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74話 タコさん、衝撃の事実を知る

お待たせしました。今日より5章の前半を投稿します。

更新は毎日17時の予定です。

 サン・グロワール帝国の皇帝、エドガーは悩んでいた。いや、正確に言うならここ最近はずっと同じことを考えている。


 その原因はもちろん邪神タコだ。ナスキアクアから始まった一連の騒動は、この国にも多大な影響を与えている。

 そもそもの始まり、ナスキアクアでアレサンドラが王となった時に、ニューワイズ王国や聖スプレンドルの動きを待っていたのは、考え方として間違っていなかったはずだ。

 だが、この騒動は流れが早すぎた。


 早々にニューワイズ王国がナスキアクアと同盟。いったい何があったのかと調べを進めるうちに今度は王国が魔族と停戦。

 聖スプレンドルが本腰を入れて対処を始めたのでひと段落かと思いきや、かの国は内乱のような大騒ぎにより、教会が生まれ変わるという事態。

 結局、新生スプレンドルの指導者はナスキアクアと同盟を結んでしまった。


この間に「なんでそうなるのだ!」と何回叫んだことだろう。皇帝は重い胃をさすりながら独り言ちる。


 すでに、ナスキアクアの戦力がどれほどのものかは判明していた。邪神やドラゴンがいるという時点で、後は考えるまでも無いかもしれないが。

 間違いなく、この国が勝てる相手ではない。

 だが、こちらから宣戦布告をしてしまった手前、停戦を申し込むのは簡単なことではない。最低でもなんらかの形で賠償を行う必要がある。


 国境線で様子見程度の交戦しかしていないので、それほど無茶な内容にはならないと思う。だが、それでもこの国は大騒ぎになるだろう。

 なぜなら、この国は他国と比べても歴史が長くないからだ。領土としては他の三大国家と比較しても遜色ないが、国家としての成熟度はまだまだ低い。

 そして、それよりも根本的な問題がある。それは、帝国は力が全てだからだ。


 元々、周辺国家を武力で制圧した先祖の一人が、『皇帝』と名乗りを上げたのがこの国の始まりである。

 彼は国を攻め土地や金品を奪い取り、それを自分に従う者に配った。それが皇帝、ひいては帝国の存在意義であり、だからこそ皆が付いてくるのだ。

 その流れは現在でも引き継がれており、未だこの国は拡大を続けていた。もちろんそれは、この騒動が始まるまでのことだが。


 帝国は、勝利を続けなければならない。負けたとしても、それ以上の勝利で塗り替えなければならない。

 勝利できない皇帝などこの国には不要だ。そう思われたが最後、「ならば我こそが」と考える者がこの国には大勢いる。

 彼らは正面から、または暗殺、市民の扇動などなど、様々な手段を取って皇帝を引きずり落とそうとするだろう。


 もう少し時間があれば対処も可能だった。既に父は帝国の限界を理解しており、その方法は引き継がれていたのだ。

 しかしそれは、反乱の恐れがある貴族や領主を軒並み処刑するというものだったが。

 もちろん、これを実行するには皇帝自身に権力や武力を集中しておく必要がある。その準備は未だ完成しておらず、今実行したところで皇帝の方を排除されるのがオチだ。


「むぅ……」

 ナスキアクアと停戦交渉も考えたが、皇帝には内密にそれを行う手段が無い。誰が自分に反意を持っているか分からないのだ。先方に話を通すまでにどこかで情報が洩れる。

 それに、あまり時間もかけられない。収穫期も終わりもうすぐ冬が来る。帝国ではこの時期、『口減らし』を兼ねた大規模作戦を実行するのが通例だ。

 どうにか作戦を中止できたところで食料不足による問題が発生する。皇帝の座を狙う者は、それすら利用するだろう。


 ナスキアクアに戦いを挑めば敗北は必至。かといって、戦いを挑まなければ自身の地位が危うい。手詰まりのような状況に、皇帝はただ頭を抱えることしかできなかった。

