【28話】副会長はド変態でした……
「この私を愚弄した罪、その身をもって受けるといい!! 【ロックバースト】」
十数個の岩が俺に向かって飛んでくる。
その一つ一つは先ほどの岩よりも大きく、さらにスピードも速い。
イザベラは俺を本気で仕留めに来ていた。
俺はイザベラに向かってまっすぐに歩いてく。
回避も防御もいっさい取らない。
「また何もしないつもりか!」
「はい。避ける必要がありませんからね」
十数個の岩が俺に直撃した。
だがそれは、一つ残らず砕け散って割れてしまう。
【身体機能極限解放】を発動していることで、俺の体は尋常ではない防御力を得ている。最高硬度の金属――オリハルコンよりも遥かに硬い。
速度を持った物質がそんな俺にぶつかればどうなるか。結果はそう、こうして砕け散るのみだ。
「――!? ど、どういうことだ! ありえない……!」
事情を知らないイザベラは、何が起こったのかまるで理解できていなかった。
大きな驚愕を顔に浮かべ、ガタガタと体を震わせている。
その間に俺は、イザベラとの距離を詰め終わっていた。
「これでもう実力差は分かりましたよね? 降参してください」
「ふ、ふざけるなよ! 私は名誉ある生徒会の副会長だ! 貴様のような低能に誰が降参などするか!」
青くなっている唇を、強く噛んだイザベラ。
怖くてしょうがないはずなのに、大したプライドだ。ちっとやそっとじゃ、こいつを折ることはできそうにない。
言葉での説得は無理そうだな。
俺は右手を振り上げる。
言葉が通じない以上は、少し痛い目を見てもらうしかない。
「っ……! 【アースアーマー】」
イザベラは慌てて魔法を発動。
分厚い土の鎧が、彼女の全身を覆った。
土属性魔法の本領は、強固な防御魔法だ。
攻撃魔法の威力は低いが、その反面、防御魔法は強力なものが多い。
イザベラが発動した魔法、【アースアーマー】もその例に漏れない。
物理と魔法、両方の攻撃から身を守る鎧を生みだす、バランスの取れた防御魔法だ。
しかし、すべての攻撃を防げる訳ではない。
【アースアーマー】の防御力を上回る攻撃を受ければ破壊されてしまう。
そう――例えば、神の域に達している男の拳に殴られるとか。
少しだけ力を入れて、イザベラの腹部を殴ってみる。
瞬間、堅牢な土の鎧はバラバラに砕け散った。
全身を守っていた鎧を失い剝き出しとなったイザベラが、十メートルほど吹き飛んだ。
「クソッ! 力加減を間違えたか!」
鎧を破壊するだけのつもりだったが、思ったよりもやりすぎてしまった。
俺は急いでイザベラに駆け寄った。
息はしているし、意識もはっきりしている。
目立った外傷も見られない。
「……よかった」
ヒヤヒヤしたが、心配しているような事態にはなっていなかった。
俺は安堵の息をついてから、イザベラに片手を差し出した。
「すみません。やりすぎてしまいました」
「いや、謝るのは私の方だ。お前の力を見誤っていた」
俺の手を掴んだイザベラが立ち上がった。
口元には微笑みが浮かび、そしてなぜか……頬が紅潮している。
「まさか【アースアーマー】を拳ひとつで砕いてしまうとは、大した男だ。お前の拳、実に気持ち良かったぞ!」
「……うん? 気持ち良かった?」
「ミケル・レイグラッド。お前の生徒会入りを歓迎しよう。……そしてこれからも、私のことを殴ってくれないか!」
息を荒くさせながら黒色の瞳を貪欲に鈍く光らせるイザベラは、身を乗り出し「それはもう、おもいっきりに頼む!!」と頼んできた。
その姿はもう、ド変態以外の何物でもない。
凛々しく高潔な鉄の副会長の正体が、まさかこんな残念な人だったとは……。
イザベラを慕っている多くの生徒がこのことを知ったら、きっと失望するに違いないだろうな。
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