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【三年の眺望】第38話:『3years』

『3years』

https://youtu.be/ua3a0W2mT9A

※こちらで視聴可能です


日常の風景、そして最高の3年間


卒業式まで、あとわずか。いつもの練習スタジオには、寂しさと期待が入り混じった、特別な空気が流れていた。練習を終え、それぞれが楽器を片付けながら、とりとめのない話をしている。


「はぁ〜…このスタジオで音出すのも、あと何回なんだろうな」

ミオが、少しだけ感傷的に天井を仰いだ。その言葉に、スタジオは一瞬、静かになる。

そんな空気を破ったのは、意外にも、いつもは口数の少ないあおいだった。


「……高校生活、色々あったけど」

葵は、愛用のギターをゆっくりとケースにしまいながら、静かに、しかしはっきりと続けた。

「私は、このバンドやれた事が、一番だった」


その言葉に、メンバー全員が動きを止めた。ミオは目を丸くし、ルナは驚きで口を半開きにしている。

「うわ…葵がそんなこと言うなんて、明日は槍でも降るんじゃないの!?」

ミオが叫ぶと、ルナも「珍しいな、素直じゃん」と茶化しつつも、その顔は嬉しそうだ。

「葵ちゃーん…!」

ユメカは、感動のあまり目に涙を浮かべている。


葵は、そんなメンバーの反応に少し照れたように視線を逸らした。

「だよな!マジで色々あったよなー!」

ミオが、その場の空気を引き継ぐように、大きな声で言った。

「思い返せばさ、ぶかぶかの制服着てた入学式が始まりだったんだよな。誰も知らなくて、超不安だったの覚えてるわ」

「うんうん!私が葵ちゃんの隣の席だったのが、全ての始まりだもんねー!」

ユメカが嬉しそうに言うと、葵は「……まあね」と小さく頷いた。


「真夏の体育祭も懐かしいな。ミオはリレーで鬼の形相だったし、葵は盛大にコケてたし」

ルナが思い出し笑いをすると、葵がじろりとルナを睨む。

「……あれは、不可抗力」

「でも、あの時みんなが『大丈夫?』って出した絆創膏、多すぎるって葵ちゃんが私にもくれたんだ。まだノートに挟んであるんだよ!」

ユメカが自慢げに言うと、ミオは「マジかよ!物持ち良すぎ!」と笑った。


「文化祭のステージも最高だった!ルナが緊張でスティック落としたり、ユメカのMCが相変わらず宇宙だったり、ハプニングだらけだったけど!」

「あれは演出だって言ってんだろ!」

「でも、全部、今じゃ笑い話だよね!」

ユメカの言葉に、みんなが頷く。


「バイト終わりにみんなで食べたコンビニの肉まんも…全部、大切な時間でしたね」

りんが、うっとりと思い出を語る。

「わかる。泣いたり笑ったり、マジで忙しかったよな。本気って、ただ頑張ることじゃなくて、こうして誰かと向き合うことなんだって、このバンドで教わった気がする」

ミオが、少し真剣な表情で言った。


「卒業したら、みんな少しずつ違う道を歩いていくんだよな…」

ミオの言葉に、スタジオは再び、少しだけ切ない空気に包まれる。

「でも、離れてもきっと思い出すよ。この3年間の、音と光の全部を」

「うん!たんこぶだらけの青春だったけど、それが今、一番の誇りだよね!」

ユメカが、胸を張って言う。


ミオは、そんなメンバーの顔を一人ひとり見渡し、最高の笑顔で言った。

「本当に、出会ってくれてありがとうな、みんな!」

「こっちのセリフだっての!」

「うん!ありがとう!」

「こちらこそ、です」

「……」

ルナ、ユメカ、凛、そして葵が、それぞれの形で感謝を返す。感動的な空気がスタジオを満たした、その時だった。


ユメカが、いつものように、にぱーっと満面の笑みを浮かべて、高らかに宣言した。


「たんこぶに感謝♡」


「「「「またそれかーい!!」」」」

ミオ、ルナ、葵、凛の完璧なツッコミが、卒業間近のスタジオにいつまでも響き渡っていた。

彼女たちの最高の3年間は、まだ終わらない。この音と光は、これからもずっと、輝き続ける。

『3years』

https://youtu.be/ua3a0W2mT9A

※こちらで視聴可能です


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