それはもっと仲良くなってから。
「ではそろそろ帰りましょうか」
そう言って藤崎先輩は窓の方を見る。
俺もつられてそちらを向くと、いつの間にか空は赤く染まっていた。
「もうこんな時間か。あっという間でした」
「時間、忘れちゃいますよね」
ふふっと笑うと先輩は机の上に広げたTRPGの紙類を片付けはじめる。
「これ持って帰りますか?」
「山田快人のキャラクターシート」
「もう死んでしまったのでこれは使えませんが、初めて作ったキャラシなので記念にと思って」
「はい。持って帰ります」
これは初めて作ったTRPGのキャラクターシートでもあるが、藤崎先輩と初めてあって二人っきりで初めてTRPGを遊んだ記念でもある。
俺はそれを、昼間の授業で配られた問題用紙の挟まっているクリアファイルにしまった。
家に帰ったら、TRPG用に新しいクリアファイルを用意しなきゃなとそんなことを考えていたら、先輩もいつの間にか片付けが終わっていた。
「お待たせしました。では帰りましょうか。私はここの部屋の鍵を職員室に戻してから帰るので先に帰ってもらって大丈夫ですよ」
「いえ、せっかくなので待ってます」
「そうですか。じゃあそうしましょうか」
そして二人で職員室まで行くと、先輩が鍵を戻して出てくるまで外で待っている。
そして特に会話もなく正門まで二人並んで向かった。
色々話したいことがあったのに、なんか緊張して言葉が上手く出てこなかった。
校庭から野球部の元気の良い声が聞こえてくる。
ちなみに俺は自転車通学で先輩は電車通学だった。
「では私はこれで」
「あっあの、、、」
そう言って離れていく先輩に俺は、喉の奥から捻り出すように声を発する。
少し裏返ったような気がして顔が熱くなる。
「なんですか?」
「先輩ってやっぱり、、、」
俺がそこまで言ったところで、先輩はこちらに歩み寄ってくる。
俺は自転車を抑えていたので身動きが取れない。
先輩は俺の口元に人差し指を押し当ててきた。
俺は驚きで完全に固まってしまう。
「それは、もう少し私と高良君が仲良くなってから、、、ね」
そう言って離れると先輩はニコリと笑った。
それはいたづら心からくる微笑みだったのか、それとも大胆な行動を取った自分に対する恥じらいからくる微笑みだったのか。
去っていく彼女の後ろ姿を俺はしばらく眺めていた。
いや、たぶん見とれていたんだと思う。
了