 だがその時、皇帝は頭上に何者かの気配を感じる。これは、間違いなく子飼いのものではない。


「……何者か?」

「あなたの悩みを解決できる者……でしょうか」

 皇帝自身、まさか答えが返ってくるとは思っていなかった。どうやら、普通の暗殺者とは毛色が違うようである。

 相手の言葉が信用できるはずもないが、皇帝の精神状態も普通ではなかった。仮に、これが暗殺者だとしても『楽になれる』ことに変わりはない。

 ここまで来れるほどの手練れならばせめてその顔を拝んでやろうと、むしろ堂々とした態度で声を上げる。


「ならば姿を見せてみよ。皇帝の部屋に忍び込むものが、顔を見せられぬほどの臆病者ではあるまい?」

 すると、何者かが音もなく部屋に降り立った。

 その者はゆったりとした服で全身を隠してるが、予想よりもかなり背が低い。声を聴いた時から予想できていたが、女性だろうか。


 だがそれよりも、皇帝はとある一点に目を奪われる。

 それは、顔を隠しているフードの横から飛び出す、黒に近い褐色の細長い耳だった。



 スプレンドルの復興も順調に進み、タコは伏魔殿でゆっくりできる日々が続いていた。

 そもそも、国レベルの話ともなれば、タコにできるのは荷物運びくらいである。それすらも相手が恐縮してしまうところがあるので、人手に余裕ができればその役も回らなくなっていた。


 そんな訳で、今日もタコは談話室で優雅なティータイムを満喫している。もちろん、お茶を入れるのはオクタヴィアの仕事であり、最近ではプロ顔負けの腕でタコを楽しませていた。

 なにやらベロニカと一緒にアイリスからお茶の淹れ方を習ったり、レインから様々な茶葉を入手しているようだ。


 なんだかんだ言って二人も仲良くなったようであり、タコはその成果を遺憾なく味わっている。

 そんな穏やかな空気の中、不意に部屋のドアがノックされた。オクタヴィアが返事をしてドアを開ける。


「失礼します、こちらにミカは……来ていませんね」

 タコがいるとは思っていなかったのか、恐縮しながら入ってきたのはベロニカだった。ミカを探しているようできょろきょろと部屋の中を覗くも、いないことが分かり落胆する。


「どったの? ベロニカちゃん」

「あ、タコ様。実はミカが先ほどから行方不明で……」

 ベロニカはレインに呼ばれて伏魔殿にやって来たそうだ。その時、ミカも連れてくるように言われたらしい。

 そんな説明を受けていると、ベロニカの後ろから堕天使のカトルとサンクが入ってきた。その手にはミカ用と思われる、小さいフリフリのドレスが握られている。


「この日のために最高のおめかしを準備したというのに。やはりミカ様にはこちらの赤い服が……」

「いいえカトル。こちらの青い服が着たかったに違いありません」

 それでタコは大体の状況を察した。大方、おもちゃにされるのを嫌がったミカが逃げ出したのだろう。

 さすがにレインが呼んでいるのを無視できるとも思えないので、伏魔殿に来てはいるはずだ。


「ベロニカちゃん達はギルドの機能に慣れてないからしょうがないわ。えーと、ウインドウのマップからこうやるとね……」

 マップには検索機能も付いているので、ギルドメンバーならすぐに見つけることができる。すぐにミカの表示がマップ上に現れた。


「あ、レイン部屋に入ったわね。どうせだからみんなで行きましょうか」

 どうせ暇だしと、タコはベロニカの案内を買って出る。それに、レインがミカたちを呼んだ理由も知りたかった。

 それなりに忙しい二人を呼ぶからには、それなりの理由があるはずだ。

 そして、しばらく歩いた先でタコはレインの部屋の扉を開ける。


「おや、タコ殿。ちょうど良い所に」

「あれ? エルダちゃん……あっ」

 そこには、元ウンディーネで現在ショゴス・ロードのエルダが、ミカを抱えたまま椅子に座っていた。その横ではエルダの契約者であるジュリオが心配そうに二人の様子をうかがっている。

