入社試験
赤茶けた大地に設けられた簡易試験場。
乾いた風が砂を巻き上げる。
その中央に、三人の受験者が立っていた。
火神 爆。
神威 滝壺。
罪道 斬刹。
互いに距離を取り、静かに睨み合う。
そして――それを見下ろす男。
日神 万之介。
「これより実戦試験を開始する」
低く響く声。
「ルールは単純だ。――三人同時に戦え」
ざわり、と空気が揺れる。
「最後まで立っていた者、あるいは我々が“合格”と判断した者を通す」
その言葉が落ちた瞬間――
⸻
ドンッ!!
最初に動いたのは爆だった。
地面を叩き、爆発で一気に加速する。
「まずは――!」
一直線に滝壺へ突っ込む。
(あいつ、強ぇ)
直感だった。
⸻
ギィンッ!!
滝壺は迷いなく刀で受け止める。
火花が散る。
「……短絡的ね」
冷たい声。
そのまま流れるような斬撃。
速い。
爆はギリギリで躱す。
⸻
「はっ、いいじゃねぇか!」
笑う爆。
だがその背後――
「隙だらけだなァ!!」
ドゴォン!!
斬刹の一撃が炸裂する。
“全てを斬る”ような斬撃。
爆は咄嗟にスルトで受けるが――
吹き飛ばされる。
⸻
「ぐっ……!」
砂を巻き上げながら着地。
斬刹はニヤリと笑う。
「ガキ同士でイチャついてんじゃねぇよ。試験だろ?」
荒々しい声。
その目は戦い慣れている。
⸻
滝壺は距離を取り、二人を見据える。
(……二人とも強い)
だが――
(まだ、足りない)
静かに構え直す。
⸻
「まとめて来なさい」
一言。
その瞬間、空気が変わる。
⸻
爆が動く。
呼吸を整える。
「――ッ!」
次の瞬間、踏み込みが変わる。
加速。
斬撃。
爆発。
すべてが連動する。
⸻
滝壺の瞳がわずかに揺れる。
その時だった。
万之介が、目を見開く。
「……なぜだ」
思わず漏れる声。
「なぜ我々以外が知らない太陽流剣術を、奴が使っている……!?」
⸻
爆はそのまま滝壺に斬りかかる。
紅炎の舞――からの爆発。
滝壺は紙一重で躱し、すぐさま反撃。
「…横一文字」
ギィンッ!!
剣と剣がぶつかる。
⸻
「……今の動き」
滝壺が呟く。
「流派……?」
⸻
そこに斬刹が割り込む。
「どっちもまとめて潰す!!」
ドンッ!!
地面を砕く踏み込み。
二人同時に斬り伏せにかかる。
⸻
爆は咄嗟に跳ぶ。
滝壺は最小動作で回避。
だが衝撃だけで地面が抉れる。
(コイツ……パワーが異常だろ)
爆は歯を食いしばる。
⸻
戦いはさらに加速する。
三人が入り乱れ、火花と衝撃が交錯する。
誰も引かない。
誰も譲らない。
⸻
「そこまでだ」
万之介の声が響く。
ピタリと、三人の動きが止まる。
⸻
静寂。
荒い息。
砂埃の中で、三人が立っている。
⸻
「……合格だ」
万之介は静かに言った。
「三人ともな」
⸻
その言葉に、わずかに空気が緩む。
だが万之介の視線は――爆に向いていた。
「お前に聞く」
一歩、前に出る。
「その剣術、誰に教わった」
⸻
爆は肩をすくめる。
「あんまり覚えてねぇけどよ」
少し考えてから言う。
「ガキの頃に、マンダラの一人だって言ってた兄ちゃんに教わった」
⸻
その瞬間。
万之介の表情が固まる。
「……あり得ん」
低く、はっきりと否定する。
「そのような者は、マンダラには存在しない」
⸻
沈黙。
風が吹き抜ける。
⸻
「……は?」
爆は眉をひそめる。
「普通にいたぞ」
「……いや、いない」
万之介は断言する。
「我々が把握していない者など、存在しない」
⸻
その言葉が、妙に重く響いた。
⸻
滝壺は静かに爆を見る。
(……何者なの、この人)
⸻
斬刹は面白そうに笑う。
「へぇ……面白ぇ話じゃねぇか」
⸻
爆は何も言い返せなかった。
ただ――胸の奥に引っかかる。
(……なんだ、それ)
⸻
こうして三人は、焔輪探偵社への所属を認められる。
だがそれは同時に――
“過去”へと繋がる謎の始まりでもあった。




