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紅い蜘蛛、再来

 俺は装備品を全て身に付けて、深層スラムへ向かった。ビルが立ち並ぶの大通りから少し内側に入って線路跡の近くに行くと、夜はほとんど明かりも無い得体の知れない場所になる。以前は地下街もかなりヤバかったようだが、排水機能が完全に壊れた事で水没してしまって今は使えないそうだ。

 処刑任務は通常夜に行われるそうだが、深層スラムだけは夜に出歩くと普通に奇襲されて殺される可能性が高いので昼間に行く必要があるらしい。そして、明らかに目立たせるように武器を携帯するのもダメなんだそうな。

 深層スラムの中に情報提供等の協力者もそれなりの人数いるので、解体するにもできないとヒロが言っていたが……それにしても、恐ろしい雰囲気だ

 深層スラムに入ってすぐ、俺は川沿いにあるトタン屋根の小屋の前に立って合言葉を掛けた

「トミーガンのデリバリーを頼みたい」

 俺がそう言うと、簡単に蹴破れそうな程ボロボロな引き戸がガラッと開けられて中に引き込まれた。そして一気に戸が閉められて、薄暗い部屋の中で見知らぬ男と二人だけになった。

「なんだ……アンタ知らない顔だな。ここは初めてかい?」

「あ、あぁ」

「そうか、手荒な真似をしてすまない。俺はアンタの所の協力者だ。今回、お前が始末するように言われた奴の情報は持ってる」

「……どこにいるんだ?」

「この川に沿って旧薬膳院駅の所まで行け。ここからなら、すぐ下の川を通ってる船を使うのが一番安くて安全だ。五百円くらいで行けるぜ。そして、今じゃあの駅は集合住宅みたいになってるからな……そこで一番偉そうにしてる奴が、今回の標的だ」

「偉そうにって……どうやって見極めるんだよ」

「あの駅は、今やほとんどアイツに支配されてる。だから、そういう振る舞いをしてる奴を探すんだ。それと念の為に、奴を殺したらすぐに逃げた方がいい。この深層スラムが静かな理由は、皆水面下で物事を進めているからだ。その沈黙を破った奴は、全体に敵意を向けたと見なされて襲われちまう。チャカでもドスでも、出して使ったらすぐ逃げろ」

「……分かった」

 俺は、簡単にお礼の品を手渡すと小屋を出ようとした。

「ちょっと待ちな」

「ん? お礼の品が気に食わなかったか? それは俺に言われても困るぜ?」

「違えよ、コイツを持っていきなって言ってんだ」

 協力者の男は、そう言って小さな銃を差し出してきた。

「これは?」

「非常用のやつだ……念の為に袖口に隠しときな」

「おう、ありがとう」

 俺は軽く礼を言って小屋を出た。そして、すぐ近くにあった川へ降りるためのガッサガサのコンクリートでできた階段を下って、今にも壊れそうなボロい桟橋に立つ。しばらく待っていると、古びたボートに乗った男がゆっくりとこちらへ船を漕ぎ進めて来た。

「乗るのかい?」

「ん? あぁ……乗るよ。薬膳院駅まで」

「……お若い兄ちゃん、()()は初めてかい?」

「そうだな。このサービスを利用するのは初めて━━」

「そうじゃあない。この場所に来る事自体が初めてだろう? って言ってんだ」

「やっぱ分かるんだな、そういうの」

「あぁもちろんさ。まあ、乗るからには皆平等に客だ。ボッたりはしねえから安心して乗りな」

 俺は促されるままに船へ乗った。すると、船はゆっくりと水面を滑るように漕ぎ出された。

「そうだ、コレを渡しておくよ」

 俺はそう言って、船頭の男にタバコを一箱手渡す。

「おぉ、こりゃあありがたいね。これも先輩の入れ知恵かな?」

「何から何までご存知のようで」

「俺はもう三十年この仕事をやっている。色んな奴らを見て来たさ。アンタの足元を見な、穴が開いてるだろう?」

「……本当だ。銃弾の痕か? コレ」

「そうだ。深層スラムのさらに奥深くにある賭場で大チョンボして逃げてきた男が、俺を脅して無理やり乗り込んできたんだよ。当時はまだこの仕事を始めて数年程度だったんで、ブルって乗せちまった。そして、その男の追手が上から撃った弾が男の頭を貫通して、そこに穴を開けた」

「……すげえな」

「ま、俺がこの仕事を始めたのなんてアンタが産まれたずっと後だろうけどよ」

「……!?」

「お前、茜術者だな? 見れば分かる。だからと言ってどうこうする訳じゃないが……気をつけるんだぞ。さ、もう到着だ」

「ここが……」

 確かに、目の前に見える駅はかなり生活感が漂っている。俺は船頭のオッサンに七百円を支払うと、駅に向かって歩き出した。だが、とある人物を目撃して焦って物陰に隠れる

(オイオイオイオイオイオイ、どうなってやがるんだ!? なんでアイツがここに……)

 俺が見たのは、レスパリのボス。紅蜘蛛華だった。なぜアイツが十契のシマに……そして深層スラムに居るのか全く分からない。どうやら、男と話し込んでいて俺には気づいていないようだ。俺は静かに袖口に隠してある先程貰った小さい銃をコッキングした。

(ここでやるしかない……のか!?)

また投稿頻度が下がってきてて申し訳ない!

試験機関で超忙しいので、6/20まではお休みさせてもらいます!

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