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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第5章

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ラディンが来る

そんなある日、北の領地にひとりの男がやって来た。

「……長かった」

ぽつりと呟き、男は空を見上げる。

「とりあえず、挨拶だけして帰ろう」

陽光を受けて輝く金色の髪。ラディンだった。

彼はそのまま城を訪ねる。最初に姿を見せたのは、エドモンドだった。

「疲れているようだが、無事に戻ってきて何よりだ」

ラディンはかすかに目を細める。

「……そうだな。色々あったからな」

そう言って、彼は遠い目をした。

「今日は疲れているだろう。話も聞きたいし、泊まっていかないか?」

エドモンドがそう言うと、ラディンは小さく肩をすくめた。

「まあ、1日くらいならな」

そのとき、廊下の向こうから足音が近づいてくる。

「あ、ラディン。お帰りなさい」

現れたのは、リリアーナとラニアだった。

ラディンはふと足を止め、ラニアを見つめる。違和感が、胸に引っかかった。

……瞳の色が。

緑ではなく、金色に見える。いや、緑か? だが確かに、光の加減では説明のつかない色がそこにあった。

「エドモンド。ラニアの瞳が、金色に見えた気がしたのだが」

ラディンが言うと、エドモンドは首を傾げる。

「え? 俺には緑に見えるが。リリアーナは?」

名を呼ばれ、リリアーナはラニアの顔を覗き込んだ。

「……あれ? 何か、金色に見える。緑だったよね」

ラニアはぱちりと目を瞬かせ、少しだけ困ったように笑った。

「大きくなったから、魔力の影響が瞳に出てるみたい。魔力のとても強い人や、本質を見抜く人には、多分、金色に見えると思う。今はね……」

「……そうなのか?」

エドモンドは戸惑いを隠せないまま呟く。その横で、リリアーナは言葉を失っていた。

ずっと近くで見ていたはずなのに。誰よりも傍にいたはずなのに。

――気がついていなかった。


「まあ、ラニアはラニアだし。変わらないよね」

内心を殺してリリアーナは言った。

……それは、問題なのではないか?ラディンは一瞬そう思ったが、すぐに考えを改める。

相手はラニアだ。常識から逸脱していても、今さら驚くことでもない。

「旅では、何かあったの?」

リリアーナが問いかける。

ラディンは小さく息をついた。

「……行きは、途中でセラフィーネが病気になった。結局、二週間くらい足止めになったかな」

「師匠が? 珍しい」

リリアーナが目を丸くする。

「あと、島から出ようとしたときに、何か船が壊れたらしくてな。修理待ちをしていた」

淡々と語るラディンに、エドモンドは苦笑しながら肩を叩いた。

「……大変だったな」

「それから――島を出るときに、セラフィーネが妙なことを言っていてな」

ラディンが思い出すように目を伏せると、リリアーナが身を乗り出した。

「何て?」

「――もしこの島を捨てて、あなたを追って行ったなら。そのときは、どうか受け入れてほしい、と」

言葉を選びながら、ラディンは静かに答える。エドモンドが、ごくりと喉を鳴らした。

「……何て、答えたんだ」

「島の王女には、無理だろう――そう言った」

「……そのあと、セラフィーネは何か言っていたのか?」

エドモンドが慎重に尋ねる。

ラディンは少し考えてから、肩をすくめた。

「ええと。それはいいから、受け入れるのか、と言っていたな。まあ、絶対に無理だから、いいぞ、と返したが」

その言葉を聞いた瞬間、エドモンドは口を閉ざした。沈黙が落ちる。

……俺でもわかる。

それは、いちばん言ってはいけない言葉だ。

エドモンドは、口には決してしなかった。


いつの間にか会話の輪に加わっていたオルフェウスが、ひどく沈痛な面持ちで口を開いた。

「ラディン。男に二言は無い、って知ってるか?」

その声音には、妙な重みがあった。

「……いや、彼女は来ることは無いだろう」

ラディンはその圧に少し、身をひいた。



少し離れた場所では、セリウスとローデンがさりげなく聞き耳を立てている。

……突っ込みどころが、多すぎる。

ローデンはふと視線を動かした。

ラニアが、ごく自然にラディンのすぐそばに立っている。

それが、なぜか妙に気にかかった。


セリウスとローデンは、自室へと戻った。

「ラニアの瞳って、緑だよね?」

セリウスが何気なく口にする。

――俺には、最初から金色に見えていた、と言うべきか。ローデンはそう思ったが、口には出さなかった。

「このあたりの人は、魔力で瞳の色が変わる種族だったりするのかな」

独り言のようなセリウスの言葉に、ローデンの胸中はわずかにざわめく。

――違う。あれは、人外だ。人ではない。

だが、ローデンはそのまま無言を貫いた。

その沈黙を別の意味に取ったセリウスは、ふっとため息をつく。

――あーあ。そんなに、あの男とラニアが親しげだったのがショックだったのか。

ラディン、と言ったか。確かに整った顔立ちだった。あれでは、ローデンに勝ち目はない。ほぼ、絶対に。

いや、もしかすると兄妹か血族かもしれない。そうであれば、まだ望みはあるのか。

頑張れよ、とセリウスは心の中でひそかにエールを送った。

その夜、セリウスはローデンに内緒で手紙を出した。

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