現する集魚石などは海水に常に浸るせいか、寿命が短く2年ほどでその効果を失ってしまいます。ですので、常に更新が必要なので弱っていたところなのです。ご来所頂きまして、大変感謝しております。」


 美人受付嬢が頭を下げる。はやや……俺たちが短期間でレベルを上げたことへの影響が、こんなところにまで波及しているとは。それはそうだろうな、冒険者の数は有限だからどこかが混みあえば他は空いてしまう。


「あっああ……そうだったのかい。俺たちは恐らく長期滞在になりそうだし、ほぼ毎日ダンジョンに潜るつもりだから、少しは貢献できると思うよ。」


「ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」

 美人受付嬢は、満面の笑みを浮かべ嬉しそうに会釈をする。ううむ……もとはと言えば……なのだが、正直に打ち明けて態度が悪くなると困るので、言わないでおく。


「じゃあ、まずは小手調べに、このB級クエストで魚となっているのを申請してみよう。すぐ近くのダンジョンのようだからね。」

 どれがいいとかわからないので、とりあえず最初にナーミがとったクエストを申請することにする。


「チームナーミュエント様……ご希望のクエストは申請者様のレベルよりも低いものになりますが、お間違いではございませんか?」

 名誉A級の冒険者がB級クエスト申請するので、ギルド受付嬢が確認してくる。


「ああ……ここではこの関係のクエストが多いようなので、これをこなしてみることにした。」


「そうですか……承りました。海底洞窟ダンジョンとなりますので、安全用具として酸素ボンベなど携帯されますようお勧めいたします。」


 美人受付嬢は笑顔で申請を受け付けてくれた後、安全面のアドバイスをしてくれる。ちょっとは感謝の気持ちを見せてくれているのだろうか。


「ああ……ありがとう。これから道具屋でそろえておくよ。あと、海中用の装備もね。」

 そういってギルドを後にする。


「じゃあ、まずは酸素ボンベなどだな。」


 道具屋によって酸素ボンベと水中眼鏡……これは眼鏡とマウスピースが一体化された、頭からすっぽりかぶる形のものがあったので、迷わずこれにした。何せスキューバー免許など持っていないからな。口にくわえるタイプだと、本当にこれで呼吸できるのか不安だった。


 どちらも冒険者の袋にアイテムとして入れられるので、携帯するのも苦ではない。


「海のダンジョンで使う剣などはあるかい?」


「はい、こちらのセラミック製の剣をお勧めしております。水洗いだけで錆びませんし、何より刃を研ぐ必要はありません。」


 武器屋で見せてもらったのは、セラミックでできているという剣だ。グレーの刀身で結構軽い。それでいてC+級ダンジョンでの1回分の稼ぎの値段というのだから、お得感がある。セットの小刀含めて1.5回分だ。


「私はセラミック製の長刀と短刀に加えてクナイ10本購入しました。」

 トオルもセラミック製の武器を見せてくれる。


「あたしの場合は、セラミックとはいかないみたいね……撥水処理を施した弓だって。矢は竹でもいいけどセラミックがいいと言われたから、セラミックの矢も少し買い足ししておいたわ。」

 ナーミの弓はさすがにセラミックは無理か……。


「僕は、セラミックの魔法使いの杖を使ったほうがいいって言われた。海中ダンジョンは滑りやすいから杖があったほうがいいんだって。」

 ショウもセラミック製の杖を持って戻ってきた。


「じゃあ、次は防具屋だ。」

 引き続き防具を選定する。


「これと同程度の防具で、海中でも動きやすいものはあるかい?」

 道具屋に行って今装備している鎧を示し、同程度の装備を見せてもらう。


「ああ……かなりいいものですね……こちらになります。」


 出されたものは、強化チタン製の鎧兜セットと盾だった。これでも耐魔法性能もあるようで20%カットということのようだ。チタン製ということで、かなりお値段がお高い……A級ダンジョンの報奨金半分近く使ってしまったが、まあいいだろう。防具はまさに命を守るものだからな。


「私はチタン製の鎖帷子があるといったのですが、やはり海水用に特殊加工されたもののほうがいいそうで、そちらと、防水の忍者装束と盾を揃えました。」

 トオルも同じような支出になったと笑っていた。


「あたしは……弓使い用の防水つなぎとブーツに帽子だけど……こんなものでどうしてこんなに高いのって聞いたら、やれ炭素繊維が編み込んであるだの、撥水加工しているだの、精霊球の粉をまぶしてあるからだって、これでも格安だって言われたわ。それと……装着用の盾なんて本当に必要なの?」

 ナーミの装備もほぼ同等のようだな……。


「僕の魔法使いのローブやインナーも、盾も含めるとやっぱりこの間稼いだ半分位の値段だね。」

 ショウも購入した装備に着替えてやってきた。これで準備万端だ……。


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