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20世紀シーン2 石橋帰還
次々と、帰還する兵の中に、石橋靖男と言う将校が居た。この人物もニューギニア奥地で奇跡的に生還した一人であった。若山と接点があったかどうかは分からないが、ほぼ同じ頃に、兵庫県明石港に戻ったのは、相当遅い帰郷であった。彼は貨物船に乗り、兵団とは別に労役として戻っていた。眼光鋭く、無口だが、しゃきっとした長身の男であった。
「よう、ヤスちゃん、酒場に行かへんか?」
同じ貨物船の船員が声を掛けたが、
「いや・・ちょっと行く所があるんや。また・・」
彼は、その後、この貨物船に戻って来る事は無かった。
戦後復興の道をGHQに支配されて居たが、やっと戦争が終わり、平和が訪れた事を石橋も感じながら、今でこそ、高級住宅街で名高い芦屋の一角にて、既に彼はカフェをオープンさせていたのであった。




