37話 偉大だった祖父
私の祖父は、偉大だった。
幼い頃から神童と呼ばれ、国立の魔術学校を首席で卒業し、発表する論文は次々に高い評価を得る。
教え子はみな優秀な魔術師となり、様々な分野の高名な友人を持ち、慈善事業にも多額の寄付を出す。
祖父は、仕事も生活も、人柄も能力も、評価も名声も、何をとっても非の打ち所がないと言われる人物だった。
だが、その名声は妻が亡くなった時から陰り始める。彼は自宅に引きこもり、全ての活動を停止してしまったのだ。
愛妻家としても有名であった祖父がそうなることは、ある程度許容されていた。しかし、それが年単位となれば、周囲の者も黙っていられない。
仕事、旅行、パーティー。様々な理由を付けて彼を表に出そうとするも、答えはいつも拒絶であった。
祖父は自宅からは出ようとせず、生活はすべて無口な執事に任せている。終いには警備員を雇って、自宅に近づくものを強制的に排除するようになっていた。
それでも、祖父の家に定期的に訪れる人物がいる。しかしそれは、彼には似つかわしくない裏社会の人間と噂される人物だ。
祖父はその人物を通して様々な書物を国中から集めていた。しかも、それらはいわゆる『黒魔術』や『禁忌』と評されることも多い、怪しい書物ばかりである。
その頃から祖父に新たな噂が追加される。『亡き妻を復活する魔法を研究している』。『妻を失った悲しみに悪魔を召喚した』。『すべてに嫌気がさし世界を滅ぼそうと企んでいる』といったものだ。
そして、その噂の真相は、全てが正解である。
なまじ優秀な祖父の頭脳は、最愛の妻を失うという理不尽を解消する手段を大量に用意した。
その一つ一つを検討するために、彼はすべての時間を自分の為に使うようになる。そのための必要な金など、彼にはいくらでも用意できた。
既に祖父の息子夫婦、私の両親は祖父との交流を避けていたが、私は以前から内緒で交流を持っていたのだ。
まだ祖父が正気を保っていたころ。私はよく『ローズはおじいちゃんにそっくりね』と言われていた。それは、容姿の話だけではない。
同年代の友人が外で元気に遊んでいる中で、私は祖父の部屋で魔法の話ばかり聞いていた。
彼が忙しいと察した時は無言で本を読み漁り、時には研究の手伝いを買って出たほどだ。
そう、私は魔法を愛していた。
それは、私が魔術学校に通うようになってからも変わらない。時折、祖父の家を訪れては、正気では考えられないような研究を真面目に検討していた。
本来、祖父の望みなど、成果が出るまでに寿命を迎えるものだ。ところが、彼は天才だった。
過去の資料から必要なものを見つけ出し、少しずつではあるが禁忌にたどり着こうとしている。
しかし、それを国が止めた。
祖父が必要とする魔術に使用する材料は、非合法な手段でしか入手できないものも多い。もちろん、それが露見されるようなヘマは起こしていない。
ところが、国は祖父が思っているよりも臆病で強気だった。『国を乱す恐れがある』として、彼を拘束することを決定したのだ。
祖父を拘束するため国が部隊を出動させる前日、私は彼の家を訪れていた。祖父は既に出立の準備を済ませており、むしろ私が来るのを待っていたようだ。
「ひっひっひ、ローズよ。わしはこの国を捨てる。残ったものは好きにしろ……と言いいたい所じゃが、国が押収するじゃろうな。適当に2つ3つ持っていくくらいにしておけ」
「そう。おじいちゃん、元気でね」
正気を失ってからというもの、祖父は上品なのか下品なのか、よく分からない性格になってしまった。
あまりに多数の手段を試行錯誤した結果、精神が分裂でもしてしまったのかもしれない。
もし、祖父の精神が粉々に砕けるほどのショックでもあれば、以前の彼に戻るのだろうか? まあ、そんな都合のいいことが起こるわけもないか。
そして、私が何を持っていこうかと考えている間に、祖父、セシルは姿を消していた。
◆
ある日、私は国王の妃であるベアトリス様から呼び出された。彼女は元々ニューワイズ王国の第一王女であり、いわゆる政略結婚というものだ。
それなりに魔法の才能を持っている彼女であるが、それがこの国で発揮されることはなかった。
