第17話「悪役令嬢には申し出が殺到する(15歳の時)
15歳になると、男の人から交際の申し出をやたらと受けるようになってきた。
いつもやんわりと断るのだが、ルルブ家と関係のある相手は簡単には断れないから困る。
交際を申し込んできた人は色々で、おそらくルルブ家の財産を目当てにしている者。これが一番多い。金銭欲の塊というか、ご両親の勧めで婚約を迫る子もいるようなので何とも言えないが、そこまでの大金を手にしたいと思うだろうか?
おそらくお金持ちでも現状で満足しないのだろう。もっと持ちたいと欲が出てきてしまうのだ。
わたし目当ての人。まあ婚約と言っても、結婚を見据えての物だし、わたしが好きでなければ本来成り立たないものなんだけど。最近は対面しただけでどういう人間かわかるようになってしまった。
申し出てきた人の中にわたしが引かれるような人はいなかった。
15時のアフタヌーンタイム、お母様はわたしがえり好みしているのを話題に出した。
「カグヤはどんな人がタイプなの?」
「タイプ。う~ん、優しくてわたしより強い人かしら」
「おいおい、通り名まですでに付いているカグヤより強い男性を見つけるのは大変だぞ」
「そうかしら?」
少なくとも1人はそうなろうと努力している人を知っている。その努力は汲んであげたいと思うけど。
「カグヤ!」
はあ、はあと息を切らしてクロガネがお庭に現れた。
タイミングいいな。
「久しぶりね。あなたも紅茶を飲む? 要件はわかってるわ。戦うんでしょ。でも息を整えて万全じゃないと全力を出せないんじゃない」
「そうだな。淹れてくれるのか?」
「わたしじゃなく、メイドさんがね」
かしこ参りましたというように、傍で待機していたメイドさんがティーカップに紅茶を注ぎ、クッキーもお皿に添えて私の隣の席へ置いた。
「腹が減っては戦が出来ぬっていうからな」
よくもまあそんな言葉を知っているな。意外に物知りだったかな?
「まあ、クロガネ君。お久しぶりね。最近あんまり顔を見せないじゃない」
「修行中の身なので」
おしぼりで手を丁寧に拭いてから、ペロリとクッキーを平らげた。
よっぽどお腹が空いているのかもしれないな。
わたしはメイドさんを呼び、
「何か美味しいもの作ってあげて。戦いが終わったら食べさせるから」
と、耳元で囁くように伝えた。
「かしこまりました」
その顔はお手伝いしますとでも書いてあるかのようだった。
☆ ★ ☆
「ふぅ、旨い紅茶とクッキーだった」
それはそうだ。あのクッキーはわたしが半分以上作ったものなんだから。
騎士団の訓練場の近くの広場にやってきたわたしたち。
魔法の訓練をしていたケティとコウコも嬉しそうにこちらへかけてくる。
「クロガネ君、久しぶりじゃん。またカグヤさんにやられに来たんだね」
「大けがはしないでくださいね」
「失礼な奴らだ。今日こそ勝つ!」
クロガネはどこで手に入れたのか、また新しい剣を抜き構える。
3か月ぶりか。また強くなっているな。構えも隙がない。クロガネのお父様は元とはいえ騎士団団長だからな。その息子が腕利きの剣士でも何ら驚くことはない。
「では、いつでもいいよ」
鉄扇を右手に持ちクロガネの動きを注視する。
間合いを詰める速度も上がっている、剣速も。
クロガネが振り下ろした刃を鉄扇で止め、左手で風魔法を放つ。それを見越したようにクロガネは上へと飛んだ。
上空に逃げ場はない。
「中風の舞!」
小さなトルネードをクロガネ目掛けて放った。
その直後、予想もしない出来事を目にする。わたしの中風の舞をクロガネは一刀両断していたのだ。
「へっ、どんなもんだ!」
「大蛇の舞!」
少しムッとしたわたしはオリジナル魔法をドッキングした技を放つ。
その渦はどや顔をしていたクロガネの体を飲み込み、高く、高く舞い上げた。
コウコが手を合わせ、クロガネの落下位置の土を柔らかくし、ダメージを最小限に抑える。
「くそっ、油断した。大人げない奴だ。あそこは俺のターンだろ」
「あのね、勝負なの。変わりばんこに攻撃するわけないでしょ」




