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婚約破棄された公爵令嬢は、無能扱いの第二王子の政務を支えることになりました ~捨てた第一王子が後悔しても、もう遅いです~  作者: 藤宮レイ


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第77話 逃がさない理由

 「終わらせます」


 そう言い切った言葉が、まだ自分の中で反響していた。


 夜のベルナを出る。


 馬車はすぐに動き出した。


 揺れが強い。


 急がせているからだ。


 時間がない。


 証拠は手に入った。


 だが――


 決着はまだだ。


「……王宮へ直行します」


 護衛が言う。


 私は頷く。


 それ以外の選択肢はない。


 今この瞬間にも、相手は動いている。


 逃げるか。


 潰しに来るか。


 どちらにしても――


 次が最後になる。


 窓の外を見ながら、私は紙を握りしめる。


 エルドランの署名。


 明確な指示。


 これで繋がった。


 資金と暴動。


 構造と意図。


 すべてが一本の線になる。


 だが。


「……これでも足りませんね」


 小さく呟く。


 護衛が一瞬だけ視線を向ける。


「何がですか」


「“決定打”です」


 証拠はある。


 だが。


 それを“どう使うか”が問題だった。


 公開するだけでは足りない。


 相手は制度を理解している。


 抜け道も知っている。


 だからこそ――


 逃がさない形で出さなければならない。


 王宮に到着したのは、深夜だった。


 だが灯りは消えていない。


 すでに動いている。


 情報は先に届いている。


「殿下は」


「執務室に」


 短いやり取り。


 すぐに向かう。


 扉を開ける。


 ルシアン殿下がいた。


 立っている。


 すでに待っていたように。


「来たか」


「はい」


 私は紙を差し出す。


「繋がりました」


 殿下が目を通す。


 無言。


 だが、空気が変わる。


「……完全だな」


 低い声。


 私は頷く。


「はい」


「ですが」


 続ける。


「これだけでは逃げられます」


 殿下が顔を上げる。


「どういう意味だ」


「彼は“合法の中で動いている”」


「この証拠は」


「構造を示すものです」


「ですが」


 視線を合わせる。


「直接の命令ではない」


 沈黙。


 殿下は理解する。


 すぐに。


「……詰めが必要か」


「はい」


 私は言う。


「逃げ場を潰します」


 それが今回の戦い。


 証拠を出すだけでは足りない。


 “逃げられない状況”を作る。


「どうする」


 私は少しだけ考え、


 そして答えた。


「公開します」


「すべて」


 殿下の目が細くなる。


「一気にか」


「はい」


 分割では意味がない。


 時間を与える。


 だから。


「同時に出します」


「資金」


「暴動」


「関係者」


「すべて」


 逃げる余地を消す。


 それが最も強い。


 沈黙。


 やがて殿下が言う。


「……覚悟はあるか」


 私は答える。


「あります」


 これは政治だ。


 そして。


 これは――


 国家の決断だ。


「いいだろう」


 殿下が頷く。


「やれ」


 その一言で、すべてが決まった。


 私は振り返る。


 扉の外にはすでに人がいる。


 動く準備は整っている。


「全体会議を開きます」


 短く言う。


「明朝」


 その言葉に、空気が震える。


 王国全体を巻き込む。


 逃げ場のない舞台。


 その夜。


 王宮は動き続けた。


 招集状が飛ぶ。


 資料がまとめられる。


 人が走る。


 すべてが一つの点へ向かう。


 私は一人、廊下に立っていた。


 静かだ。


 だが、嵐の前だ。


「……逃げられますか」


 小さく呟く。


 答えは分かっている。


 逃げるだろう。


 最後まで。


 だが。


「逃がしません」


 私は言う。


 この戦いは、


 ここで終わらせる。


 そして翌朝。


 王宮の大広間に、すべてが集まる。


 貴族。


 官僚。


 商人。


 そして――


 エルドラン。


 彼は、いつも通りの顔で立っていた。


 だがその目は。


 わずかに変わっている。


 警戒。


 そして――


 期待。


 私はゆっくりと前に出る。


 視線が集まる。


 逃げ場はない。


 今度こそ。


 すべてを終わらせる。


 私は口を開いた。


「本日」


 静かに。


 だが確実に。


「すべてを公開します」


 空気が止まる。


 そして。


 戦いが、始まった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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