そもそもこの国、オルドレッジ魔法王国とニューワイズ王国との仲は『微妙』だ。彼の国がこの国から分裂してできた国であるため、それも当然である。
しかし、関係が冷えてるかと言えばそうでもない。向こうは今では三大国家とも称される大国だ。反抗したところで良いことなど何も無いだろう。
それに、魔法を戦争の手段とすることを非であるとしたこの国は、魔族に対抗するだけの戦力を有していない。結局は他国の助けを求める必要がある。
マジックアイテムの質や生産量なら大陸一とも言える自信があるが、それで稼いだ金を全く知らない国に貢ぐよりも、ある程度は気心の知れる隣国に回すことを選択したのだ。
そんな国から来た彼女の扱いが、腫れ物のようになるのも仕方がないだろう。それでも、彼女は天然なのか戦略なのか、穏やかで無害な人物と評されている。
そして、何故か私のように微妙な立場の人間ばかり周囲に置きたがるのだ。『王女のお気に入り』という事で、余計なトラブルが減るのは嬉しいことであるが。
実際にそれが彼女の戦略の一つなのだろう。自分で言うのも何であるが、彼女の周囲にいる人物が皆、優秀なのも確かだ。
「ローズちゃん、ニューワイズ王国に行ってきてちょうだい」
「は? 何を言ってるんですか?」
彼女が頓狂なことを言うのは今に始まったことではない。だが、今日のそれは一段と私の予想を飛び越えていった。
仮にも微妙な関係の国に行くなど、それなりに準備も時間も必要になる。
「うちの王様……あ、今ではパトリックくんね。彼が王位を継いだこともあって、もろもろの話があるらしいのよ。だから、誰か来て欲しいんだって」
「それは外交官の仕事でしょう? 私のような研究員を呼ばないでください」
それに、ただでさえ私は自分の研究で忙しいのだ。余計なことに時間を費やしたくはない。
私の拒否に対しベアトリス様は、人差し指を顎に当てて困ったようなそぶりをしている。しかし、その頭には既に、私の逃げ道を塞ぐ手段が確立されてるような気がした。
「でもね、向こうから指名があったのよ」
「私が? ……なんでまた?」
「あなたのおじいちゃん。セシルさんが亡くなったんだって」
「……は?」
やっぱり。思ったとおり、私には逃げ道など無かったのだ。
◆
祖父の葬儀は、かなり小規模なものだった。
先日、王位継承の儀式があったため、大々的な弔事を行いたくなかったこと。それに、本人が大騒ぎにしないことを希望していたそうだ。
会場には彼の部下だったという魔術師が数人いる程度で、ほとんどの人間は儀礼的に挨拶をしてその場を後にしていた。
そして、私が祖父に別れを言う番になる。
立場上、私の訪問は内密なものとなっていた。そのため、会場での扱いは他の者たちと変わりはない。一目、棺の中にいる祖父に面会して花を添える程度のものだ。
棺の中に横たわる祖父は、当然ながら記憶のものよりも老けていた。だが、最後に会った時とは明らかに印象が違う。
いわゆる『付き物が落ちた』と言えるような、穏やかな顔をしていたのだ。
しかし、そんなものは私の勘違いに過ぎない。ここにいるのはただの抜け殻だ。付き物など、きっと彼が一緒に持って行ったのだろう。
私は、他の者よりほんの少し長い程度の面会を済ませ、その場を離れた。
「失礼、あなたがローズ嬢だろうか」
「はい。そうですが……え? パトリック王子!?」
別れが済めば、もうここにいる必要は無い。早々に会場を後にしようとしていた私に、なんと、パトリック様が直々に話かかけてきた。
……やば、今は王子じゃないんだ。
「し、失礼しました。パトリック王。この度はご配慮をありがとうございます」
「いや、そんな事は気にしなくていい。それが彼の願いだったからね」
私の失礼に対し、パトリック様は穏やかに微笑んでいる。だが、日ごろの疲れもあるのか、その目には若干の陰りがあるような気がした。
そして、私に話しかけてきたのはただの挨拶ではなく、他の理由があるらしい。はて、ベアトリス様の話では、情報交換は明日のはずだが。
「実はセシル老からもう一つ、頼まれていることがあるんだ。彼の研究室に来てもらえないか?」
「私を研究室に? 何か渡すものでもあるのでしょうか?」
まさか、何か価値のある物を残してくれたのだろうか?
