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険しき道で

西京に住む青年ユウは、はじめて出かけた森の中で、精霊「イロハモミジ」や「エノキ」たちと出会う。

数々の試練をくぐり抜けて、ユウは自身が伝説の「杜人」の末裔だという自覚を深めていく。


旅の疲れを癒すために訪れた昴宿「よこぐら」に突如、怪異が襲ってきた。

ユウたち一行は、たまたま来客をしていた「ヒノキ」の力を借りながら、敵の急襲を退けるも、「エノキ」は深手を負ってしまう。


闇医者「シキミ」を探すため、ユウ、イロハモミジ、そしてエノキの3名は、そびたつ岩壁をよじのぼりはじめた。

挿絵(By みてみん)



ぼくたちは険しい崖の前に立ち、覚悟を決めて登り始めた。


ヒノキ様は誇らしげに胸を張り、


「さあ、妾が先に登ってやろう!この崖など最高神にとって朝飯前じゃ!」


と先頭を切った。


挿絵(By みてみん)


ぼくは、「ヒノキ様、気をつけてくださいね」と声をかけ、


後ろからついていく。


最後尾のイロハ先生は、


「ま、最高神様には遠慮してあげるわよ」


と、軽口を叩きながら、


「それにしても、こんな崖しかないわけ、お医者様への道は」


と、こぼした。


挿絵(By みてみん)


「そんなことあるわけないじゃろ!」


今度は上から、ヒノキ様の声が聞こえてくる。


「アイツはな・・・。シキミというやつは、一風変わった坊主でのぅ。仏の道を志したにも関わらず、修行などしているところを見たこともない。とにかく、苦しいことが好きではないんじゃ。アイツがこんな断崖を登るはずがなかろう」


「ってことは、他に道があるってこと?」


「だから、そう言っておろう。これは、ただの近道じゃ!さあ、つべこべ言わず登るのじゃ」



ヒノキは上機嫌で、岩肌を軽やかに登っていく。


ぼくらもそれに続いていく。


時折、強い風が吹く。


おあっ!と。


「ユウー!大丈夫??」


下からイロハ先生が気遣ってくれる。


「うん、大丈夫!」


なんとか、風をやり過ごす。


「ふん。まだまだじゃのう」


と、上からヒノキ様が見下ろしてきた。



・・・


もうどれくらい登っただろうか。


もうすぐ着いてもいいころなんだけど・・・。


挿絵(By みてみん)


風は冷たくなり、雪が舞い始める。


ここまで、サクサクと登ってきたヒノキのスピードが緩慢になった。


「ヒノキ様、どうしたんですか?」


「大したことではない。妾は最高神なるぞ。ついてくるのじゃ」


「そうは言っても、ヒノキ様。明らかにペースが・・・」


ぼくは、ヒノキ様がちょっと強がっているようにも感じた。


イロハ先生もその異変に気づいたのか、


「そうね、私たちもずっと登ってきたもの。少し休憩しましょう」


と提案をした。


ぼくたちは、岩壁のくぼみに3人で腰をかけた。


眼下に広がる絶景と、雪がちらつく。


「うぅぅ゛」


ヒノキ様の様子が明らかにおかしい。


「もしかして、体調がすぐれない?」


「いや、大丈夫じゃ。少し休んだら、いくぞ」


と言いながら、岩陰に隠れてちぢこまった。


「はぁ、素直じゃないわねぇ」と、イロハ先生は全てを察した様子で、小声でつぶやいた。


イロハ先生は、自分の羽織を脱ぐと、ヒノキの肩にそっとかけた。


「妾に上着など・・・」


と、一度は断ろうとしたものの、


「すまん」


イロハはその様子を見て微笑んだ。


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