第十四話 山のヌシ 名はあすか
突然現れた幼女は、行儀悪く飯をかっ食らった。髪の色は灰色で薄い緑色のワンピースを着ていた。
こちらをロクに見ずに、ひたすら食べ物を貪り食う幼女の姿をみて俺と女は唖然とした。
「あ〜っ! 食った、食った! これ以上もう無理じゃ! お腹いっぱいじゃあ!!」
食べるだけ食べた幼女はそういうと地面の上に寝転がった。
祭壇の上の料理とテーブルの料理は見るも無惨な光景になっていた。俺は怒りが込み上げた。
「おい、このクソガキ!! これは一体どういう事だ!! コイツが真心を込め、手間ひまかけて作った料理を台無しにしやがって!!」
地面に寝転がる幼女は顔だけこちらの方に向けると面倒くさそうに
「褒めてつかわす」
そう言ってそっぽを向いた。
何なんだ、コイツは、そう思った俺は横にいる女に顔を向けた。
「お前もコイツに何か言ってやれ」
そう声をかけたのだが、女は異様な気配を漂わせていた。
「おい!」
女はハッ! とした表情でこちらを見た。
「あなたが、わたしの作った料理を真心がこもってると褒めてくれたから、つい嬉しくて」
そう言うと恍惚な表情で自分の世界に入り込み、一人ニヤついていた。
「おい!!」
再び、声をかけ女を見ると顔を赤らめ上目遣いで
「コッチ、見ないで」
と視線をそらしモジモジしだした。
俺は女が当てにならない事を悟った。
「仕方ない、一人で何とかするか」
そう呟いて、寝転がる幼女に問うた。
「お前、誰だ!!」
幼女は面倒くさそうにこちらを見た。
「この辺りでは山のヌシと呼ばれておるな」
幼女は起き上がり、凛とした表情で答えた。
「山の主だと?」
俺は思わず、口に出した。
その時、惚けた女の顔が真顔になった。
「山のヌシと言う事は、世界樹様?」
「エルフなだけに、ワシの事を知ってる様じゃの」
幼女がそう答えると女は片膝をつき頭を下げた。
「コイツそんなに凄いのか?」
「畏れ多いお方ですわ」
「全然、凄く見えんな」
俺は幼女の頭を軽く手でぺしぺしと
叩いた。
「あなた、お止め下さい! この御方は樹木に纏う思念を
人の形にしてこの場にいるのですわ」
「まあ良い、ワシはここが気にいった。暫く、世話になるぞ」
そう言って竹のイスに腰かけた。
「ちょっと待て、暫くここにいるなら条件がある!」
「条件とな?」
「俺にお前の名前をつけさせろ!」
「そんな事か、良いじゃろう。我は色々な所で様々な異名を持つ。我に相応しい名をつけるがいい!」
「お前は今日からペスだ!!」
「なに! なかなか良い名じゃな!! ソレは一体、どういう意味じゃ?」
幼女の目が期待して輝いた。
「俺が飼ってたイヌの名だ! ここに居る間は、その名で生活してもらう!」
「イヌの名じゃと?」
幼女の目からヒカリが失われた。
「あなた、それはあんまりです。」
「そうじゃぞ! 何とかならんのか!」
「わかった、それじゃあ、あすかはどうだ」
「イヌの名じゃなかろうのう」
「心配するな、祖父が言うには異世界の都の名らしい」
「そうか、それなら良いじゃろう」
「ところでお主……」
「俺の名前はレックスだ」
「では、レックス、お主の祖父は異世界人なのか?」
「そうだ」
「ほう、そうなのか」
何やら含みのある言い方だった。