さすがに他国の資産を勝手に持ち帰ることはできないだろうが、祖父が残したものというのは興味がある。
「いや、彼の願いは『孫を自分の研究室に入れて欲しい』。ただそれだけだ」
ん? 部屋に入るだけ?
いや、あの祖父が意味も無くそんなことを言い残すはずもない。
……あ、なるほど。これ、表向きは『部屋に入れるだけ』と言っているが、『実は持って帰っていい』という方便だろう。
「分かりました。すぐに伺います」
私は、喜んで王の提案を受け入れた。
◆
「これが、祖父の研究室……」
「しばらくは自由にしてくれ。何かあれば外にいる者に言えばいい」
私は想像よりも整理された研究室に案内された。国にいた頃、異常な研究に没頭していた時には考えられないほどである。
ま、そんなことはどうでもいい。さてさて、祖父はいったいどんなお宝を残してくれたのだろうか。
「……おじいちゃん。何で私を呼んだのかしら?」
何も……ない?
残っているのは何処にでもあるような資料ばかり。なまじ整理されている分、何かを隠す余地など無いかの様だった。うーん、どういうことだろう?
えーと、あと見てないのはこの本だけか。手に取って開いてみると、一枚の写真が滑り落ちる。
「お婆ちゃんの写真……?」
その写真は、祖父の部屋で何度も見た物だった。これは、祖母が若い頃の写真に違いない。そして、この本は祖父個人の日記の様だ。
しかし、内容はとりとめなない日常の事しか書かれていない。それこそ、日々の食事や道端の花とかそんなものばかりだった。
だが、私はそんな文章にちょっとした違和感を覚える。なんというか、内容が祖父の趣味じゃないような……?
「これは……暗号文?」
そうだ。これは彼が国でよく使っていた暗号だ。
多分、知っているのは彼と私だけ。えーと、こことここの文字だけ拾い上げて……
ん? なんだこれ? 合言葉かな? まあいいか、ここまで来たのだからやってみるに越したことはない。
私は部屋を出ると、従者と思しき人物にパトリック様を呼んでもらう。すぐに彼はこの部屋に戻ってきてくれた。
「パトリック様、『真実を教えてください』」
「……そうか、分かった」
複雑な顔でパトリック様が答える。
彼の表情にいわゆる『同情』が含まれていることなど、その時の私は気付かなかった。
◆
パトリック様は私を別の場所に案内する。それは、とある屋敷の地下にある不思議な扉だった。
何かの冗談なような気もしてきたが、パトリック様の深刻な顔を見れば、この先にとてつもないものがあるのは間違いない。
そして、ついにその扉が開かれた。
「デュフフフ、この程度では話になりませんねぇ、不純物が多すぎます。ちゃんと違いを味わって確かめてください」
「くっ、分かりました、再精製します!」
ぐるぐる眼鏡を付けた妖精が、黄色く粘度のある液体を舐めている。相手は魔術師と思わしき中年の男性だ。
ぱっと見でも上下関係があるようで、妖精は偉そうに魔術師に対してダメ出しをしている。
「レイン様、北東の森より新たなサンプルが届きました! 種類ごとに分類したものがこちらです!」
「ふむ、この種類は初めてかしら。これとこれ、それにこいつも栽培に回してちょうだい」
別の場所では全身鎧を着た人物が、複数の植物と種を分類していた。兜でその顔は見えないはずなのに、とてつもない真剣さが伝わってくる。
だが、私が見てもその植物は特殊な物ではない。いったい、何がこの人物をそうさせているのだろう。
「はーい、皆さん。追加の賢者の石ですよー」
今度は別の妖精が大量の瓶を運んできた。その瓶には赤く光る水銀のようなものが入っており、周囲にいる魔術師たちが目の色を変えてそれに群がっていく。
……は? 賢者の石?