 そして、当のミカはぬいぐるみ扱いが不服のようで、バタバタと手足を動かしていた。


「うがー! 離せー! 私はぬいぐるみじゃ……あふっ!? やっ! 尻尾はらめぇっ!」

「おーよしよし。良い子だからもう少し大人しくしておれ」

 しかし、エルダの方はミカを実にお気に召したようだ。両手以外にも追加の腕を生やしてミカをもみくちゃにしている。

 ミカも変幻自在の手に全身を揉まれるのは初めての経験であり、意外とマッサージの上手いエルダの手から逃れることができなかった。


「エ、エルダちゃん。その子……」

「ああ、先ほど迷子になっているのを拾っての。見かけん顔だがどこの子か? こういう子は初めて見るな、ふむふむ、すばらしい毛並みである」

 ミカを回収に来たタコだが、意外と本気の目をしているエルダに若干引いてしまい、強く出ることができない。

 だが、ジュリオの方は慣れたものなのか、横からエルダをたしなめた。


「エルダ、あまり無理に拘束しては可哀そうですよ。これから約束もあるのですから、解放してあげませんか?」

「良いではないかジュリオ。どのみちレイン殿が来る予定だったのだし、その時に引き渡そうと思っていたぞ。タコ殿が来て手間が省けたではないか」

 約束と言うから何のことかと思えば、エルダたちもレインから呼ばれたようだ。いったい何の用なのかとタコが疑問の声を上げる。


「レインが? 何で?」

「うむ。『神』が謝りに来るというから、この部屋で待っているように言われたのだ。それしても『神』とやらはまだ来んのか? ずいぶんと待たせおって」 

 言われてタコは思い出す。エルダと神の因縁を。天使はウンディーネたち精霊を目の敵にして、世界から排除しようと動いていたのだ。

 次々に住む所を失ったウンディーネがやっとたどり着いたのがナスキアクアであり、そこでもスプレンドルとは何度か問題が起きている。


「おっとっと、苦しかったかの? やれやれ、神とやらも『謝りに来る』と言っておきながら可愛げのない。お主の可愛さを分けてやりたいわ」

 ミカもそれに気づいたようでばつが悪い表情をしていた。しかも、こうなっては自分が『神』だと言い出しづらい。

 だが、それはとっくにタコが表情に出してしまっていた。


「む? どうしたのだ、タコ殿?」

 こうなっては誤魔化すことも不可能だと悟り、タコは正直に話す。


「えーとね。その子が元『神』で、現在はインプのミカちゃんです」

 たっぷりと30秒ほどエルダの動きが止まる。そして、彼女はミカを両手に抱えてじっとその顔を眺め出した。

 ミカは何を言えばいいのか分からず、冷や汗を流しながらただ時が過ぎるのを待っている。

 遂に、エルダが動いた。全身から複数の触手を出して、まるで捕食するかのようにミカの体に迫る。思わずミカはぎゅっと目をつぶり、現実から目を逸らす。


 そしてその触手たちは、先ほどの倍のスピードでミカの全身を撫でまわし始めるのだった。



「だーかーらー! 悪かったって言ってるでしょ! もう、離してちょうだい!」

「うむ、そうかそうか。我の気が済んだら離してやる」

 結局、エルダはレインが来たというのにミカを撫でまわし続けていた。タコたちは止めるのを諦めて、レインから今回の会談の目的を聞く。

 さすがに、この二人を引き合わせるのだけが目的ではないだろう。


「まあ、あれは放っておくとして。レイン、一体何でミカちゃんたちを呼んだの?」

「ちょっと待って、あと二人来るから」

 レインはウインドウを開いて何か確認している。どうやら時間を見ているだけではなく、何かの資料を読み込んでいるようだ。

