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赤い扉と新しいお友達

今日はいつもよりもおめかししている。

いつもはすごくシンプルなひざ下丈のワンピースに時々エプロンをしている。

今日もいつもみたいに支度をしようとしていたら、お母様に呼ばれてシルクのワンピースを着せてもらった。

白いパフスリーブで、ウエストは高めで若草色のリボンがついていて、後ろでリボン結びにしてもらう。

丈はふくらはぎくらいでいつもよりちょっぴり長い。

スカート部分は淡いピンクとか黄色のお花が刺繍されている。

それから髪の毛を編み込んでハーフアップにしてもらった。

靴も、ちょっと歩きにくいけれど、ウエストのリボンと同じ若草色のかわいい靴だった。

「可愛いわ、リラ。」

「良く似合っているよ。」

お母様とローランおじ様に褒めてもらって嬉しくなる。

「この前のお花の冠もかぶって行ってもいい?」

せっかくおめかししたんだし、このワンピースにとても似合いそうだと思ってそう聞いたら、ローランおじ様が精霊魔法で私の髪にお花を飾ってくれてこういった。

「あの花冠は大切なものだから、普段はしまっておきなさい。」


それから、お母様にとびきり力を込めた回復魔法をかけて出かける。

お勉強しに行く時、お母様はお留守番しているんだって。

ローランおじ様と手をつなぎ、いつも緑の森(フォレ・ヴェール)へ行くときに使う虹色の扉ではなく、その隣の赤い扉の前に立つ。

おじ様が精霊の力を少し込めて扉を開けると、見たことのないお部屋に繋がっていた。

この扉は、時々おじ様がお仕事で出かけるときに使っている扉だ。

ここはおじ様のお仕事のお部屋、執務室だそうで、大きな机と革張りのいす、革張りの応接セットと観葉植物が置かれた簡素だが重厚感のある空間だった。

ソファに座り少し待っていると、おばあ様とフレッドが一緒に入ってきた。

おばあ様とローランおじ様に準備があるから待つように言われたので、私とフレッドはソファでお話ししながら待つことにした。

今日はフレッドもいつもと違っておしゃれしている。

「リラ、今日とっても…か、かわいいよ…なんだか、よ、妖精の…お、お姫様みたい。」

フレッド、熱でもあるのかな?顔が赤いし、うまくしゃべれないみたいだし。

フレッドのおでこに私のおでこをくっつけてみる。

私が具合が悪いと、お母様やローランおじ様がいつもこうやって熱を測ってくれるのだ。

おでこは熱くなかったけれど、少し触れた頬は熱い気がする。

「フレッド、体調悪かったら言ってね。すぐに治癒魔法かけるから。念のため、回復魔法かけてあげるね。」

私はフレッドにかるく回復魔法をかけた。

「ありがとう、リラ。体調は悪くないよ。でも、今の回復魔法でとても元気になったから心配しないで。」

私に心配させたくないのかそう言っていたけれど、やっぱりフレッドの顔は赤かった。

暫くして、おばあ様とおじ様の用意が整ったので、部屋を出た。

おじ様はなぜか少し怒ったような顔をしていた。

おばあ様が先頭を歩き、その後ろを私とおじ様が手をつないで歩き、、私たちの後ろにフレッドが続く。

ここは、王都のエメラルダにあるお城だよって、おじ様が教えてくれた。

フレッドはもう知っていたみたいで、なんだかすごく緊張したような顔をしている。

お城は、とても広くて、とても長い廊下があったり、お花のすごく綺麗な中庭があったり、大きな噴水の広場もあったし、すごく重たそうな大きなドアがいくつもあった。

時々すれ違う人たちは皆、おばあ様やローランおじ様に頭を下げてご挨拶をしていたので、その度に私もこんにちは、といってぺこりと頭を下げた。

おじ様の執務室から10分くらい歩いた頃だろうか。

今までの建物とは少し違う雰囲気のやはり大きな建物に入る。

エントランスには大きなシャンデリアがキラキラ光っていた。

私たちはそこで待っていた執事であろう初老の紳士に案内されて3階の部屋に通された。

そこには、フレッドよりも5cm位背の高くて線の細い、整っていて優しそうな顔の少年と、彼よりも10cmほど背の低い、線が細くて華奢な、やはり整った顔で意志の強そうな瞳の少女がいた。

彼女にはお姫様という言葉がぴったりだと思った。

彼女は私を見て、ちょっとムッとしたようだった。


「今日からこの4人で共に学ぶのです。まずはお互いのことを知らなければいけませんね。今から30分、自己紹介を兼ねて4人でお話しなさいな。」

おばあ様はそう言うと、ローランおじ様を連れて部屋を出た。

残された私たちは、緊張のせいかみんな黙っていた。

その沈黙を破ったのは、お姫様のような少女だった。

「ねえ、あなたはローラン様とどういう関係なの?手をつないでいたけれど、まさか恋人とかじゃないわよね?」

少し怒ったような顔と声に、私だけじゃなくてみんなが驚いていた。

「私はリラ。リラ・フローレンス・シャルロワ。リラって呼んでね。ローランおじ様は、私のお母様のお兄様で、小さい時から一緒に住んでいて、私にとってはお父様みたいな感じかな?本当のお父様は時々遊びに来てくれるんだけど、普段は違うおうちで暮らしているの。」