「これは、いったいなんなんです?」
「……なんでも、ハチミツに関する研究をするならば、賢者の石を自由に使っていいそうだ」
ハチミツ? 賢者の石? それにあれは妖精? 鎧の人は何者? ここは何かの研究所なの?
私の頭は疑問でいっぱいになる。しかも、そこに新たな爆弾が投下された。
「おお、ローズではないか! やはり気づいてくれたか」
私に声をかけてきたのは、若い女性。
だが、その肌は緑色をしており、明らかに人間ではない。しかも、下半身は花そのものになっており、根っこが触手のようにうごめいて地面を歩いていた。
しかし、その顔は明らかに先ほど見た写真にそっくりだ。
「……お婆ちゃん? いや、私のお婆ちゃんはアルラウネなんかじゃなかったわよね……?」
そう、それは祖父の研究室で見た、若い頃の祖母そのものだった。だが、あの写真はかなり古い物のはずだ。
目の前にいるアルラウネは、私と同じくらいの年齢にしか見えない。
「あ、ローズちゃん。お疲れ」
「え? ベアトリス様? なんでこんなところに?」
「私はフレイヤちゃんからお呼ばれしたの。転移の魔法って便利ね」
いや、転移魔法? そんな魔法が使えるのは国に数人しかいないでしょう。しかも、この国までどんだけの距離があると思っているんです?
頭の中で突っ込みが追い付かない私に、さっと手が差し出される。
「あなたがセシル老のお孫さんですか。第二王女のフレイヤです、よろしく」
私はとっさにその手を握ってしまう。予想よりも冷たい手に一瞬ビクッとしてしまうが、フレイヤ様はいたずらが成功した子供のような笑みを浮かべていた。
その笑みは同姓でも思わずドキッとしてしまうほどの妖艶さがあり、赤い瞳からは怖いほどの美しさを感じる。
しかも、その口からは吸血鬼のような牙が……
「レインはどこ!? レインの馬鹿はどこ!?」
突然、ドアが吹き飛ばされて私の思考は中断された。
その犯人は両手両足が触手になっている、紫色の肌をした人物。……いや、人ではなく魔族だろうか。
どうやらかなり怒っているようで、部屋の中にいる全身鎧の人物へ突撃する。だが、全身鎧の方は特に焦った様子もなくそれを迎え入れた。
「あらタコ、遅かったわね」
「いやがったわね、喰らえ! <酸噴射>!」
「何するのよ、鎧が錆びるじゃない」
「私は心が錆びたわよ、そのお返しじゃー!」
そして、触手の魔族が全身鎧に対して魔法を放つ。だが、全身鎧はその姿が掻き消えると、一瞬で一メートルほど離れた場所に姿を現した。
その後も魔族から次々に魔法が放たれるも、全身鎧は器用にそれを回避していく。
「おお、転移魔法を一瞬で!?」
「いや待て、二度目の攻撃では自分の位置を変えていなかったぞ?」
「あれは<瞬間無敵>だね。一瞬だけ別の次元に逃げてるの」
いつの間にか、二人の攻防を魔術師たちが集まって観戦していた。それを妖精が解説している。
すでに脳の容量がパンクした私は、その場に佇むことしかできない。
「……あれ? この娘は誰?」
しばらくして落ち着いたのか、魔族がようやく私に気づいたようだ。見ず知らずの人物がいることに疑問の声を上げるが、とっさに私の口からは言葉が出ない。
そんな私を、横にいたアルラウネがフォローする。
「タコ様、こちらは儂の孫のローズでございます」
「「儂の孫っ!?」」
二つの叫び声が、部屋中に響き渡った。
◆
「本当に、セシルおじいちゃんなの?」
「そうじゃ。レイン様に力をいただいての」
ひとまず場所を変え、貴賓室のようなところで私はお茶をいただいている。しかし、そんなものを飲む余裕も無く、私は祖父を名乗るアルラウネに問いかけていた。
「レイン! 私に無断でなんて事をしたのよ!」
