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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第二十五章 派閥の領袖の会合

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第117話 話題の『新兵器』と『責任問題』

「05式広域鎮圧砲。実用のめどは立ったと言いますが、それが今回の作戦において発動しなければすべてが水の泡になるんじゃないですか?対応策としては……どうもあまりにも力技に頼りすぎているような気がするんですが。『ふさ』一隻と特戦一個小隊。結局は我が海軍の出番になるのは間違い無さそうですね」 


 醍醐の次席に座っている海軍准将、前田恒厚がそう言って嵯峨の顔色が自分の言葉でどう変化するかをうかがっていた。周りの嵯峨家や西園寺家の被官達もそれに同調するように頷いた。


 ここに居る嵯峨家、西園寺家の軍属、『民派』に属する人々誰もが一度しか実験に成功したことのない兵器を決戦兵器として使用する嵯峨の無謀さに不安を覚えていた。


 だが、嵯峨は口を開かない。九条派の人々はそんな嵯峨の姿に再びお互い小声で話し合いを始めた。


「よろしいですか?」 


 口を開いたのは響子だった。紫の地の地味な着物に腰まで達しようと言う黒髪を軽く払うと彼女は嵯峨に向き直る。


「内府殿のお言葉はその神前と言う兵士の一撃に遼州の民の命運をかけろと言うように私には聞こえるのですが、それで間違いないのですね。まあ、彼には『近藤事件』で『光の剣』で作戦を成功させた実績があります。内府殿が信頼していらっしゃるのは分かるのですが、そこまで信頼してよいやら私にはわかりかねます」 


 愛嬌のある丸顔の響子に見つめられて嵯峨は照れるように頭を掻く。そのまま天井を見つめ、隣の醍醐を見つめ、最後に下座の人々を見つめる。


「まあそう聞こえても仕方がないですなあ。でも保険はかけてますよ、ちゃんと。さっき説明したとおりうちの『ふさ』は作戦開始前にバルキスタン沖に展開中ですし、遼帝国軍にも準待機命令が出ているはずですから」 


 『遼帝国軍』と言うところで九条家側の下座で笑いが起きる。遼帝国軍の弱さには定評があった。


 先の大戦では甲武軍の制止を振り切ってアフリカ戦線でタンザニアに単独侵攻し、装備も兵力も劣るタンザニア軍に完膚なきまでに叩きのめされたことは有名な事実だった。そしてこの場には遼帝国の正規軍はゲリラより弱いということを証明した遼南内戦の生き証人である嵯峨本人が座っているのが嵯峨の言葉の虚しさを証明していた。


「なあに、最初の一撃でかたをつければ良いんですよ。それにまあ他にもいろいろと手は回しているんでね……その為ですよね、醍醐さん。忠さ、いや、赤松中将の第三艦隊の背後に……アメリカ軍に待機してもらってるのは……」 


 そんな嵯峨が醍醐に向けた言葉にざわめいていた下座の人々は黙り込んだ。目の前でにやけている嵯峨に注目が集まる。権謀術数で知られたこの男がどう動くか予想がつく人物は誰もいなかった。常に敵と味方の虚をつくことにかけては常に一流であること。遼州同盟に否定的な九条家の被官達ですらそんな嵯峨のまとう言い知れぬ恐ろしげなオーラに気おされていた。


「今更アメリカ軍が動いている……聞いていませんよ!そんなこと!」


 嵯峨の言葉に一番驚いたのは醍醐だった。彼が聞いていたのはアメリカ軍との共同作戦の提案をこちらが辞退した時点でアメリカ軍はこの作戦から手を引く手はずになっているはずだった。それが今更、虎の子の第三艦隊の背後に艦隊を終結させている。その事実は場合によっては第三艦隊を地上のカント将軍派のキリスト教民兵組織と共同で甲武軍を挟撃すると言うことを意味していることくらい醍醐にも理解できた。


「醍醐さん。少しは落ち着いてくださいよ。私の部隊がうまくやれば何事も起きない。まあ、有言実行が私の主義でね」 


 嵯峨は満面の笑みを浮かべて自信ありげにそう言い切った。


「ではその言葉を言葉通りに信じさせていただきます」 


 響子のその言葉に一瞬、嵯峨の死んだ瞳に生気がさした。座は静まりかえって沈黙が一瞬座敷を支配した。


「ご随意に。必ずやご期待に沿って見せますので」 


 驚きの表情を取り繕うように笑みを浮かべるとそう言って嵯峨はどよめく九条派の下座を眺める。気がついたと言うようにそれを見て九条派と西園寺派の被官達が一斉に頭を下げる。


「内府殿、くれぐれも我々の信頼を裏切ることの無きように」


 響子のその言葉に九条側は納得したように次々と立ち上がり、そのまま襖を開けて廊下へと出て行った。それぞれに通信端末を手にしているところからして甲武政府や軍に嵯峨の作戦が一気に広まるだろうと思うと複雑な心境で醍醐は嵯峨に目をやった。


「良いんですか?今回の作戦は無茶がありすぎますよ。それに先ほどの言葉はどう見ても内府殿に不利に使われる可能性があります」 


 そう言って前田は嵯峨に詰め寄った。前田ばかりではなく西園寺派の武官達は暗い表情で嵯峨と醍醐を取り巻いた。


「そうは言うが……」 


 恨めしそうに醍醐は嵯峨を見つめる。だが当人はまるで二人の様子に関心が無いというように立ち上がった。



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