 そしてすぐに部屋のドアがノックされる。レインが入室を促すと、ドラゴンのデスピナと、アルラウネのセシルが入ってきた。


「申し訳ありません、レイン様。遅くなりました」

「いいえ、時間ぴったりよ。忙しいところ悪かったわね。さて、集まってもらった理由だけど、そろそろはっきりさせておこうと思うの」


「何を?」

 タコが疑問の声を上げる。このメンバーの共通点がいまいちわからず、レインが何の話をしたいのか分からないのだ。

 特に、ジュリオはミカが元神だと聞いた辺りから現実逃避を始めている。そんな彼を、エルダが触手を伸ばして拘束しながら背中をさすっていた。

 そして、皆に対しレインが静かに告げる。


「『タコの正体と、何でこの世界に来たのか』よ」

 それは、分かっていそうで、分かっていない疑問だった。

 タコ自身が異世界転移など、『こういうこともあるよね』としか思っていなかったこともあり、深く考えていなかったというのもある。

 だが、レインとしてはそれが何より重要な問題だった。自身が持ってるカードを把握していなければ、勝負を仕掛けることもできない。


 今までは把握している能力だけで何とかなってきたが、最近ではそれすらも怪しくなってきた。

 特に、タコはゲームで『海神』というクラスを取得していたから神のような力を使えると思っていたのだが、それは完全に崩れている。


「まず、タコの正体だけど。それはこの世界の神。これは確定事項ね」

「そなの?」

 なぜなら、同様に『地母神』のクラスを取得したベロニカがタコと同じことができないからだ。実際、ウンディーネたちはベロニカのことを『神』だと認識していない。

 そして、タコと同様の存在とこの世界で遭遇したことで確証も得られた。それはもちろん、ここにいるミカのことだ。


「何言ってるのよ、どう見たって私の同類じゃない。むしろ、タコが今までどこにいたのか私が聞きたいくらいよ」

「その話は少し置いておくわ。次にミカ、精霊と天使、それに神は本質的に同じもの。この考えは間違ってない?」

 レインの質問に対し、ミカは少しばかり首をひねる。


「そうね……天使は精霊を参考に私の一部切り離して作った存在。極論を言えば力の差くらいしか違いは無い……かな」

「そうなのか? ならば、我らにも元となった神がいると?」

 そんな回答にエルダが興味を示した。彼女も自身が生まれた時のことは覚えておらず、気が付いたら精霊の世界を漂っていたのだ。

 それが誰かの意思で生まれたというのなら、気になるのも当然である。


「違うわ、精霊はほっといて勝手に増える存在。私はあっちの世界で他の神に会ったことはないけど、精霊は今でも増えてるでしょ?」

 しかし、ミカはそれを否定した。仮にそのような存在がいるなら、精霊を敵視していた頃のミカが放っておかなかっただろう。精霊の出元が無くなるのなら、それに越したことはない。

 そんなものは無いから、世界を征服した後に契約する方法を人々の知識から抹消することで、精霊の干渉を無くそうと考えていたのだ。

 もちろん、今となってはそんなことを考えていないが。


 エルダは少しばかりがっかりしたようだが、ミカのお腹を撫でまわせばすぐに機嫌が戻ったようだ。

 そして、レインは次の話に移る。


「それで、次にセシル。『祖霊召喚の儀』のことなんだけど」

「はい。恐らくレイン様の予想通りかと」

『祖霊召喚の儀』は元々、オクタヴィアを生贄として、ニューワイズ王の祖先である偉大な魔法使いを召喚しようとした儀式だ。

 それは、過去に失われた技術であり、セシルが再構築して復元したものである。しかし、彼も完全にその原理を理解していた訳ではなく、ドラゴンと協力して原理を研究していたのだ。