「私はちゃんと、『女の子』を悪堕ちさせただけよ? ハチミツの生産に、植物系の子が欲しかったしね」
テーブルの反対側では、先ほどの魔族と全身鎧がいまだに言い争っている。えーと、魔族の方がタコ様で、全身鎧の方がレイン様だったか。
何でも、二人ともすさまじいほどの魔法使いらしい。しかも、『悪堕ち』と称して人を異形に変える力を持っているそうだ。
「セシルは女の子じゃないでしょうか!」
「ええそうね。でも、この体は間違いなく女の子よ」
そうそう、肝心なのはそこである。
いくら異形に変えると言っても、性別まで変えられるものなのだろうか。二人の話を聞いている限り、そんなことはできないようである。
そこに祖父が説明を加えた。
「フレッシュゴーレムの技術と、賢者の石を応用して本物の人間を造ったのです。もちろん、肉体だけですが。そこに、私の精神を憑依させました」
うん。とんでもないこと言ってるよね、この祖父。
人間を造るって完璧な禁忌でしょ。それに、精神の憑依だって、そんなのが出来たら魔法の革命だよ。実質、不死みたいなもんじゃん。
それに、タコ様の方は何かの美学があるようだ。祖父のやったことが気に入らないようで、ぶつくさと文句を言っている。
「いや、でも、タコさん的にTSジジイはちょっと……」
「肉体的には女の子でしょ? それに、魔術の為には自分の肉体すら捨てられる強い意思。何も問題は無いんじゃなくて?」
レイン様の言葉はどうやら正論のようだ。タコ様は反論しようと考えているようだが、突然、爆発したかのように触手を振り上げる。
「うがー! もう、勝手にしやがれー!」
しかし、結局は言い返せないタコ様はふてくされて黙ってしまった。いまだ触手を組んで飲み物をぶくぶくと泡立てているが、暴れだすほどの気持ちは落ち着いたようである。
「おじいちゃん、それでよかったの?」
祖父の願いの一つは、祖母の蘇生だったはずだ。確かに肉体的には祖母がベースのようだが、これは蘇生とは言えないだろう。
だが、そんなことは想定済みだと祖父が答える。
「何を言っておる、儂は何も諦めておらんぞ? 肉体は完璧に作れた。後は精神をどうするかじゃな。寿命という縛りがなくなった儂に、恐れるものなど何もないわい!」
祖父は満面の笑みを浮かべていた。確かに、彼が禁忌と言われていたものを成し遂げたのは事実だ。祖父にはもう、時間さえあれば解決できない問題なんて、存在しないのかもしれない。
……でも、その顔でその口調は止めてくれないだろうか。
「ねえローズちゃん、こういうのキモイわよね! この世に存在しちゃまずいわよね! あなたなら分かってくれるわよね!」
「え、あっはい」
すると、タコ様が私の方を向いて声を上げた。反射的に正直に答えてしまう。
「良し! ならばあなたも悪堕ちしましょう! あなたがこのおじいちゃんを闇に葬るのよ!」
タコ様が私の手を掴んで目を見つめてくる。それはつまり、私にも人の体を捨てろという事だ。
それをそんな気軽に言ってくるのも恐ろしいが、私がそれに魅力を感じているのも事実である。
「……少し、考えさせてください」
正直、私は祖父が羨ましかった。今の彼は、以前とは比べ物にならないほどの力を持っている。
それでも、祖父のように即座に人を捨てられるほどの狂気を、私は持ち合わせていない。
いや、でも、やっぱり私も……
「ま、この国の情報を入手する人材は必要よね。ローズちゃんなら申し分ないか」
何か恐ろしいことをベアトリス様が口走っている。
しかし後日、この研究所には新たなアルラウネが所属することとなった。
今回で2章はお終いです。3章の開始まで1ヵ月ほどお待ちください。
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