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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第二十四章 戦地への出撃の時

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第109話 『駄目人間』のらしい訓示

 スクリーンが光を発すると、そこには司法局実働部隊隊長、嵯峨惟基特務大佐が大きく映し出されていた。その表情は誠が初めて見る緊張をはらんだ顔だった。嵯峨の緊張した面持ちにこれから説明されるであろう事態の深刻さをハンガーにいる誰もが理解していた。


『えー、あー、あれ?』 


 間抜けな声が響くカメラ目線の嵯峨の目つきがいつものうつろな濁った色に変わる。


『ラーメン……チャーシューメン。高いよな……小遣い三万の俺には高根の花だよ……え?』 


 整列していた隊員が呆然と大写しの嵯峨を呆れた顔で見つめる。これが嵯峨一流の隊員の緊張をほぐすための演技なのか、それとも本気でタイミングをつかめずにやっているのか誠には判断しかねた。


『……映ってんの?回ってんの?切れよここ。な?』 


 そう言うと嵯峨は再び見慣れない厳しい表情に戻った。恐らくこの映像を撮っている場所に同席しているランが鋭い視線を送っているのだろう。嵯峨は明らかにカメラの横の方をちらちら見ながら、そちらの方から怒鳴り声が発せられないかハラハラしているような表情で話し始めた。


『ああ、みんなも知っていると思うが、現在バルキスタンの選挙管理・治安維持支援の目的で島田達バックアップグループが展開しているわけだ。そのバルキスタンで停戦合意をしていたイスラム系反政府組織が停戦合意を破棄した。理由はありきたりだが選挙に不正があり信用できないからだそうな。もうすでに反政府軍の攻勢が始まり、対抗して政府軍の反攻作戦が展開中だろうな今頃は』 


 そう言うと嵯峨のアップからバルキスタンの地図に画面が切り替わる。ベルルカン大陸西部に広がる広大な湿原地帯と山脈を貫く乾燥した山地が続くのがバルキスタン共和国だった。そしてバルカイ川下流の都市カイザルに赤い点が打たれ、その周りの色が青色に、中央山脈からのムルガド首長国国境沿いに緑の地に染められていく。


『緑色が先週までの反政府軍の統治エリアだ。だが、今度の反政府勢力の奇襲に近い攻勢で……』 


 嵯峨の声の後、すぐに青色は緑色のエリアに侵食されて行った。その急速な速度はゲリラや民兵が展開できるスピードでないことは、ランの戦場に関する見方の講義を受けて誠も知っていた。


「あそこのイスラム民兵組織は機動兵器は持ってねえはずだよな」 


 前に立っているかなめが誠に声をかける。かなめもゲリラの進行速度が以上であることくらいは理解していた。


「本当にゲリラなんですか、そのイスラムなんとかって……実は西モスレムの正規軍が混じって展開しているとか」


 誠はあてずっぽうにそう言ってみた。


「馬鹿言うんじゃねえよ。そんな事なら最初から選挙なんて成立している訳ねえだろ?そこまでの出来レースをあそこの独裁者が許すわけがねえ」


 かなめは誠の回答がめちゃくちゃだと言うように大きくため息をついた。


「そうですね……じゃあこの状況はなんで起きたんですか?」 


 誠が尋ねるとかなめはにやりと笑いながら画面に視線を戻した。レアメタルの鉱山を奪い合うと言うバルキスタン内戦に於いてはキリスト教系民兵組織出身の現政権の首領エミール・カント将軍も敵対するイスラム教系反政府組織も潤沢な資金を注いで軍の増強に努めていた。だが、地球圏がカント将軍派を正当な政府と認証した十二年前の協定により、イスラム教系組織へのシュツルム・パンツァーや飛行戦車などの機動兵器の輸出は条約で禁止され、内戦は政府軍の優位のうちに進展していた。


 その状況に不満を持っていた遼州同盟加盟国の西モスレム首長国連邦と地球圏のアラブ連盟は遼帝国の首都央都での協約で、カント将軍に民主的な選挙の実施と言う案を飲ませてカント将軍の力を削ぐ方針を固めた。彼らは遼州同盟各国からの選挙監視団の派遣を要請、地球からも治安維持部隊の導入を進め選挙はまさに行われようとしていたところだった。


 だが、目の前の地図はその合意を反故にして反政府軍は侵攻を開始していることを示していた。


『ああ、ここで質問があるだろうから答えとくよ。これだけの規模の侵攻作戦となると反政府軍は機動兵器を所有していることが必要になってくるな。答えから言うとその機動兵器の供給源はカント将軍様だ。まったく敵に塩どころか大砲を送るとは心が広い将軍様だなあ。お前等も見習えよ』 


 そう言う嵯峨の声に技術部のあたりで笑いが起こる。だが、それもランがいつもの鋭い視線を向けると笑顔の技術部の面々も緊張した面持ちに変わった。


 そのまま画面は地図から嵯峨の間抜けな面にかわった。


『何のことはない。政府軍も反政府軍も今回の選挙は無かったことにしたいんだ。そのためには敵に鉄砲でも大砲でも送るし、明らかに民衆の支持を得られない大攻勢でも平気でやる。残念だが遼州人も地球人もそう言うところじゃ変わりはねえんだ』 


 嵯峨の口元に残忍な笑みが浮かぶ。


『そこでだ。遼州同盟司法局は央都協定二十三条第三号の規定に基き甲一種出動を行う。すべての任務にこれは優先する。各隊の作戦の立案に関してはクバルカに全権を一任する!以上』 


 嵯峨は再びまじめな顔で敬礼する。そして画面が消えた。ハンガーに整列した隊員は全員が嵯峨の消えた画面に敬礼をした。



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