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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第5章

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ラニアのお礼

ロキは、ラニアの服の裾を咥えるようにして、先ほど掘った穴の方へ引いていった。

ラニアは素直にその後を着いていき、穴を覗き込む。しばらく見つめたあと、迷いなく手を差し入れ、埋めたはずの玉を取り出した。

……透明、だと?

ローデンは目を見開いた。

先ほど見たとき、あれは確かに、淀んだ色をしていた。見ているだけで気分が悪くなるような、禍々しい塊だったはずだ。それが今は、澄んだ水晶のように、何の濁りもなく光を通している。

ラニアはその玉を見つめ、ふわりと笑った。そして、ロキの頭を優しく撫でる。

ロキはくるりとローデンの方を向き、短く鳴いた。

ラニアは玉をそっと地面に置き、ローデンの方へ歩いてくる。

「ありがとう」

上目遣いにローデンを見て、そう言った。

……人外が、俺に、礼だと。そんな目で、見るな。

「助かった」

ラニアは少しだけ、恥ずかしそうに笑った。

ローデンの思考は、そこで止まった。

ラニアは再び玉を拾い上げると、それを胸に抱きしめるようにして目を閉じた。

……何を、している?

どれだけ見ても、ローデンには理解できない。ただ、あたりに満ちていた重さが、わずかに軽くなったような気がした。

ラニアはしばらくそのままでいたが、やがて目を開けると、

「お待たせ」

そう言って、玉を鞄に入れて何事もなかったかのように歩き始めた。


城に着く頃には、空はすっかり夜の色に染まっていた。

ローデンは、道すがら何度も口を開きかけた。聞きたいことはいくらでもある。あの泉のこと、玉のこと、ラニアの力のこと。だが結局、何ひとつ言葉にできなかった。

隣を歩くラニアは、起きてからというもの、驚くほど普通だった。足取りは軽く、時折ロキに声をかける余裕すらある。

……人外と魔物との散歩が、普通の散歩に見えるなんて。俺は、壊れたのか?

ローデンは真剣にそう考えていた。やがて城の灯りが見えてくる。その手前で、ラニアがぴたりと足を止めた。振り返り、ローデンを見る。

「皆には、内緒だよ」

さらりと言った。

「何て、言い訳をするんだ」

ローデンは低く聞いた。

「散歩して、疲れて昼寝してた、で良いんじゃない?」

ラニアはあっけらかんと言う。

……明らかに、無理だ。

もっと他に、ましな言い訳はないのか。ローデンは必死に考えたが、何も浮かばなかった。結局、

「わかった」

と、渋々うなずくしかなかった。


城門をくぐった途端、足音が駆けてきた。真っ先に現れたのはリリアーナだった。

「ラニア、どこに行ってたの? 心配してたのよ?」

息を弾ませながら、ラニアの前に立つ。

ラニアは少し首をかしげて、いつもの調子で答えた。

「ごめん。森を散歩して、途中で疲れて昼寝してた」

「もう……。でも、無事でよかった」

そう言って、リリアーナはラニアをぎゅっと抱き締めた。

ラニアは驚いた様子もなく、そっと腕を回す。そして、心から満たされたような、柔らかな笑みを浮かべた。少し遅れてエドモンドとセリウスがやってくる。理由を聞いた二人は、ラニアとローデンを交互に見て――

絶対違うな……。

そう言いたげな、疑いの目を向けていた。

ローデンは、その視線を受けながら、静かに思った。

……明るい未来が、まるで見えない。


夕食後、セリウスとローデンはそれぞれの部屋に戻った。扉が閉まり、二人きりになった途端、セリウスが口を開く。

「……何があったのかな?」

ローデンは視線を逸らした。彼はセリウスの護衛だ。長時間、無断で離れるなど、本来ならあり得ない。

「……俺の口からは、言えない」

低く、押し出すように言う。

――言っても、信じてもらえるのか?

「僕に、隠し事?」

セリウスの声は、わずかに上擦った。

「そうじゃない。どう言えばいいのか、わからない」

ローデンは辛うじて答えた。

――そのまま話しても、結局、わからないままだ。

「そっか……」

セリウスは小さく頷いた。

だが、その内心はまったく別の方向に走っていた。

……これは、絶対に初めての恋に混乱しているんだ。二人きりの時間のことなんて、恥ずかしくて話せないよね。わかるよ。自分だけの宝物にしておきたいよね。

うんうん、青春だ。僕は、応援するからね。

セリウスは、ひとり静かに、盛大に勘違いしながら頷いていた。

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