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婚約破棄された公爵令嬢は、無能扱いの第二王子の政務を支えることになりました ~捨てた第一王子が後悔しても、もう遅いです~  作者: 藤宮レイ


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エピローグ④ それでも私は

 夜は、静かだった。


 王宮の廊下も、灯りが落ちている。


 人の気配はほとんどない。


 昼の喧騒が嘘のように、すべてが止まっている。


 その中を、私は一人で歩いていた。


 足音だけが響く。


 一定のリズム。


 迷いのない歩き方。


 それが、今の私だった。


 執務室に入る。


 机の上には、まだ書類が残っている。


 今日中に処理すべきもの。


 明日に回せるもの。


 優先順位をつける。


 ペンを取る。


 そして。


 ふと、手が止まった。


「……」


 静かすぎる。


 何も起きていない。


 それが、少しだけ不思議だった。


 あの頃は。


 常に何かが起きていた。


 問題があり。


 対立があり。


 選択があった。


 そして今。


 それは減った。


 消えたわけではない。


 ただ。


 表に出なくなっただけだ。


 私は椅子にもたれ、天井を見上げる。


 白い。


 何もない。


 ただの天井。


 だが。


 その下で、国家は動いている。


「……終わったんですね」


 小さく呟く。


 戦いは終わった。


 敵はいない。


 対立もない。


 少なくとも、大きなものは。


 だが。


「終わっていない」


 すぐに言い直す。


 違う。


 これは終わりではない。


 続きだ。


 形が変わっただけ。


 私は立ち上がる。


 窓へ向かう。


 外を見る。


 夜の王都。


 静かだ。


 灯りがぽつぽつと点いている。


 人がまだ動いている証。


 完全には止まらない。


 それが、この国だ。


 その時。


 遠くで笑い声が聞こえた。


 小さく。


 だが確かに。


 誰かが笑っている。


 その音を聞いて、私は少しだけ目を細めた。


「……いいですね」


 本当に。


 それだけでいい。


 完璧でなくていい。


 問題がなくてもいい。


 ただ。


 続いていれば。


 人が生きていれば。


 それでいい。


 そのために。


 私はここにいる。


 机に戻る。


 ペンを取る。


 書類に目を通す。


 判断する。


 署名する。


 一つ一つ。


 小さな選択。


 だが。


 その積み重ねが、国家になる。


 それを、もう知っている。


 ふと。


 あの問いを思い出す。


 最後に交わした言葉。


「国家とは何だ」


 あの夜。


 あの場所で。


 私は答えた。


「人です」


 今も、その答えは変わらない。


 制度ではない。


 権力でもない。


 人が生きるためのもの。


 それが国家だ。


 だから。


 完璧にはならない。


 間違いもある。


 失敗もある。


 それでも。


 続ける。


 選び続ける。


 それしかない。


「……それでも」


 小さく呟く。


 誰に聞かせるでもなく。


「私は」


 ペンを握る。


 そして。


 次の書類に目を落とす。


「選び続ける」


 それが、私の役割だ。


 それが、私の選んだ道だ。


 夜は静かに更けていく。


 だが。


 国家は止まらない。


 人がいる限り。


 続いていく。


 そして。


 その中で。


 私は今日も、選び続ける。


 それだけで――


 十分だった。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。


この物語は、「制度」と「人」、そして「政治とは何か」をテーマに描いてきました。

正しさだけでは届かない現実、効率だけでは救えない人。

その中で、それでも選び続けるという在り方を描きたかった作品です。


物語の中で何度も出てきた問い――

「国家とは何か」


その答えは、とてもシンプルでした。


国家とは、人が生きるためのもの。


完璧ではなくてもいい。

間違いがあってもいい。

それでも続いていくこと、それを支えること。

それこそが、政治であり、この物語の核でした。


少しでも心に残るものがあれば、とても嬉しいです。


もし作品を気に入っていただけたら、

ブックマークや評価で応援していただけると、今後の励みになります。


また次の物語でお会いできることを願っています。

本当にありがとうございました。

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