「そうだったの?じゃあ恋人じゃないのね!」

彼女は驚いていたけれど、私の伯父だということがわかるとすごくうれしそうだった。

「おじ様は恋人じゃないわ。恋人…?恋人ってよくわからないけれど、大人になったら結婚しようねって約束している人も恋人になるの?」

私は恋人ってよくわからないので聞いてみた。

「えっと、さっきはいきなりごめんなさいね。私の自己紹介を先にするわね。私はアンヌ。お願いだからアンヌって呼び捨てにして。絶対よ。私はローラン様が大好きで、将来の夢は彼と結婚することよ。大人たちには内緒にしておいてね。

えっと、リラ、結婚の約束ってあなたが本当に好きな相手としたの?それとも、大人に決められた約束?大人に決められたならそれは恋人じゃなくてただの婚約者よ。もし、あなたが本当に好きな相手と約束したならそれは恋人よ!!」

アンヌはローランおじ様が大好きだったから、おじ様と手をつないだ私を恋人だと勘違いしていたからムッとしていたみたい。

さっきとは全然違う、すごくにこやかな、フレンドリーな雰囲気になってほっとした。

「えっとね、結婚してって言われて、私も大好きだし、守ってくれるって言われてすごくかっこよかったの。だから私も『うん』ってお返事したの。これって恋人かな?」

あの日のことを思い出したら恥ずかしくて、頬が熱くてドキドキした。

「やだ、すごくロマンチック!!それって完全に恋人よ!これだけ恋の話をしたなら私とリラはもうきっと親友になれたはずよ!親友なんだから、そのうち恋人くらい紹介してね!約束よ!!」

アンヌに親友って言われた。

私にとって2人目の親友。

ちゃんと紹介しなくちゃ。

「ええっとね、こちらが、私の親友で、恋人で、結婚の約束をしている人。フレデリック・カミーユ・ガルニエよ。私はフレッドって呼んでるの。」

そうフレッドを紹介した。

「そうなの!?あなたがリラの恋人なのね!私はあなたの恋人の親友なんだからあなたも私のことはアンヌって呼び捨てにしていいんだからね?」

フレッドは驚いたような、困ったような、照れたような、でも嬉しそうな顔をしていた。

さっきからまたずっと顔が赤いのだけど大丈夫かしら?

治癒魔法かけてあげた方がいいかな?

「ええっと、フレッドって呼んでください。よろしくお願いします。」

そういったフレッドに治癒魔法かけようか?と聞いたら大丈夫だって言われた。

「あと自己紹介してないのはお兄様だけよ?」

「僕はアルベール。僕のこともアルって呼んでほしい。人前ではそう呼べないかもしれないけれど、ここではそう呼んで欲しいし、敬語もやめてほしいんだ。」

「でも本当にいいんですか?アルベール殿下。アンヌ王女。」

フレッドが困った顔で聞いていた。

私が不思議そうな顔をしていたら、フレッドが教えてくれた。

「彼らは、王孫なんだよ。王子様とお姫様。普通は呼び捨てにしちゃいけないし、こういう風に対等に接してもいけないんだよ。」

アンヌって、やっぱり本当のお姫様だったんだ!

「はぁ、だからそういうのが嫌なのよ。私だって普通の友達が欲しいのよ。」

アンヌがちょっと怒っている。

「僕も同じだよ、お願いだから王子とか殿下とかやめてくれ。外ではそういう風にするわけにはいかないのも分かっているから、せめて僕らだけのときは対等でありたい。」

「大体、王子だから、姫だからっていう理由だったら、フレッドがリラに対等なのはおかしいでしょ?」

「そうだね、リラだってお姫様だろう?先々代の王のひ孫だし、エルフの姫でもあるんだし。」

「なにそれ?私がお姫様なんて初めて聞いたわ。冗談でしょ?」

「なに?自分のことなのに知らなかったの?それにリラのおじい様と私のおじい様だって仲良しよ。フレッドのおばあ様ってヴィクトリーヌ様よね?彼女だっておじい様とふつうにしゃべってるわよ?別にいいじゃない?」

私、なんか混乱してきた。

私がお姫様で、アンヌもお姫様で、アルは王子様で、フレッドも私の王子様だ。

「えっと、その、リラとは小さい時からこんな感じだし、リラがほんとのお姫様って3日前に知ったんだよ。」

フレッドが困ってる。

「じゃあ、今からはみんな対等ね!敬語とか使ったら私が怒るから!!」

アンヌの一言で、みんなシーンとなった。

「うん、アンヌもアルもよろしくね、仲よくしてね。」

「もちろんよ!親友なんだから!」

「こちらこそ、リラ、よろしくね。」

アルと握手する。

「アル…それに、アンヌもよろしく。」

遠慮がちにフレッドが言う。

「もちろん、親友の恋人なんだから、フレッド、あなたも私の親友よ!」

アンヌが力強くフレッドと握手する。

「どうしたらそうなるんだ…。」

フレッドがつぶやいたけれど、アンヌには聞こえていなかったみたい。

「こちらこそよろしく、フレッド。」

フレッドとアルが握手した。


こうして私たちは友達になった。

誤字訂正いたしました。

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