プロローグ
・・・・・・いやだ。
黄色い花の咲き乱れる草原で、僕はナイフを手に握りしめる。
僕の視界の端には、赤色の文字。
《おさななじみ を ころせ あと ろくじかん》
そして、僕の前にはその幼なじみのリルンが。
僕は、彼女を殺さなくてはならない。
なぜ、こんなことになったのか。
あの理不尽な“j64”が、僕を『j64候補』に加えたからだ。
「いいんだよ」
リルンがそう呟いただけで、僕は体を大きくびくつかせる。
「・・・・・・何が」
「私を、殺さないといけないんでしょ?」
ああ、そうだ、殺さないといけないんだ・・・・・・。
殺さないと、僕は、地獄を味わって、また戻ってくることになる。
「ケル。あなたになら、いいわ」
そんなこと言わないでくれ。
心が、揺らいでしまうじゃないか。
「だって、ちゃんと私に話してくれたんだもの」
違う、それは少しでも自分を楽にさせたかっただけだ。
リルンを手に掛けるのが、少しでも楽になるように。
「だから・・・・・・」
リルンが淡い水色の瞳を細めて、微笑む。
「いいの。あなたのためなら。・・・・・・好きな人のためなら」
好きなら、僕に殺させないでくれよ。
僕だって・・・・・・。
「僕だって、好きな人を殺したくない・・・・・・」
でもだめなんだ。殺さないと、もっと恐ろしい“j64”が来る。
僕が先に進まないと、“j64”は何かをする。
だから、だから、だから・・・・・・。
「なるべく、苦しませないでね?」
赤いしぶきが黄色い花を染めた。
《セーブファイル2 とうろく かんりょう》
最後までお読みいただきありがとうございます。次回もよろしくお願いします。