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移住先検討

「ホーリ王子を頼ってみてはいかがでしょうか?助けた恩を返せと要求するようで、あまり好ましくはないのでしょうが、この状況を打破する案を模索するには、それが一番いいでしょうね。飛竜が近くに降りられるような、なるべく田舎で、ギルドがある街を紹介していただくのです。」

 とつぜんトオルが提案する。


 ホーリ王子……カンアツの第1王子……以前北方山脈北部の岸壁近辺で、魔物たちに襲われているところを俺たちが助けた。王子のおかげで、サーケヒヤー国の襲来を早期に予想できたのだから、それだけで十分と思っていたのだが……。


「そうだな……村や町などでは危険だからと成獣の竜を飼うことはできないから、人里離れた……というかほとんど人がいない集落で、しかも近くにギルドがあるところを紹介してもらうということだな。


 そんな都合がいいところがあるかどうかもわからないが、地元ではない俺たちが探すことは困難だ。紹介していただくくらいならいいか……近くへ寄ったら是非にと言われているしな……行ってみるか……。」


 何かしてほしくて助けたわけでは決してないのだが、知り合ったのも何かの縁だ。土地勘があるところで、どこか住めるところを紹介していただくという程度ならいいだろう。向こうだって、命の恩人に邪険な扱いはしないだろうから、お付きに調べさせてでも、どこか田舎の集落を紹介してくれるだろう。


「そうと決まれば、早いところここは引き払ったほうがよさそうよね……なにせ、あたしたちは一人一部屋使っているけど、後から来た人たちは、部屋がなくてチームに一部屋って言っていたから、あたしたちが立ち退くだけでも、少しは改善されるかもしれないわよ。」


 ナーミのいう通りである……今は遠くのダンジョンへ出払っているにしても、当分の間チームに一部屋はつらい部分があるだろう。特に男女混合チームなどの場合だな……。


 すぐに各自部屋に戻って片づけをして宿を引き払い、ギルドの受付へ向かう。受付係の青年は申し訳なさそうにしていたが、彼のせいではない。どちらかと言うと俺たちが招いたことなのだ。


「ようし……出発だ。」

 ミニドラゴンの背に乗り、出発する。装甲車の荷台は、これから野宿で活躍するだろうから、ミニドラゴンに足でつかませて運ぶことにした。



 途中、コージギルドの少し南の平原で野宿し、翌日の夕方カンアツの首都アーツの北10キロ地点に降りる。


「じゃあ、ちょっと行ってくるから、みんなはここで待っていてくれ。」


 街道から少し離れた草原にテントを一つ張り、みんなには留守番を頼む。ギルドで使っているタールーとの定期便の地竜も、王都内には入れないため、王都から10キロ地点に待機場があり、ここから王都へは馬車で運送すると聞いたので、この辺りが限界だろう。


 町にも近いので雑魚魔物などいないはずだが、それでもミニドラゴンが刺激を受けて暴れだしたら困るので、押さえていてもらわなければならない。


「まだちょっと距離がありそうだけど、王宮までどうやって行くの?」


「ああ……駆け足で行けば街はずれまでなら1時間もかからないだろうし、街道まで出れば乗合馬車が動いているだろうから、うまく乗れたら馬車で行くさ。王宮までは結構な距離があるだろうからね。」


 王都の外れまで10キロほどだが、中心部にある王宮まではまだ何十キロもある。さすがにトーマの体と言えども、そこまで走っていくのはきついからな。



 そこから街道へでて、町まで向かって歩いていると乗合馬車が来たので乗せてもらい、その後は馬車を乗り継いで王宮までやってきた。カンヌールよりも遥かに大きめの敷地だ。


 10m以上はありそうな巨大な外堀に幅が10mほどの渡り橋がかけられている。橋の手前側には太い鉄製のチェーンがついているようで、跳ね橋になっているようだ。


「ホーリ王子様に面会したい。」


「はあ?お前はただの冒険者だろ?その冒険者がなぜホーリ王子様と面会できるのだ?馬鹿も休み休み言え!ほれ、帰った帰った!」


 跳ね橋手前の守衛所で衛兵に声をかけたところ、一笑に付された。まあ、そうだろうな……こんな輩をいちいち相手にしていたら、1日何時間あっても時間が足りない。


「俺は確かに冒険者だが、同時に貴族の称号ももらっている。しかも公爵だ……もっともお隣のカンヌールの公爵だがな。その公爵が会いに来たといえば、確認くらいはしてもらえるかい?」


