【二年の日常】第16話:『サヨナラ』
『サヨナラ』
https://youtu.be/ut5HNS9_018
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高校二年生になった「東京たんこぶ」のメンバーたちは、それぞれの日常とバンド活動を両立させながら、着実に成長を続けていた。
ミオはバンドの熱血ボーカルとして、常にメンバーを引っ張る存在だったが、彼女の心の中には、人には言えない密やかな恋があった。
彼のことは、新学期が始まってすぐ、放課後に偶然、校舎の裏で見かけたのが最初だった。特に目を引くような派手さはないけれど、どこか影のある横顔が、ミオの心を惹きつけた。彼もまたバンドをやっているらしく、ミオが話しかけると、音楽の話で盛り上がることができた。それが嬉しくて、ミオは彼に惹かれていった。
しかし、恋には不器用なミオ。以前、自分の不器用な恋心を歌にした『好きって言えないbot』の歌詞のように、「好き」という単語だけがどうしても伝えられずにいた。
「『好きです』ってその一文を…打って消して、また泣いた夜」を何度も繰り返した。だが、ある晩、ミオは決意する。「このままじゃダメだ!」と、震える指で「好きです」とだけ打ち込み、送信ボタンを押した。そのストレートな告白がきっかけとなり、二人は付き合うことになったのだ。
付き合い始めた頃は、世界が輝いて見えた。けれど、季節が巡るうちに、少しずつすれ違いが生まれていく。
デート中、カフェでおしゃべりしていても、彼の視線はいつもスマホの中。ミオが頑張って今日の出来事を話しても、「うん」と頷くだけで、その目は泳いでいる。
「ほんの些細なすれ違いとか、言葉にできない不安とか」、そんなものが降り積もり、いつしかミオの心の中の“好き”を見えなくしていった。
(見てたのは私の方ばかりだったな…)
彼がバンド活動で忙しいのは分かっている。疲れているのも知っている。だから、これ以上、彼に負担をかけたくないと、寂しい気持ちに蓋をした。
ある日の夜。
「ねえ、ちょっと話があるんだけど」
彼からのLINEに、ミオの心臓は嫌な音を立てた。
二人で会う場所は、夜の駅。最終電車が発着する、人気のないホームだった。
冷たい風が吹き抜け、ミオの髪を揺らす。彼はなかなか本題を切り出せず、沈黙したまま、スマホをいじることもなく、ただ遠くを見つめていた。
その沈黙が、何よりも雄弁だった。
何が言いたいのか、何が言えないのか。
たぶんもう、ミオにもわかっていた。ミオは、そんな彼の姿を見て、静かに息を吸い込んだ。
「うん、わかってる。もうサヨナラだね」
ミオの口から出た言葉に、彼は少し驚いたように目を見開いた。
その瞬間、ミオの頭の中には二人の思い出が過ぎ去っていった。
『サヨナラ』
自分で言った言葉なのに、心臓を直接掴まれたような痛みだった。
「あなたの声で言われたくなかった」
それが私の気持ち、どうせ別れるなら私の方から。
ミオは、震える手を隠すように、ポケットの中でぎゅっと握りしめた。
涙が出そうになるのを、必死でこらえた。情熱型のミオが、こんなにも無力に感じるのは初めてだった。
「話し合えば戻れたのかな、笑い合えたのかもしれない」
そんな後悔が、波のように押し寄せる。でも、気づいてしまった。見ていたのは、いつも私の方ばかりだった、と。
沈黙のホームに、最後の電車の警笛が響く。
「明日からは他人だから」
そう思えば、この痛みも、この涙も、今はただ置いていくことができるかもしれない。
「こっちから言えば強くなれるって思ったけど 違ったよ」
ミオは、彼の優しい嘘よりも、この静かな決意を抱いて、一人で歩き出すことを選んだ。
ミオは、最後に彼にもう一度視線を向けた。
「ねえ、最後の最後くらい、ちゃんとこっち見てくれたら…」
ほんの少しの期待が、まだ残っていた。
でも、彼は目を合わせようとしなかった。遠い線路の先を見つめたままだ。
その瞬間、ミオの中の最後の糸が、プツンと切れた。
サヨナラ。
きっと誰のせいでもない。どこかで間違えた気がする。
でも、もういい。
ミオは、力強く踵を返した。
「明日からは他人だから」
そう自分に言い聞かせながら、震える体を奮い立たせる。
「最後は私が歩き出すよ」
一歩、また一歩と、駅の改札へと向かう。
もう、泣かない。
『転んでも立ち上がる』。
それはバンドのコンセプトだけじゃない。ミオ自身の生き様だ。
どんなに痛い「たんこぶ」ができても、ミオは、また前を向いて歩き出す。
一人でも。もう、泣かない。
ミオの心の中に、新たな決意のメロディが、静かに響き始めた。
【歌詞】
夜の駅 最後の電車
ふたり黙ったまま ホームに立ってた
何が言いたいのか 何が言えないのか
たぶんもう、わかってるはずなのに
ほんの些細なすれ違いとか
言葉にできない不安とか
積み重ねたものが
“好き”を見えなくしてたんだと思う
手を振る勇気がなくて
ポケットの中で震えてた
言い訳も、涙も
今日は置いていくよ
サヨナラ
それだけで全部終わるなんてね
ちょっとずるいし、ちょっと優しい
「明日からは他人だから」
そう思えば 泣かずにいられるかもね
隣にいてくれた季節が
嘘だったとは思わない
でも「ずっと」じゃなかった
そのことに気づいた夜だった
話し合えば戻れたのかな
笑い合えたのかもしれない
でも、ねえ、
私ばっか見てたでしょ?
サヨナラ
あなたの声で言われたくなかった
こっちから言えば強くなれるって
思ったけど 違ったよ
優しい嘘より静かな決意を抱いて
ねえ 最後の最後くらい
ちゃんとこっち見てくれたら
まだ、
戻れたかもしれないのに
サヨナラ
きっと誰のせいでもないけど
どこかで間違えた気がする
「明日からは他人だから」
最後は私が歩き出すよ
ひとりでも
もう泣かないよ
『サヨナラ』
https://youtu.be/ut5HNS9_018
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