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男の娘が魔女になって大変な目に遭う話  作者: クエクト1030
1章 魔女社会というもの
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25話「愛」

「いらっしゃい〜」



 僕は首輪を選んでから、リーベさんに部屋まで連れ込まれた。

 当然道中は廊下を通るわけだけど、首輪がどうにも気になって恥ずかしい。

 首輪は所持者と被所持者の証明って説明が頭に浮かんできて、まるで自分が物として扱われて、部屋に連れ込まれているような──


 連れ込まれたという一点においては、合っているけど。



「さぁさぁ座って座って」


「お、お邪魔します……」



 リーベさんの部屋は僕たちの部屋と比べても、部屋にかけられている空間魔法が更に広くかけられていて、小部屋の数や一つの部屋の空間の広さが桁違い。


 今は寝室に通されているわけだけど、寝室だって何このベッド。


 プリンセスベッドっていうの?天蓋があってその四隅からカーテンがかかってる感じの。これ注文して作ってもらったのかな。




 あぁうん、そう。




 僕は今、寝室のベッドの上で横にピッタリついて。


 二人でお座りしている。



「あの……?」


「ミコくん」


「は、はいっ」


「私たち……お付き合いしてから一ヶ月になるよね」


「そう、ですね。付き合って数日後にデートして、その日の内に誘拐された驚きの体験しましたけど」


「あれから暫くは校長先生に色々呼び出されてドタバタしてたじゃん?」


「そうですね。主にリーベさんが呼び出されてましたけど」



 そう。主に呼び出されていたのは建物損壊の主犯になるリーベさん。

 被害者の僕も何回か呼び出されて、どんな仕打ちを受けたのかとか色々と校長先生に直接話を聞かれたけど、それにしても倍以上の回数をリーベさんは呼ばれていた気がする。



「けほん。私だけがって事は重要じゃないのっ」




「つまり、そのね。そろそろ私たちも次のステップに進んでも良いとは思わない、かな?」


「次のステップ……」



 デートして、手を繋いで、キスもして……

 ……うん、次か、次か。


 流石にリーベさんも、勢いでの発言ではないのと僕が発情しているわけではない……つまり、僕の状態に釣られていないせいか、自分の発言にやや赤面している。


 顔を背けてるし、そもそも僕も顔が見れない。多分お互いに顔を赤くしている。



「……その、分かりました。デートから始めたい、って言ったのは僕ですもんね」


「え、えっと。どう、しますか?」


「ど、どうしよっか?」




 お互いに裏返った声で会話をする。

 わ、我ながら間抜けすぎる。これならあの時押し倒されてた方がまだスムーズに事が運んだのかな。




 いやでも、やっぱり順番ってものは大切だし……。




「まずは……キス、しますか?」


「……うん」



 反対方向を向いていた顔をギクシャクした動きのまま下に向けて。


 少しずつ、リーベさんへと向けていく。



「……」



 リーベさんも顔はこっちを向いてこそいたけれど、目はそっぽを向いていて。


 スカートの膝元をぎゅっと握りしめていた。




 僕は何も言わずに座り直して、ベッドに膝で立つ。


 そうしてやっと目線の高さがあって、目と目が合わせる事が出来るから。




 視線の先の、碧色の綺麗な瞳は潤んでいた。


 宝石と思う程、本当に美しい瞳。




 甘い吐息が香る。




 僕たちは少し戸惑うけど、目を瞑ったり逸らす事はしなかった。


 大切な時間で、大切な瞬間だから。


 そうして顔と顔、唇と唇が少しずつ近づいて──



「「うっ!」」



 コツン、と鼻がぶつかった。



「……あはは、この前は上手くいったのに」


「雰囲気崩れちゃったね」



 お互い顔を少し傾けなきゃ、先に鼻がぶつかるもんだよね。そりゃそうか。でもそのおかげで緊張が解れて。二人してくすくすと笑いながらお互いの腰に腕を回して──




 唇が、触れ合った。







 柔らかい感触が圧しあって、離れて。圧して、離れる。

 数度の度に目が合って、笑い合う。




 上唇、下唇。頬、顎、首。

 ゆっくりと、順番に。僕たちは相手の身体へ自分の口を触れていった。


 思いを言葉ではなく、口で伝えるために。




 そうしてもう一度、口付けをした。




 甘い唾液が味蕾を優しく愛撫する。

 荒い息は番いの香りを鼻腔に運び、相手の色で染め上げられる。




 口の中がリーベさんの唾液で蹂躙されて、肺が酸素を求めて身体が強張る。


 それでも僕たちは離れない。




 一滴たりとも零れ落ちないように。一息でもただの空気を与えないように。

 自分たちの体液と香りを押し付け合い、奪い合う。


 脳が酸欠と興奮とで真っ白に染まる。


 そうして何が何かも分からなくなる程に、相手を求める舌と相手を逃さない腕の力は強くなる。



「ぷはっ」


「はぁ、はぁ……」



 限界に達して離れた僕たちの口からは、てらてらと光を反射する粘液質の涎が伸びる。


 酸素を求めて呼吸をする度に、息とはまた別の。相手の香りが肺に広がっていく。




 汗の香り。


 お互いを求めるフェロモン、番いの信号。







「リーベさん」



 僕は彼女を押し倒していた。


 血走った目で見下ろす僕を、彼女は見上げていた。



「リーベって、言って?」


「……リーベ」



 もう一度唇が重なる。


 握りしめられた手が離れる事はない。






 この日、僕は(リーベ)を知った。

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