 カンヌールの公爵であることを告げ、鎧の紋章を示す。王様に褒美で頂いた鎧ではなく、アックランス家の紋章を入れた鎧に着替えてきたのだ。ワタルという名前で称号は頂いたが、家紋はトーマ家のままにして置いてよかった。


「はあ?公爵……様?ちょ……ちょっと待ってくれ……じゃなくてお待ちください……。」

 衛兵はそう言い残すとすぐに詰所に戻って、何か調べたり同僚に伝言を頼んだりしていた。


「ははあ……ワタル公爵様……大変失礼をいたしました。お詫び申し上げます。

 いま、王宮のものが参りますので、しばしお待ち願います。」

 どうやら貴族の称号というのは絶大な権限があるようだ。突然態度が変わり、詰所の中の応接のような部屋に通された。


「お待たせいたしました、侍従のフーティと申します。カンヌールの公爵様が、いかなるご用件でございましょうか?」

 しばらくして髪の毛が真っ青で、これまた真っ青な口ひげを蓄えた、背の低い中年男性がやってきた。


「どうも……ワタルと申します。実は、ひょんなことからホーリ王子様と知り合いとなりまして、近くへ来た時には必ず王宮へ寄ってくれと言われていたもので、お言葉に甘えて寄ってみたのだが……。」


 ホーリ王子との面会希望であることを告げる。アポなしどころか突撃ともいえる面会希望なのだ。まあ、無理でも仕方がないが、王子が覚えていてくれて用事は何かと聞いてもらえれば、田舎の集落を探しているから紹介してほしいと、目的を話せばいいだろう。


「ほっ……ほう……王子様と……いかなるご関係でしたかね?えーと……」


「ワタルです……と言ってもこれは冒険者名ですが、ホーリ王子様にはこう名乗っております。あっそうだ……こいつをホーリ王子様に見せれば、話が早いかもしれない。ワタルが会いに来たと伝えてください。」


 そういえば紋章の入ったペンダントを渡されていたことを思い出し、首から下げていたので、鎧の下からとり出して見せる。


「おや?これは……ホーリ王子様の……わっ……わかりました……ご案内いたしましょう。

 こちらへどうぞ……。」


 ペンダントの効果は絶大のようで、侍従という中年男性は応接を出て詰所から出ると、俺を先導してそのまま跳ね橋を渡り、さらに内塀渡り橋もわたって大きな建物へと歩きだした。

 ここも大きな内堀に囲まれた、石垣の上の白い大きな建物……日本のお城にどことなく似ている。


「こちらでお待ちください。」

 侍従に案内されたのは、本丸というか本殿の中の入り口近くにある待合室のような場所だ。すぐ横が兵隊の詰め所であるところを見ると、まだ俺のことを信用されてはいない様子だ。突然の訪問だからな、仕方がない。



「えーと……ワタル……伯爵様でございますね。私、外務大臣補佐のメーサと申します。ホーリ王子様とのご面会を要望されているとか……外国の貴族様が、我が国の王子様にどのようなご用件でしょうか?」


 しばらくして現れたのは、緑の髪の色の初老の男性だ。外務大臣補佐ということは、カンヌールとの交易に関しての件と勘違いしているのかな?


「いや……用というほど大げさなものではなく、以前ホーリ王子様と知り合うことができ、いつでも会いに来てくれとおっしゃられたため、お言葉に甘えてきてみただけなのだが……。」

 とりあえず、ただ単に立ち寄ったとだけ伝えておく。先ほども侍従とかいう人に説明したはずなのだが……。


「おお、そうですか……ご紹介状などはお持ちでしょうか?」


「いや、紹介も何も……近くに来た際には是非にとおっしゃられていたもので、ただ単に立ち寄ったというだけでして……王子様はご不在ということなのでしょうかね?」


「いえ、そんなわけでは……。」

「先ほどもお見せしたのだが、このペンダントを王子様から頂いているのだが……。」

 先ほども見せたペンダントを、再度お見せする。


「おや……これは……ホーリ王子様の……少々ここでお待ちください……。」

 外務大臣補佐は、ペンダントを見るとそのまま待合を出ていった。



 その後も、国務大臣補佐とか宮廷補佐役なんて肩書の人がかわるがわるやってくるのだが、話すことは毎回同じで、いつまでたっても王子に辿りつけそうもない。一国の王子様だからな……たとえ命を救われたとはいっても、冒険者などのことなど気にもかけてはいないのだろうかな。あきらめて帰ろうかとしていた時に……


「おいおい……何をしている?王子様の命の恩人の方が現れたのだろう?どうしてすぐにお通しされない?

