二つの岸の星
レオンハルトは砂州の補強が終わったとの報告を受けた。新しい木枠は川岸を守り、小舟が荷を降ろす余地を作った。一方、王国軍は丘の裏の道を増やし、以前より素早く守備兵を交代させているという。皇帝は二つの変化を同じ地図へ書き込ませた。
クラウスは夏のうちに丘を攻めるべきだと進言した。雨の季節が過ぎれば河原を歩ける日が増え、王国側の守りも固くなる。レオンハルトはその理屈を理解した。しかし攻撃に使う舟の数、負傷者を戻す場所、占領後の食料を確認すると、まだ計画は揃っていなかった。
サビーネからは、王国の新しい通路に農家の馬車が通っているとの知らせが届いた。軍と民間の往来が混ざれば、見張りの目だけで人の数を読むのは難しい。皇帝は敵の軍師の工夫かもしれないと考えたが、地元の必要が先にあった可能性も残した。王国の人々も帝国の人々と同じように生活している。
夜、皇帝は地図を机へ残して窓を開いた。遠い国境でも同じ星が見えるだろう。父帝の時代に一度も動かなかった線は既に変わり、峠の関所と砂州は帝国の手にある。それでも王国は崩れず、次の日のために道を直している。
皇帝はサビーネから送られた舟の点検表を手に取った。修理を終えた舟には印が付き、まだ水を吸う板を抱えた舟は別の列に置かれている。数だけ見れば必要な舟は揃っているが、今夜使える舟はそれより少ない。レオンハルトは不完全な数字を完全だと思わないよう、表の見出しを書き替えさせた。
レオンハルトは命令書へ急な攻勢の印を付けなかった。先に進める日を見誤れば、得たものまで川へ失う。帝国の兵は見張りに立ち、王国の兵も同じ夜を越える。彼が望む大陸の統一は遠く、目の前にはまだ川が流れていた。




