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20話 もう二度とおまえの顔はみたくない

 「かなとくーん、帰りにどこか飯食っていこうぜ?」

 

 本日の授業が終わり、帰ろうかと思っていると腹を空かせた野獣にとっ捕まってしまう。


 「あれだけ食べてるのに、燃費悪過ぎじゃないか?」

 「俺の胃袋はロータリーエンジンなんだ」

 

 野獣こと虎太郎の返答にため息で返す。

 

 「で、どこに食いにいくんだよ?」

 「駅前のモールの中にできたラーメン屋行ってみようぜ!」

 

 昨日、虎太郎と駅まで一緒に帰る途中で見つけた場所か。

 夕方にもかかわらず行列ができていたのが印象に残っていた。


 ふと、柚羽の席に目を向けると、既に姿はなかった。

 そういえば、今日は昨日の夜中にやっていたアニメを見るとか言ってたな。

 たしか特番で2時間近くあるから、それまで夕飯はなくても大丈夫だろう。

 ……見ながら何かしら食べてると思うし。


 ちなみにダイエットのためにやっていたウイッチボクシングは「私、ふくよかな女を目指す!」と言って、ここ数日プレイをしていない。

 筋肉痛に苦しんだせいか、話題を振っても誤魔化してくる。あの様子じゃ二度とすることはないだろうな。


 「わかったけど、あまりにも遅くなったら食わずに帰るぞ」

 「安心しろ、並んでいる相手なんか俺が蹴散らしてやるからよ」

 「……通報はまかせろ」

 「俺を逮捕させる気満々じゃねーか!」


 わざとらしく舌打ちをしながら、カバンを手にして教室から出ていった。



 虎太郎と話をしていくうちに、ショッピングモールへと辿り着いた。

 他の店に目もくれず、すぐに目的のラーメン屋に向かっていくと、昨日ほどの行列はなかった。


 「やったぜ! さすが日頃の俺の行いのおかげだな」


 虎太郎が上機嫌な様子で列の最後尾に並んでいったので俺はその隣に立った。

 

 「ほとんどの授業爆睡しているやつの日頃の行いが良いわけないだろ……」

 「俺は睡眠学習をしているんだ」

 「それじゃ、期末テストで赤点はなさそうだな」

 

 ちなみに虎太郎は赤点常習者で、期末テストの後にあるテスト休みは補修(補習)となっていた。


 「そもそも、人を人が順位をつけたり、点数だけで判断するのはよくないと思うんだよな〜!」

 「……ベースは味噌なのか、お、この赤味噌ベース美味しそうだ」

 「適当に流すのやめてくれない!?」

 

 虎太郎を揶揄っているうちに、自分たちの順番がやってきて店内へと入っていった。

 店内はベースとなっている味噌の香りが漂っており、それだけで食欲が湧いてきそうだった。

 そう思っていると、隣からはきゅ〜っと情けない音が聞こえていた。


 「腹の虫が鳴き出したみたいだ、早く食べないと倒れそうだ」

 

 店員に席まで案内をしてもらうと、虎太郎は真っ先にメニューを開く。


 「俺、唐辛子味噌チャーシューラーメン大盛りニンニクマシマシで!」

 

 聞いただけで胃がもたれそうな内容だった。

 

 「奏翔はどうするよ?」

 「俺は無難に赤味噌ラーメンでいい」


 そう告げると虎太郎は大きな声で店員さんを呼んだ。



 「やべえ……食いでありすぎで動けそうもないぜ」


 スープまで飲み干した虎太郎は全体重を背もたれに乗せながら、自分のお腹を摩る。

 

 虎太郎が頼んだラーメンは麺の上にチャーシューが山のように積まれていた。

 見るだけで胸焼けがしそうだったが、それを食べるコイツをみてたら食欲がだんだんと減っていった。

 無難に普通サイズ頼んどいてよかった。

 

 「プラ〜ザラーメンもいいけど、ガッツリ食いたい時はここもいいかもな!」


 虎太郎はよほど気にいったのか、並んでいる時よりも上機嫌に話していた。

 

 「まあ、たまになら……と、電話だ」


 ブレザーの内ポケットに入れていたスマホがブルブルと音を立てて震えていた。

 画面をみると、柚羽の名前が表示されていた。


 「ちょっと親から電話きたから、外に行ってくる」


 財布から千円札を取り出して虎太郎の前に奥とそのまま店を出て行て通話ボタンをタップした。


「もしもし?」

『なんか随分と出るの遅かったけど、もしかして……』

「ラーメン食ってただけだが?」

『……だろうと思ったよ』

「それで、どうしたんだ?」

『アニメで、主人公とヒロインのイチャイチャぶりをみてたら、体が疼いてきちゃって……』

「……通話終わらせていいか?」

『えっとね! 帰りでいいからいつも飲んでるアイスミルクティ買ってきて欲しいんだけど!』


 そういや、昨日の夜にもう無くなりそうとか言ってたな……。

 どうやら買い忘れたようだ。


「わかった……帰りのコンビニに寄って買っとくよ」

『ありがとー! お礼は何がいい? ごはん? お風呂? それとも柚羽ちゃん?』

「最後以外で」

『つまりはお風呂の中で柚羽ちゃんをおいしくいただきたいってことだね!』

「耳掃除してこい……」


 俺の返答に柚羽はケラケラと笑っていた。


『まあ、冗談は半分だけおいといて』

「全部おいとけよ……」

『なんか今日は奏早く奏翔と一緒に過ごしたい気分なんだよね〜』


 柚羽は急に声色を変えて話だした。


「突然どうした?」

『うーん、何かあったわけじゃないけど、猫みたいに奏翔の体にベッタリしたいというか……』


 どう反応していいのかわからず俺は「うーん」としか言えなかった。


『だ・か・ら! 早く帰ってきてね! じゃないと私1人で楽しんじゃうからね!』


 最後は元気よく答えると、俺は「わかった」と告げて通話を終了させた。

 一体どうしたと言うんだよ……


 「さむ……」


 日が沈んだからか、息を吐くとうっすらと白いものが見えた。

 昼間はそこまでではなかったが、夜に近づくにつれて温度が下がって行った。


 「戻るか……」

 

 そう思い、店のドアを開けようとしていた。


 「あれ……藤野くん?」


 突然、自分の名前を呼ばれたので振り向く。

 そこに立っていたのは、髪の上部を二箇所ヘアゴムで結いたツインテール姿の女。

 

 「すごい久しぶりだね、元気してた?」


 女は笑顔で俺の目の前に立っていた。

 俺は何も答えずにいた。


 ——と、言うよりも無視をしたと言った方が的確かもしれない。

 特にこの女とは……。


 「あれ? もしかして忘れちゃった? 中学一緒だった富水香凜とみず かりんだよ〜」


 名乗った女、富水香凜は微笑みながら、俺に向けて手を振っていたが俺が反応を返すことはなかった。

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