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 大嶺君の答えは、勿論イエス。こうして、私たちは、ハッピーエンドを迎えるわけだが、それにしては、状況が散乱している。なんせ、ぐったりとして意識を失ったヤンキー君がのたばり、ぐちゃぐちゃになった私の部屋。


 滾る思いを早くぶつけあって、二人溶け合ってしまいたいけど、ヤンキー君の打ちどころが悪くて万が一死んでしまったらヤバい。といっても、救急車を呼ぶような大事にはしたくない。どうしようか迷っていたら、大嶺君がさっさと救急車を呼ぼうとしていた。


「ちょ、大嶺君が殴ったってすぐ分かっちゃうし」


「意外と簡単に人は死ぬからな。用心にこしたことはないし、折角の俺と千尋が結ばれた日に死人が出るのは縁起が悪い」


「大嶺君、千尋って!?」


「ああ、恋人になったんだし、な。あと、そいつに千尋呼ばわりされているのは不愉快なんだが」


「うん。嬉しい。じゃあ、ヤンキー君にも止めるように言うよ。……それと、私も修二君って呼んでいい?」


「っ当たり前だろ!!かわいい、かわいいな千尋」


「そんな、でも、私修二君に頭撫でられるの好きだな。これから、もっとして」


「ああ、分かった!千尋は、なんか積極的になったな。かわいい」


「だって、修二君が私の事愛してるってわかったから」


「千尋…」






「おい、俺のこと忘れてないか!!!」


 そんなこんなでまたキスする流れになった時、ぶっちゃけ存在を忘れかけていたヤンキー君ががばりと起き上がった。顔が腫れていて見るからに痛そうで、その顔はぶすっとしている。大嶺君は、やっぱりヤンキー君が嫌いみたいで、無視。どうやら、意識もはっきりしているし自分で病院行ってもらおうと私が非道な算段を立てていた所、ヤンキー君がジロっと私を見て、質問をよこした。


「俺の名前知ってる?」


 ヤンキー君と知り合って、もう一年近く。一時期、私の部屋に住み着いていたヤンキー君の名前。聞いたこともあった気がするが忘れてしまった。答えられない私に、ヤンキー君は深いため息を吐く。


「もういい。あんたのことはきっぱり諦める。大嶺、さっきの嘘だから。……もう、二度とあんたに会いには来ないから」


「本当に!?良かったぁ」


「……俺はなんでこんなにも優しくない千紘を好きになったんかな。それが、間違いだった。俺は、俺を拾ってくれるやつなら多分、誰でも良かったんだ。もう千紘はいらない。じゃあな」


 パンパンにはれた顔を真っ直ぐ私に向けながら、ヤンキー君はよたよと立ち上がり部屋を出ていった。


 それ以降、ヤンキー君を見かけたことがない。


「悩みの種が自分から帰ったね」


「ああ」


 呆気なく去っていくヤンキー君の後ろ姿を見て、彼がいたからこそ私たちはお互いの本当の心を打ち明けられたんだと思う。同情はしないが、その痛々しい背中に感謝の意を送った。


 私らの為に、ヤンキー君はいたんだろう。

 だって、世界は、こんなにも私と大嶺君を中心に廻っている。




 この後、私と大嶺君は激しく愛し合った。何も言わなくとも、死が二人を別つまで、と心に誓う。

 きっと、ではなく私らは、ずっと互いを愛しすぎ続ける。大嶺君とずっと幸せに狂気と執着で歪んだ日々を送り続けるのだ。


「ああ、良かった。桔梗さんから大嶺君を奪うことが出来て」




藍原さんはヤンデレ彼氏を奪いたい 完










 おまけ(BL)


 ヤンキー君のその後(を妄想してみた)


 また、夜の町をふらつくヤンキー君。そんな中、ふと気がつくと怪我をしている猫が。猫には、迷子ように電話番号の書いてあるプレートがついてあり、ヤンキー君は「こいつには帰る家も帰ってきて欲しいと願ってくれる人もいるのか」と、羨ましい気持ちを滲ませながらそんな幸せな存在を壊してはいけないと電話番号に連絡。猫の怪我が酷いことから、ついでに動物病院に連れていき、治療を行った。

 病院でお金を払い終わり、出ようとすると目の前に焦った表情のイケメンが。どうやら、その男が飼い主で格好を見るにお金持ちらしい。

 アリーと呼ばれた猫を彼に渡してから、彼にお礼をさせてくれと懇願される。ヤンキー君は、見返りを求めていなかった為、断るがそれでも、と言うイケメンに「俺を飼って」とつい呟いた。それを聞いたイケメンは、少し驚いて「なんで?」と聞く。ヤンキーくんは猫を助けた理由を説明。


「私が君を飼ってあげる。ところで君の名前は?」


「……俺の名前を聞いてくれるのか?」


「当たり前だよ。変なことを聞くね」


「人を飼おうとする変人に、変なことなんてあるのか。前、俺を飼っていた人は俺の名前を知らなかったから」


「飼われるのは初めてじゃないんだ?」


「いや、初めてじゃないか?飼われていたというより、勝手に住み着いてただけで、俺にはアニーの持ってるプレートもくれなかったし」


「君は、寂しい子なんだね……普段はこんなことしないんだ。だけど、君には興味がある。うちにおいで。大切にしてあげる」


「俺は、大人しくねぇからな」



 庇護欲の高いスパダリ×寂しいヤンキー


 その後のその後、晴れて結ばれた二人だが、スパダリ彼氏のあまりのもてっぷりに不安になって、ヤンキー君が家出とかをしていたら飯旨です。







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― 新着の感想 ―
[良い点] 藍原さんよかったね!2人が結ばれてとてもよかったです!私的に藍原さんのお話も好きなんですが、ヤンキー君のその後の妄想がやばかったですね。最高です!ヤンキー君のお話が気になります [気になる…
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