 王子様は今、所用で手が離せない状態ではあるが、丁重に対応せよとのご命令なのだぞ!」


「はっ……それが……来訪の目的がはっきりしないものでして……。」


「来訪の目的?そんなもの、ホーリ王子様がいつでも訪ねて来いとおっしゃったからではないか。それなのに何を確認しようとしている?直ちにお通ししろ!」


 待合室の外で大声が響き渡っている。どうやら俺のことをどうして通さないのか確認に来てくれた様子だ。そうか……ただ単に会いに来たと言っていたのが悪かったのかな?王子の命の恩人だから、法外な謝礼でも要求されるのではないかと危惧して、目的を明確にするまで通さないつもりだったのかもしれない。


 なにせ、一般的には評判の悪い冒険者なのだ。


「これはこれはワタル殿……その節は、王子様の危機をお救い頂きまして、誠にありがとうございました。


 王子様もあれからずいぶんと気にかけられているご様子で、わが命の恩人の所在をまだ確認できないのかと、催促されておりましたところでして、ご来訪、誠にありがたく存じます。また、こちらの不手際から、長らくお待たせすることになりまして、大変申し訳ございません。」


 ようやく話が分かりそうな人が来たなと思っていたら、現れたのは丸眼鏡で長身の青年……ホーリ王子のお付きで散弾銃を持っていたやつだ。

 どうやら俺たちのことを探してくれていた様子だな……だがなあ、あんな山奥のギルドじゃあ見つかるわけもなかったわな。ギルドは個人情報は、めったなことでは渡さないだろうからな。


「おお……久しぶりだね……王子様はお元気かな……。」


「それはもう……魔物たちに遅れを取ったとおっしゃられまして、剣の訓練に一層拍車をかけられております。ああみえて……かなり負けず嫌いなのです……。


 ほかの方々はどうされました?王子様もぜひともお会いになられたいご様子ですし、王様も一緒に会食を望まれております。なにせ、王子様の命の恩人ですからね。」

 丸眼鏡が笑顔で答える。


「えっいやいや、お構いなく……俺も含めて、うちのメンバーは堅苦しいことは苦手な奴が多いので……。あの時襲ってきた連中のこと、何か見当はついたのかな?」


「いえそれが……魔物たちは魔導石を使って操っていたのだろうという結論に達しました。魔導石というのはめったに出ない希少な精霊球ですから、持ち主は限定されております。


 もちろんわが国でも所有はしておりますが、あくまでも使用目的は軍の訓練のため、戦闘の際に魔物たちを集める程度であり、魔物たちを操って特定人物を襲わせるという高度な使い方には至っておりません。


 カンヌールやサーケヒヤー国の事情もそれとなく確認させておりますが、我が国同等の使い方以外での使用を確認できませんでした。また、水竜を操っておりましたが、子供の水竜でしたので、その飼い主に関しても全く情報をつかめずにおります。


 成獣の場合は飼育場所が限られるので特定しやすいのですが、幼獣となると街中でも飼育可能ですからね。」

 丸眼鏡は、厳しい顔をしながら現状を告げる。そうか……犯人のめどはつかないか……。確かにな……魔物と水竜だけじゃあ、飼い主の検討なんてつかないわな……。


「それは、残念だね……こちらでも力になれることがあれば、何なりとさせていただくので、その際はご用命ください。


 それはそうと……今日伺ったのは、ちょっと相談があって……あの時に俺たちの中に竜がいたのを知っていると思うけど、あの竜が成獣となって飛竜と化している。移動に関して楽になったが、町中に成獣の竜は降りられないので困っている。今言って見えたように成獣の竜は、住むところが限定されてしまう。


 昨日まではタールーという山奥のギルドにいたのだが、冒険者が詰めかけてしまい今年の分のダンジョンがほとんどなくなり閉鎖寸前だ。


 そのため飛竜も一緒に生活できる環境を探しているのだが、どこかカンアツ国内で人がほとんどいない集落で、しかもギルドが近くに存在するような場所をご存じないだろうか。もしあれば紹介していただきたい。

 なにせ、わがチームはカンヌール出身が多くて、土地勘がない……。


 今も、アーツの郊外でメンバーを待たせている状況だ。町中には飛竜を連れてこられないからね。」

 王子直接ではなくても、お付きの彼ならなんとかしてくれるかもしれない。訪問した目的を告げる。


「はあ……そうですか……飛竜を飼育出来るような土地ともなると……ううむ……難しいですね。」


 丸眼鏡は、腕を組んでうなり始める……やはり難しいか。じゃあ、カンヌールで同じような場所があるのかと聞かれたら、俺は即座にないと答えるだろう。ギルドは町中にしか存在しないし、町中の一般住宅では成獣の竜は飼育できないのだ。


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