40話 極寒のダンジョンでの採掘(前編)
「よし、ダンジョンに突入するぞー」
いつものように、魔法陣に魔力を込めて転送魔法を発動させる。そろそろこの意識が飛んでいく感覚も癖になってきたかも……
そして意識が戻ると、松明が並んでいる暗い通路に転送されていた。
「どうだ? カオル的にはこういうのがダンジョンっぽいダンジョンになるんじゃないか?」
ミリアちゃんの言葉にうなずく、そうそう、ゲームやる日本人のダンジョンのイメージといったらこんな洞窟の中だよね。
「それでは採掘場に向かいますわよ、採掘物を入れておく小型のバッグを渡しておきますわ」
ユニちゃんからポーチぐらいの大きさのマジックボックスを受け取る。ベルトが付いてるので腰に付けてっと。
そうしてしばらく歩いていくと、どんどん冷気と魔力の流れが強くなっていく。まるで冷凍庫の中に居るみたいな寒さだよ、これは防寒具フルセットじゃないと採掘どころじゃないねえ。
そんなことを思っていると、開けた空間にたどり着いた。どうやら他の人が既に採掘を始めているようでカーンカーンと金属と鉱物がぶつかる音が聴こえてくる。
「それじゃあ各自採掘を始めてくれ、あまり離れすぎないようにな」
ミリアちゃんの一声でみんながそれぞれの方向に採掘に向かっていく、わたしも行かなくちゃ。
あまり人が居ない場所を選んで、昨日買ったつるはしでそれっぽい場所を掘っていく。つるはしに何か魔法が掛かっているのか、それともここの鉱物が柔らかいのか、特に力を込めずとも石が割れていく。
しばらく掘っていると、つるはしが硬い部分に当たる。砕けた部分を取り除いて見てみたら、銀色に光っていた。どうやら鉄鉱石なのかな?
周囲を掘り進めていき、鉄鉱石を取り出す。手のひらサイズというにはちょっと大きいぐらいの大きさだった、とりあえずポーチにしまっておく。
それからしばらくの間いろんな所に行っては採掘して、を繰り返しいろんな大きさの鉱石を掘り出していく。鉄鉱石の他にも氷の魔石の塊や小さいサイズだけど金鉱石も見つかったのでお財布の足しになればいいな。
次はどこを掘ろうかな、と考えていると突然頭の中に聞き覚えのある声が流れ込んでくる。
「聴こえますか……かおるん、今あなたの心に直接語りかけています……」
この声は……クリスさん? 左右を振り向いてみるけど姿は見えない。
「や、姿を顕現してないから見えないよん。今日はかおるんにおすすめ採掘スポットを教えに来たのさ」
クリスさんの言うことが本当なら助かる、けどわたしにそこまで手助けしてくれるのは何故だろう?
「いや、異世界転移のときに言ったでしょ? 君を見てると面白そうだなって。まあ美少女女神様の気まぐれフルコースだよん」
……やっぱり、クリスさんノリが軽いなぁ。お硬いのよりは親しみやすくて好きだけども。
「それじゃあ教えるね、右に200歩、下に256歩、左に63歩……」
それ、某人気ゲームで聞いたことあるような……
「ってのは冗談ね! 左にしばらく進むと2本の分かれ道になってる場所があるから、右の道を進んだ先の行き止まりの壁を掘ってごらん」
「それじゃあ伝えることは伝えたし帰るね。かおるんばいばーい」
……行っちゃった、教えてもらった場所に行ってみよう。
言われた通りに進んでいくと、分かれ道が見えてきたので行き止まりまで進む。
そして壁を掘っていくと、なんと拳大の大きさの金鉱石が見つかったの!
これ、確かにやばいやつかも……わたしはこういうものの価値に疎いからあれだけど、ミリアちゃんなら目利きがきくから帰ったら見てもらおう。
大きな空間に戻ると、ミリアちゃんが慌てて駆け寄ってくる。
「カオル! 無事だったか?! 姿が見えなくなったから心配したんだぞ?!」
「ごめんなさい、つい採掘に夢中になってて……」
「まあ、無事なら良いんだ。けど今後は止めてくれよな」
ミリアちゃんには悪いことしちゃったなぁ。
そうだ、せっかくだしさっき取れた金鉱石を見てもらおう。
「ほんとにごめんね。ところでミリアちゃん、鑑定してほしい鉱石があるんだけど……」
「おう、なんだ? 見せてくれ」
ポーチから金鉱石を取り出すと、ミリアちゃんが血相を変えて驚いた表情で言う。
「カオル、どこでこんな物掘ってきたんだ?! こりゃ金貨100枚以上の価値があるぜ」
えっ、そんなに?!
そしたらミリアちゃんの声に驚いたユニちゃん達がこちらに向かってくる。どうやらクリスさんの言ったことは本当だったみたいだね……




