2話 ORCA
やや胸に張りがありサイズ感のあっていない真っ白なシャツと垂れ下がるネクタイ、白く張り付くようなスラックスが曲線美を目立たせる。髪をなびかせるように、女がファイルや資料に端末を持って歩いている。
そこに、迷彩を着込んだ黒人の男が話しかけた。
???「よぉ、エメラルド!」
エメラルド「お前は……そうか、ORCAの隊長はお前はだったな、ブラック」
???「ベネットでいいさ。まぁブラックも分かりやすくていいけどな、HAHAHA」
エメラルド「相変わらずだな」
ベネット「フレンドリーさでネイビーシールズに入っただけはあるだろ?」
エメラルド「呑気に喋ってるいられるのも今日が最後かもしれんぞ」
ベネット「そうなんだよなぁ。ウクライナの侵攻完了と新ソ連設立、UHKの台頭、第三次世界大戦だってメディアは大騒ぎだ」
エメラルド「新ソ連が介入してくる前にUHKをシメる。今度のヒトラーには、自殺などさせん」
ベネット「前のって、第二次世界大戦?へぇ、あのチョビ髭の最後って自殺だったのか」
部屋に入ると、机の上にホログラムが現れる。暗い部屋の長机は全てパネルでできており、地図や情報が乱立する。青白いグラフィックの光のなか、長机には既に座っている人物らがいた。
???「待っていたぞ、指揮官殿、隊長殿」
???「うわぁデッカ~い」
黒人の男は二人と握手を交わした。
エメラルドが、長机を操作して、座る各員にデータを渡した。
エメラルド「これよりブリーフィングを始める。私は此度設立された特殊部隊、ORCA特別分遣隊の指揮官を務めることになった、エメラルド・アップルビーだ。前任では、第22SAS連隊本部中隊オペレーター、また特殊偵察連隊(SRR)連隊にて諜報活動や対テロ任務も行っていた」
???「SRRって、間違えて一般人撃ったところじゃん。大丈夫?」
エメラルド「2005年のアレか。その時、私はまだ産まれてはいないだ。あんなミスをするバカどもと一緒にされては困る」
???「じゃあ、今30台くらいだったり?」
エメラルド「私の紹介はここまでだ、次、隊長、自己紹介を」
黒人は立ち上がる。影が背中から出て、その大きさがはかりしれる。
ベネット「ゾンビものだとだいたい生き残るタイプの男、ベネット・ブラックだ。苗字分かりやすいだろ、宜しくな!元、アメリカ海軍特殊部隊海軍特殊戦グループ2チーム2隊長。ヨーロッパを担当する部隊だ、ORCAの設立はアメリカ主導だから、ヨーロッパのこと詳しいってのもあって、選ばれたんだろうな。HAHAHA!」
???「元?現役ではないでござるか?」
ベネット「歳がよ、もう39だぜ」
???「ネイビーシールズの年齢上限は28だっけ?」
ベネット「現役世代より、俺の方が強いんだってよ。若いのに任せたいんだけどなぁ」
エメラルド「次、そこのサムライ」
刀を携え口元を隠した、後ろで髪を束ねた男が立ち上がる。
???「剣客、那東晴翔。日本人」
ベネット「NATO!?日本人の名前とは思えないな」
那東「……」
ベネット「……えっ、続きは?」
那東「以上でござる」
ベネット「はぁ!?そんなワケねえだろほらこう、なんとか……あぁ日本ってことは、レンジャーとかか?日本好きだぜ、合同訓練したことあるんだが、射撃が上手い、話も上手い、レーションも旨かったぜ。身体小せぇのに、すげぇよ」
那東「ただの傭兵でござる」
ベネット「エメラルド……事前の話だと、ORCAは近年で最も活躍した人材が集まるって話じゃ」
エメラルド「そうだ、そしてコイツは確かに活躍している」
ベネット「?」
エメラルド「まず、現在の世界の状況を確認するぞ」
長机の上に、ホログラムで地球が出来上がる。ロシアの部分が赤くなった。
エメラルド「2022年、ウクライナ侵攻を開始したロシアはアメリカ・NATOの支援も虚しく、2040年に侵攻を完了し、ウクライナを完全に手に入れた」
ベネット(実際は米露対立を激化させないためにそんなに支援してなかったってのは、この際黙ったままってのが、ホワイトハウスの考えなんだろうなぁ)
エメラルド「直後、アガフォン・ユスーポフと名乗る人物が政権を握る。アガフォンは古き善きロシアを再結成する意味を込め、国名を【新ソビエト社会主義共和国連邦】と改名、報告の上がる限りでは、中東地域での軍事支援が確認され、サハリン(樺太・千島列島)経由での日本への軍事攻撃も懸念されている」
???「そこへ追加でやってきたのが、UHKだねぇ~」
エメラルド「ヴェロニク、先に自己紹介を済ませておいた方が説明が楽だ、頼む」
ヴェロニク「はぁ~い。ヴェロニク・デカルト22歳、趣味はボディケアとネイルとSNS。生まれはパリの、Hカップ!」
ヴェロニクはやや短めの金髪で、ボディスーツと着丈の極めて短いダウンジャケットを着ている。胸元は開けられており、ホクロが一つある。
ベネット「で、何をしてきたんだ?マタ・ハリ的な?」
那東「美人局の類いなのは間違いないだろう」
ヴェロニク「フランスに攻め込んできたUHKへの破壊工作をしまくった!撃破実績、ビークル合計80台~」
ベネット「この中で一番実績あるんじゃねぇか?」
那東「魔王?」
エメラルド「新ソ連が発足した直後、ドイツで軍が特定の政権に掌握され、なし崩し的に政権が交代。Unternehmungslustig HakenKreuz(意欲的な鉤十字)、通称UHKがドイツを牛耳った。鉤十字をシンボルにナチス式敬礼を復活させたあのゴミどもは、徴兵令を強いて国民を兵士にした。断りを入れる国民は秘密警察に消されるため、拒否権はない。奴らはポーランドとフランスへ侵攻を開始し、瞬く間に占領した。不思議と奴らの士気は高く、信奉者は多い。その原因となっているのが……」
机の正面にあるモニターに、映像が映し出される。金髪で緑の瞳を持つ、黒い軍服を着た少女が、ナチス式敬礼をする軍人や民主の中を歩き、敬礼を返しながら、演説のために用意された台へ立つ。
エメラルド「現ドイツの首相にしてUHKの指導者、アデリナ・ヒトラーだ」
映像のなかで少女は再度、ナチス式敬礼を行った。そして演説を始めた。




