【日常の風景】第14話:『都立たんこぶ高校校歌』
『都立たんこぶ高校校歌』
https://youtu.be/WWBwgyrrHPE
※こちらで視聴可能です
「東京たんこぶ」のメンバーたちは、それぞれの感情が込められた新曲も続々と生み出していた。
今日もいつもの練習スタジオに集まり、次のライブに向けて新しいアイデアを出し合っている。
「ねぇねぇ、なんかさー、私たちの高校の校歌って、なんかダサいよね~」
ユメカが、突然、思い出したように口を開いた。ピンクの髪を揺らしながら、少し不満げに眉を下げている。
「あー…」
ミオが苦笑いしながら頷いた。その校歌は、歴史と伝統を重んじる学校らしく、古風で荘厳なメロディだったが、高校生にとっては正直、退屈なものだった。
「うん、壊滅的」
すると、隣でギターの弦を調整していた葵が、感情のこもらない声で、しかし的確な一言を放った。そのストレートな毒舌に、ミオとユメカは思わず吹き出した。ルナはスティックをクルクル回しながら「ま、否定はできないよね」と肩をすくめる。
そんな会話を聞いていたキーボードの凛が、ふと思いついたように、穏やかな声で提案した。
「それなら…その雰囲気そのままに、自分たちで元気バージョン作ってみたらどうかな?」
ユメカは目を丸くして、凛の顔を見つめた。
「元気バージョン?」
「うん。私たちだったら、このメロディをこうアレンジする!みたいな。バンドで演奏してみたら、結構面白くなるかも?」
凛は、いつもの優しい笑顔で続けた。
「えー!それ、めっちゃ面白いじゃん、凛ちゃん!」
ユメカの顔がパッと輝いた。彼女の頭の中には、もう新しいアイデアが浮かび始めているようだった。
「だったらさ! 歌詞も一部変えてみちゃわない? 『都立〇〇高校』ってところをさ、『都立たんこぶ高校』にしちゃえ! 『たんこぶ』が私たちのバンド名だし、ぴったりじゃない!?」
ユメカが興奮気味に腕を振り回す。
そのユメカの大胆な提案に、ミオは目を輝かせた。
「え! ユメカ、それ、最高すぎる! 都立たんこぶ高校校歌! やばい、めちゃくちゃロックじゃん!」
ルナも「ははっ、なんか、馬鹿馬鹿しいけど、そこがいいね!」と楽しそうに笑う。
そして、普段はめったに感情を表に出さない葵が、まさかの反応を見せた。
「…それ、面白い!」
葵の口から飛び出したポジティブな言葉に、メンバー全員が驚いた。葵がここまでストレートに「面白い」と口にするのは珍しいことだったからだ。その言葉は、凛の提案とユメカのアイデアが、いかに魅力的であったかを物語っていた。
「よし! じゃあ、早速取り掛かろうよ! 都立たんこぶ高校校歌、作っちゃおう!」
ミオの熱い言葉に、みんなが盛り上がる。
そこから、彼女たちの奇妙な「校歌作り」が始まった。
元の校歌のメロディをベースに、ミオがロック調にアレンジを加え、葵は斬新なギターリフを考案する。ルナは、校歌の重厚さを残しつつも、軽快でパワフルなドラムビートを刻み、ユメカのベースは、遊び心いっぱいに、そのリズムの上を跳ねる。凛は、ピアノの旋律を軸に、校歌の持つ「誇り」や「希望」を、バンドサウンドの中で表現していった。
特に歌詞の変更は、メンバー全員で大笑いしながら進められた。
「『青空高く そびゆる雲に』はそのままに、『夢をかかげて 歩むわれら』!そして『たとえ転んで 土を噛むとも』ってとこは、まさに私たちの『たんこぶ』精神だよね!」
ユメカが興奮しながら言う。
「そう! 『笑顔の種が 芽を吹くよ』でしょ! これ、私たちが歌う校歌にしかありえない!」
ミオも力強く頷く。
「『我らの誇り たんこぶの道』…いいね。なんか、ダサいのに、めちゃくちゃカッコよく聞こえる」
ルナが感心したように言った。
「『傷も笑顔も 青春の章』、そして最後は『進めよ仲間 たんこぶ高校』! 最強だね!」
凛も、普段よりも少しだけ興奮した声でそう言った。
こうして、彼女たちのユーモアとバンドのコンセプトが詰まった、唯一無二の『都立たんこぶ高校校歌』が完成した。
歌詞に込められたのは、ただの校歌では終わらない、彼女たち「東京たんこぶ」の生き様そのものだった。
また一つ、「東京たんこぶ」に新しいナンバーが追加されたのであった。この予想外の「校歌」が、果たしてどんな形でライブで披露され、観客を驚かせることになるのか。メンバー全員の期待が、静かに、しかし熱く高まっていた。
『都立たんこぶ高校校歌』
https://youtu.be/WWBwgyrrHPE
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