設定ってなんですか?
「それではカイトとエリィの二人はエリィの村へと向かっています。何かしますか?」
「何かしていいんですか?」
「? 別に、なんでもしていいですよ」
「なんでも!?」
俺の驚く声に初めは不思議そうな顔をしていた先輩だったが、俺の考えていることを理解したようで眉をひそめる。
「一応言っておきますけど、TRPGはなんでも出来ますが、逆に言うとGMもなんでも出来るので倫理観に反することは辞めておいた方がいいですよ」
「あっ、はい。倫理観ね倫理観」
俺はそう小さく繰り返す。
そうだ一応、藤崎先輩は女性だし先輩なのだ。ましてやさっき会ったばかり。
失礼なことはできない。
あまりにも話しやすかったので気をゆるしてしまっていた。
「じゃあそうですね。一応、ここがどこなのか聞いてみます」
「そういえばカイトは異世界人でしたね。じゃあエリィは異世界人であるカイトにこの世界のことを話します」
『ここはビスク王国のはずれ。とある海域にある三つの島のひとつラシュクールです』
「ビスク王国、ラシュクール、、、」
『ここはトライアングル諸島と呼ばれ、三つの島があります。ひとつはここラシュクール、もう一つはイルファス、そしてザクリス。伝説ではかつてここで創世の神と魔王が戦ったそうです。その戦いがどうなったのかはわかりませんが、その時に神の流した血によってできたのがイルファス、魔王の血で出来たのがザクリス、ここラシュクールは神と魔王の血が混ざり合って出来た島と言われています』
「神と魔王の血が大地になるんですね」
『まぁあくまでも伝説です。そしてザクリスには多くの魔物が住んでいて人間が住むのは困難と言われています。ラシュクールにもモンスターはいますがそこまで多くはないです』
「イルファスは?」
『イルファスにモンスターはいません』
「安全なイルファスならわかりますが、なんでラシュクールに町や村があるんですか?」
『モンスターたちが海を渡ってイルファスまでやってくるからです。イルファスの安全を守るために、国はラシュクールに兵隊や傭兵を送ったのです。さきほどの町ツイストはそんな彼らの生活を支える為に出来た町ですね。私の村、サンドの村は元々はモンスターにやられて戦えなくなった兵隊や傭兵がそれでもこの島で何かがしたいと作った村だと言われています。今は農業なんかでツイストの町を陰ながら支えているんですよ』
「へぇ、ちゃんと設定があるんだ?」
『設定? ってなんですか?』
「いや何でもない。俺の世界の話。でもそんな村に盗賊が出るんですね」
『そうなんですよ。傭兵としてやってきて、モンスターと戦わず盗賊になって町や村を襲う人たちもいるんです』
「そんなひどい人たちが、、、許せませんね」
『はい。ですのでよろしくお願いしますね』
「はい。がんばります」
「ではそんな会話をしているとサンドの村が見えてきました」