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【二年の日常】第17話:『夏が来る!』 

『夏が来る!』 

https://youtu.be/E4F551cqNto

※こちらで視聴可能です

ジメジメとした梅雨の終わりを告げるように、蝉の声が聞こえ始めた夏の午後。


いつもの練習スタジオは、メンバーたちの熱気でむんむんしていた。練習を終え、それぞれが床に座り込んで水分補給をしていると、ユメカがキラキラした目で口を開いた。


「ねぇねぇ、そろそろ夏休みだね~!みんなでどっか行く?」

その一言で、スタジオの空気が一気に華やいだ。


「いいね!行こう行こう!」

真っ先に反応したのはミオだ。ペットボトルをマイクのように握りしめ、立ち上がった。

「夏といえば、海!山!空!自由!ぜんぶ全部、つれて行こうぜ!」

「お、いいね!歌詞みたい!」

ルナがニヤリと笑う。


「私はキャンプがいいなー!みんなでBBQして、夜はキャンプファイヤー!流れ星とか見えたら最高じゃない?」

「えー、私は海がいいな!砂浜でスイカ割りして、かき氷食べたい!ストロー2本で!」

ユメカがうっとりした表情で言うと、ルナがすかさずツッコミを入れる。

「おいおいユメカ、誰と食べる気だよ。相手もいないのに」

「い、いいじゃん!妄想は自由だもん!」

ぷくっと頬を膨らませるユメカを見て、みんながどっと笑った。


「でも海もいいね!花火大会とか行きたくない?みんなで浴衣着てさ!」

ミオが提案すると、ユメカの目が再び輝いた。

「わー!着たい着たい!葵ちゃん、黒髪ロングだから浴衣絶対似合うよー!」


話を振られた葵は、涼しい顔で一言。

「……暑いのは、嫌い」

「またまたー。でも葵の浴衣姿、見てみたいかも」

ミオがニヤニヤしながら言うと、葵はそっぽを向いてしまったが、その耳は少しだけ赤い。


「それなら、〇〇海岸の花火大会がいいかもしれませんね」

会話をニコニコと聞いていた凛が、スマホを片手に提案した。

「電車で行けるし、屋台もたくさん出るみたいですよ。人も多いですけど…」


「お、凛、ナイス情報!」

ミオは凛のスマホを覗き込む。

「いいねぇ、花火の下でさ…君が近くて、心の奥、火がついたみたい…ヒュルリラ…って秘密のメロディが生まれちゃったりして!」

「うわ、ミオがなんか言ってるよ。ポエマーかよ」

ルナが呆れたように言うと、ミオは「うるせー!」と照れ隠しに叫んだ。


「でもさ…」

ミオは目をキラキラさせながら、メンバー全員を見渡した。

「こんなにやりたいことがあふれてるなら、この気持ち、もう曲にするしかないっしょ!」

その言葉に、全員の顔が輝いた。

「うん!『夏が来る!』って感じの、明るい曲!『制服脱いだら恋の準備完了!』みたいな、ドキドキするやつ!」

ユメカがぴょんぴょん跳ねながら言う。


「ビートはサンバしかないでしょ!ラテンの風が髪を揺らすの!波打ち際でステップしようぜ!」

ルナがスティックを振り回し、情熱的なリズムを刻む真似をする。

すると、今まで黙って聞いていた葵が、ボソリとつぶやいた。

「……青春のサンバ」


その瞬間、スタジオが静まり返った。

ミオ、ルナ、ユメカの三人が、信じられないものを見るような目で一斉に葵を振り返る。

「「「え!?葵がサンバ!?」」」

「……別に」

葵は、顔色一つ変えずにギターの弦をポロンと鳴らした。そのクールな態度と「サンバ」という単語のギャップに、みんなが再び大爆笑した。凛だけが、くすくすと肩を揺らしている。


「よーし!決まりだ!最高の夏のアンセム作ろうぜ!恋も冒険も全部のせで、きらめく季節をつかまえに行こう!」

ミオが力強くこぶしを突き上げる。

「うん!最高の夏、始めよう!」

ユメカもそれに続いた。


「で、結局、夏休み最初は何するの?」

ひとしきり盛り上がった後、ルナが現実的な質問を投げかけた。

「うーん、そうだなぁ。海もキャンプも花火も、まずは計画立てて…」

ミオが真剣に考え込む。


その場の全員が、期待に胸を膨らませてミオの言葉を待っていた。

「…と、その前に、まずは…」

ミオは少し間を置いて、全員の顔を見渡した。そして、全員が同じことを考えていることに気づき、苦笑いを浮かべた。


「「「「「宿題……」」」」」


輝かしい夏の計画の前に立ちはだかる、あまりにも現実的な壁。

五人は顔を見合わせ、がっくりと肩を落とした。

弾けろ!青春のサンバ!と歌う前に、まずは目の前の課題を片付けなければならない。

「東京たんこぶ」の、騒がしくて、最高に楽しい夏が、もうすぐ始まろうとしていた。


【歌詞】

制服脱いだら 恋の準備完了!

スニーカーはいて バスに飛び乗ろう

待ち合わせは 海沿いの駅前

汗がキラリ 始まる予感!


「行こうよ!」って君が笑う

太陽よりまぶしくて

手をつないだ その瞬間

世界がカラフルに変わった!


夏がくる! この胸が高鳴る季節

ドキドキが渚をかけてく

山も海も空も自由も

ぜんぶ全部 つれて行こう!


夏がくる! やりたいことがあふれてる

恋も友情も 水しぶきのなか

この瞬間、誰にも渡さない

最高の夏、始めよう!


かき氷 ストロー2本で

ちょっと照れくさい横顔見た

キャンプファイヤー 流れ星と手紙

明日もずっとこうだといいな


浴衣姿で駆け出した

花火の下、君が近くて

心の奥、火がついたみたい

ヒュルリラ… 秘密のメロディ


夏がくる! ハートに情熱のリズム

ラテンの風が髪を揺らすよ

熱い鼓動 踊るように

波打ち際でステップしよう!


夏がくる! 笑顔のまま終われない

“またね”じゃ足りない夜にしよう

明日が来ても色あせない

ときめきだけ、焼きつけて!


校舎の影 まだちょっと寂しいけど

今だけは全部忘れて

大人になる前の夏

弾けろ! 青春のサンバ!


夏がくる! 恋も冒険も全部のせ!

きらめく季節をつかまえに行こう

こんな自分、見たことない

きっと明日はもっと好きになる!


夏がくる! この瞬間を君と

はじまりの合図が鳴り響く

太陽と笑い声と

終わらない夢の中へ――!

『夏が来る!』 

https://youtu.be/E4F551cqNto

※こちらで視聴可能です

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