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婚約破棄された公爵令嬢は、無能扱いの第二王子の政務を支えることになりました ~捨てた第一王子が後悔しても、もう遅いです~  作者: 藤宮レイ


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第50話 崩れかけた街

 南西州グレイヴン。


 私は再びその街に立っていた。


 だが、前回とは空気が違う。


 港は静まり返り、倉庫の前には人だかりができている。


「何が起きているのですか」


 私は地方官に尋ねた。


 男は顔色を悪くして答える。


「融資窓口が止まりました」


 その一言で理解する。


「中央銀行支部ですか」


「はい」


「書類不備を理由に、審査が止まっています」


 それが意味することは明白だった。


 再起支援融資が止まる。


 つまり――


 商会は再開できない。


 広場では怒号が飛んでいた。


「話が違う!」


「再起支援があるって言っただろ!」


「商売を再開できるはずだった!」


 怒りの矛先は、当然こちらに向く。


「王宮の女が来たぞ!」


 人々の視線が一斉にこちらへ向く。


 騎士団が一歩前に出る。


 だが私は止めた。


「話を聞かせてください」


 最前列の男が叫ぶ。


「聞くだけか!」


「俺たちはもう資金がない!」


 私は地方官に聞く。


「中央からの指示ですか」


「……いえ」


「銀行の独自判断です」


 つまり。


 運用で止めた。


 侯爵の戦い方だ。


 法律違反ではない。


 ただ審査を止めるだけ。


 それだけで制度は機能しなくなる。


「銀行支部長は」


「中に」


 私はそのまま銀行へ向かった。


 護衛が慌てて追う。


 支部長室の扉を開く。


 中には中年の男が座っていた。


「これは驚いた」


 落ち着いた声。


「王宮の方が直接来るとは」


「融資が止まっています」


 私は言う。


「書類不備です」


 男は淡々と答える。


「規定通り」


「どの規定ですか」


 彼は書類を一枚出す。


「資産評価証明」


 私は理解する。


 新制度では不要な書類だ。


 旧制度の名残。


「それは廃止されています」


「通達は確認しています」


 男は笑う。


「ですが」


 肩をすくめる。


「慎重であるべきでしょう?」


 その言葉。


 北部会議でアルノルトが言った言葉。


 つまり――


 空気はもう広がっている。


 私は机の上の書類を見た。


「審査件数」


「今週ゼロですね」


 支部長は答えない。


 沈黙が答えだった。


「理由は」


「慎重審査です」


 合法。


 完全に合法。


 だが、制度は死ぬ。


 私は深く息を吸う。


「では」


 男を見る。


「本日から審査官を追加します」


 男の眉が動く。


「中央監査官を派遣します」


「審査は共同で行う」


 つまり。


 止めさせない。


 支部長は笑った。


「それは権限越えでは?」


「いいえ」


 私は即答する。


「再起支援法第七条」


「中央監査権」


 男の笑みが消えた。


「……準備がいい」


「制度を作ったのは私です」


 その言葉に、初めて空気が変わる。


 外ではまだ怒号が響いている。


 だが、支部長は理解した。


 止めるだけでは勝てない。


「審査は再開します」


 小さく言う。


「賢明です」


 私は答えた。


 銀行を出ると、群衆がこちらを見ていた。


「どうなった」


 最初に声を上げた男が聞く。


 私ははっきり言う。


「審査は再開します」


 一瞬の沈黙。


 やがてざわめきが広がる。


 希望。


 疑い。


 まだ混ざっている。


 だが、完全な怒りではない。


 その夜。


 王宮へ報告書を送る。


 数時間後、ルシアンから返信が来た。


 短い文だった。


 《よくやった》


 私は窓の外を見る。


 街の灯りが戻り始めている。


 だが、分かっている。


 これは一つの火消しに過ぎない。


 侯爵は次の火種を用意している。


 制度は守れた。


 だが戦いは――


 まだ続いている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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