【二年の情景】第27話:『文化祭ライブ!』
『文化祭ライブ!』
https://youtu.be/Zi2-GPzl8wE
※こちらで視聴可能です
日常の風景、そして忘れられない文化祭
秋風が心地よい、文化祭の数日後の放課後。いつもの練習スタジオには、心地よい疲労感と、まだ冷めやらぬ興奮の余韻が漂っていた。
「はぁ〜…文化祭、楽しかったなぁ!もう一度やりたいくらい」
練習を終え、床に座り込んだミオが、天井を仰ぎながらしみじみとつぶやいた。その一言に、他のメンバーも深く頷く。
「うんうん!楽しかったー!でも、始まる前は心臓が口から飛び出るかと思ったよー!」
ユメカが思い出しながら言うと、ルナがニヤリと笑った。
「あんた、ステージ裏でずっとソワソワしてたもんな。『お客さん、来てくれるかなぁ』って」
「だって、クラスメイトとか先生とか、知ってる人ばっかりの前でやるのって、ライブハウスとはまた違う緊張感があるじゃない?」
「わかる。でも、黒幕の向こうから聞こえてくるざわめきが、なんか心をくすぐるっていうか…ワクワクしたよね」
ミオの言葉に、凛も優しく微笑む。
「はい。ドラムのカウントが始まった瞬間、ああ、私たちの文化祭が始まるんだなって、鳥肌が立ちました」
「1曲目はやっぱり『東京たんこぶ』でしょ!って決めてたけど、まさかあんなに手拍子してくれるとは思わなかったよね!」
ミオが興奮気味に言う。
「ねー!普段あんまり話さない子までノリノリで!嬉しくて泣きそうになっちゃった!」
ユメカが瞳を潤ませる。
「……音が、跳ねてた。体育館の木の床、悪くない」
いつもはクールな葵も、満足げにポツリと言った。
「てか、ルナ!あんたまたスティック落としてたでしょ!」
ミオが思い出したようにルナを指さす。
「あれは演出だっての!盛り上がったろ?ミスしても気にしない、この時間が最高だってことが伝われば、それでいいんだよ!」
ルナが胸を張ると、ミオは「はいはい」と笑って流した。
「でも、一番びっくりしたのは『校歌アレンジ』だよね!まさかあんな大合唱になるとは!」
「わかるー!担任の先生までノリノリで歌ってて、爆笑しちゃった!」
ユメカが手を叩いて笑う。
「その後の『思春期のバラード』で、みんなシーンとなって聴き入ってくれて…。あそこでグッときた女子、絶対多いって」
ルナが言うと、ミオは「でしょ?」と得意げな顔をした。
「そして、そのしんみりした空気を、ユメカのゆるいMCが一瞬でぶち壊すっていうね」
「えー!そんなことないよー!和んだでしょー?」
ぷくっと頬を膨らませるユメカを見て、スタジオは再び笑いに包まれた。
「でも、本当にそうかも。バラバラだったクラスの想いが、あの瞬間、ひとつのリズムになった気がした」
凛がしみじみと言う。
「音楽って、魔法みたいですね」
「うん。ステージから見てて、誰かの声が、うちらを包んでくれる感じがした。最高の気分だったよ」
ミオは、あの時の光景を思い出し、目を細めた。
「最後、『おかし』でみんなでジャンプしたのも楽しかったー!」
「私たちを、見てくれてありがとうって、心から思ったな」
ミオの言葉に、全員が静かに頷いた。
「“最初で最後”なんて言わないで、何度でもやりたいよね」
「うん!だってうちら、まだまだ走れるから!」
ユメカが元気よく言う。
「あの日のライブ、全部が宝物だよ。ステージは体育館だったけど、うちらにとっては世界で一番のステージだった。拍手が波みたいに広がって、全力で歌いきった今日を、いつか笑って思い出せるんだろうなって」
ミオは、噛みしめるように言った。
「青春は一瞬だけどさ、私たち『東京たんこぶ』の音は、ずっと響き続けるって信じてる」
その言葉は、メンバー全員の心に深く刻まれた。
この文化祭での経験は、ただの思い出ではない。彼女たちの絆をさらに強くし、音楽に新たな深みを与えてくれた。
この日の会話が、そのまま一つの曲になったかのように、「東京たんこぶ」の歴史に、また輝かしい1ページが書き加えられたのであった。
『文化祭ライブ!』
https://youtu.be/Zi2-GPzl8wE
※こちらで視聴可能です




