第十一話 俺の知性とは
女は食事はとったものの、それ以外は話し掛けても、視線も合わせずダンマリだった。
「これは、いったいどうしたもんかな」
俺は困っていた。女は中々、心を開かない。いったいどうすれば良いのか考えていたその時だった。
『デレさせるのじゃ!!そのオナゴを!!』
「誰だ!!」
俺は辺りを見まわしたが女以外、誰もいない。ちょっと前にもあった展開だ。
「お前は俺の理性か?」
『惜しい! ワシはおヌシの知性じゃ!!』
「何!!」
『とにかくそのオナゴをデレさせるのじゃ!!』
「し、しかし、 どうやって?」
『其れはその、コミュニケーションじゃ!! それを使ってオナゴを攻略するんじゃ!!』
「コミュニケーション? でもどうやって?」
『そんなこたぁ、ワシゃ知らん!! おヌシが考えるんじゃ!!』
「無責任だぞ!!」
『そんな事言うても、ワシはおヌシの知性じゃからおヌシの考えた事以上のことはワシには出来ん!!』
そう言いのこして知性は消えた。
「おいコラ! ふざけんなよ! 解決策しめしてから消えろよ!!」
知性は戻って来なかった。
女はケゲンそうな顔をして俺を見ていた。俺はなんというか、バツが悪かった。
「普通、攻略法とやらを念話かなんかでイチイチ教えてくれるもんじゃないのかよ」
俺はブツブツとぼやいた。
「そう言えば、昨日、作った竹の笛があったな、アレ吹いてみるか」
竹の笛の存在を思い出した俺は、気分転換に、竹の笛を手に取って口元にあてた。
すると笛の音の優しい音色があたりに鳴り響いた。女も笛の音に聴き入っていた。
その安らぐ曲調は治癒魔法の効果を併せ持ち、女の体調を次第に回復させていった。
「ちょっと立ってみろよ」
笛を一通り吹き終えた俺は女にそう促した。
女は言われるがままに立ち上がった。先程までロクに動けなかった女は驚きの表情を見せた。
「俺、一応、治癒魔法使えるんだ」
俺がそう言うと、女は足の痛みの程度を確認するために少し歩いたが、時折、苦痛で顔が歪んだりした。
「う〜む、治癒魔法の効きが想定と違うな。手製の笛だからだろうか?」
手応えの無さを痛感していたが、女は喜んでいた。それからは話しかけると多少返事が返ってくる様になった。
そこで俺はいくつか質問をした。
「ところで、名前聞いても良いかな? 俺の名前はレックスだ! ヨロシク!」
「ワタシ、名前、わからない」
「何処から来たんだ?」
「おぼえていない」
「何故こんな所に倒れてたんだ。」
「記憶にない」
「年齢は?」
バチーン!!
俺は平手打ちされた。
女の答えは曖昧で、どうやら記憶を失っているようだったが、年齢はタブーのようだ。
「身体の状態が回復したら、王国内のエルフ自治区に立ち寄って情報を集めないか?」
そう言って、俺は何とか女の手掛りを得ようと、話を持ち掛けた。
女はコクリと頷いた。
女の体調が改善する迄、暫くこの場に留まる事になった。
暫くして、俺は女と少し離れたところで竹を使った魚を捕まえる罠を作っていた。
その時だった。
今まで気配を消していたアイツがあらわれた。
『どうやらワシの想定の範囲内のようじゃったな!』
俺の頭の中で勝手に語り出した。
「想定内? ふざけんなテメェ! 今頃ノコノコ現れて来やがって何様のつもりだ!!」
『何様って、ワシゃおヌシの知性様じゃ』
「逃げたクセに何ほざいているんだ!!」
『人聞きの悪い事を言うでない! ワシはおヌシをカゲから見守っていたんじゃぞ』
「減らず口叩いてんじゃねぇぞ!」
『何を言っとるんじゃ、おヌシはワシの授けた秘策、即ち! デレコミュニケーションを会得したんじゃ!』
「俺はお前に何も授けてもらっちゃいねぇ!」
『謙遜するでない。おヌシとあのオナゴは、既にネンゴロの仲じゃろ! ワシのアドバイスのおかげでな!!』
そう言って知性は行方をくらました。
「おい! 全くネンゴロの仲じゃねぇぞ! 出て来い知性!」
知性は姿をあらわす事はなかった。
「全くあのヤロー! ふざけやがって!!」
俺は完成した罠を川に仕掛けた。