 そして、デスピナがタコたちに向けてその内容を説明する。


「儀式に使われた魔法はほぼ解析できました。まず、この魔法は対象となった人間の精神から得られる情報を元に、その者の先祖を探しだします」

「探すって言っても死んでるんでしょ? 何を探すの?」

 分かりやすく説明しているつもりなのだろうが、タコには前提とも言える知識が不足していた。

 死んだ人間を探すと言われても、何をどうするのかさっぱりである。


「幽霊よ」

「幽霊!? そんなのいるの!?」

 タコは素っ頓狂な声を上げた。まさか、ここにきて話がオカルトに跳ぶとは。確かにゲームではモンスターとして『幽霊』が存在したが、本物がいるとは思っていない。

 だが、答えたレインの方は至極真面目な顔をしている。それもそのはず、きちんとした根拠があるのだ。


「あらタコ、この世界には幽霊にそっくりな存在がいるじゃない」

「え? ……あ! 精霊!」

 目に見えないのに、そこにいる存在。確かのその二つはよく似ていた。


「この世界には魔力がある。魔力で構成された精神が、死後も残留するみたいなの。ただし、精霊の世界に行っちゃうから、ほとんどこちらの世界との接点を失うけどね。それに、そのうち魔力切れで消滅しちゃうみたい」

 さすがにタコの居た世界とまったく同じものではない。この世界に存在する魔力が、幽霊という存在を作り上げているのだ。


「魔力が強かった者ほど、残留する期間も長くなります。それを、逆に利用したのが『祖霊召喚の儀』ですな。巨大な魔力を持った精神ほど、呼び出せる可能性が高まるという訳です」

 精神には、遺伝子のように親から子へ引き継がれるものがあるそうだ。それを鍵として祖先を探し出し、引き寄せるのが『祖霊召喚の儀』である。

 そして、ニューワイズ王の先祖は、歴史に名を残したほどの魔法使いだった。ならば、その精神は長く残っているはず。

 しかし、儀式の結果はタコが示している。そうなった理由は一つしか考えられない。


「ひょっとして、儀式でタコ様が呼ばれたのは……」

「そう、オクトの精神にはタコと類似性があった。つまり、オクトはタコの子孫である可能性が高いの」

「え!? マジで!?」

 衝撃的な結論にタコが驚きの声を上げる。オクタヴィアも同様に、目を見開いてタコの方を見つめていた。


「恐らく、オクトの母方の家系でしょうね。タコの力が強すぎて、父方にいたという偉大な魔術よりも呼びやすかったというわけ」

 なるほど、儀式の原理が分かればタコが呼ばれた理由も理解できる。

 デスピナという、魔法に関してはこの世界におけるトップクラスの者が解析したのだから、その結論に間違いはないだろう。


「私が、タコ様の……」

「えーと、ごめんなさい。タコさん、その辺の記憶は一切ございません」

 オクタヴィアは未だ衝撃から抜けきれないのか、呆けたような目でタコを見つめていた。だが、当のタコは首をひねるばかりである。

 そもそも、タコとしては一番気になる点があるのだが、この場で言っても混乱を招くだけだと思って自重していた。

 そんなタコに対し、ミカが疑問の声を上げる。


「どういうこと? 自分の力は理解しているくせに、この世界にいた記憶はないの?」

「タコさん、こことは違う別の世界にいたの。むしろ、そこで生まれたと思っていたのよ」

 タコはその質問に対し正直に答えた。と、言うよりも、タコ自身が本当にそれ以外知らないのだ。

 そこへ、『実はおまえはこちらの世界出身だ』と言われても、ピンとこないのも仕方がない。


「何かしらの理由で世界を移動したのでしょうね。その理由までは分からないけど」

「さすがに、過去の文献でもタコ様のような存在は確認できませんでした」

「ドラゴンも知らないくらいですから、よほど過去のことなのでしょうね」

 レインもタコが困惑する理由は知っているはずなのだが、あえてそれを無視して話を進めていた。

 その後も細々とした質問が出るも、それは今度の検討事項として保留することとなる。


「ふむ、とりあえず今日はここまでね。認識は共有できたと思うから、何か分かったら私に連絡してちょうだい」

 レインとしても、今日だけで全ての謎が解けるとは思っていない。情報の共有ができれば、それぞれが違った視点から情報を仕入れてくれるだろう。

 だが、そんな中でタコだけは神妙な顔をしていた。


「うーん、レインとオクトちゃんは残ってもらえる? あ、アイリスも呼んでちょうだい」

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