弔鐘のあとで
皇帝の棺を運ぶ六頭立ての馬車が、帝都の大通りを過ぎた。鐘は朝から鳴り続けていたが、レオンハルトは窓辺に立ったまま、父の遺影ではなく街路の隅を見ていた。石畳の割れ目に泥が詰まり、冬支度の薪を積んだ荷車が葬列に行く手を塞がれ、裏路地へ引き返している。
「葬儀の日くらい、街を休ませては」と宰相リディアは言った。皇帝は首を振る。「休む者にも食事はいる。製粉所までの道を開けておけ」
父は二十七年間、王国との境を動かさなかった。両国の間には古い石柱が連なり、畑が石柱を越えて広がる場所さえある。平和を守ったという評判は正しい。しかし父の晩年、帝国北部の鉱山は痩せ、南部の港は王国の関税に縛られた。帳簿には、今後十年の歳入不足が細かく記されている。
レオンハルトは即位の宣誓書より先に、塩、鉄、穀物の運送図を求めた。将軍クラウスが国境の兵力表を広げると、皇帝は山地の部隊ではなく川沿いの橋を指した。橋の両側には市場があり、帝国の貨幣と王国の貨幣が同じ秤で量られていた。
「この橋を閉じれば、どちらの民も困ります」
「だから橋は残す。市場も残す。奪いたいのは人が暮らす土地であって、焼け跡ではない」
その夜、若い書記官が印璽の置き場所を間違えた。父の代には右側だったからだ。レオンハルトは叱らず、新しい書類棚の位置を指示した。儀礼の道具さえ変わるなら、国境の先にいる人々が変化を恐れるのは当然である。彼は古い印璽箱を閉じ、新しい封蝋の匂いを確かめた。
葬儀が終わるころ、皇帝は国境の倉庫を調べる命令に署名した。まだ剣を抜く者はいない。けれど封蝋を乾かす間にも、帝国の各駅から荷馬車が静かに出発していた。




